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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十四章 山海と先住民達
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氷炎の戦砦 その五

 大骨戦砦グレートボーンウォーフォートが二つの属性を同時に纏い始め、戦いが終わりに近付いていると私が感じたのとほぼ同時に、戦場では一つの戦いが決着しようとしていた。その戦いとは、ジゴロウ型分体達との戦いである。


「所詮は猿真似の一発芸だなァ…戦術もクソもねェ」

「これで、終わりだよっ!」


 ジゴロウは少し落胆したように四肢を破壊された無惨な状態で首を掴まれる最後の一体を放り投げ、ルビー達はどうにかその身体を破壊せしめた。最も多くの分体を受け持っていた源十郎はまだ戦っているが、敵の数は五体に減少している。そこへルビー達が合流しようとしているので、余裕が生まれさえすれば倒しきることだろう。


 一方で分体の相手から解放されたジゴロウは、早速炎と氷を纏う大骨戦砦グレートボーンウォーフォートへと嬉々として襲い掛かった。強敵の出現を望むのだから、敵が強くなると嬉しいに違いない。疲労とか感じないのだろうか?


「おっと、そろそろ【付与術】と【魂術】を再び掛けなければならない時間か。モッさん、離脱するぞ」

「わかりました。飛び回っての援護、お疲れ様です」

「勝つために必要な役割さ」


 私はモッさん達に【付与術】を再び掛けて効果を延長させると、次にマック達の方へと飛んでいった。大骨戦砦グレートボーンウォーフォートの強化を見た彼らは我々と同じく動揺を隠しきれない様子だったが、目まぐるしく変化していく状況に慣れつつあるのか戦い続けている。やはり、頼りになるパーティーだ。


 合流した私はモッさん達にしたように【魂術】を掛けて効果を延長させ、魔力盾(マジックシールド)によって骨の雨を防ぎながら彼らの様子を尋ねた。


「マック、大丈夫か?」

「これが大丈夫に見えるってのか?まあ、あんたに八つ当たりしても意味ねぇんだけどよ」


 マック達は戦っているものの、積極的に反撃しているモッさん達とは違ってほぼずっと防御することしか出来ていない。降り注ぐ骨の雨と弩砲は属性が二つになったことで強化され、反撃と言えるものはマックとサーラによる打撃と斬撃を飛ばす武技くらいのものだ。


 私が魔力盾(マジックシールド)を使ったことでポップとジェーン堂島も攻撃に移ることが出来たのだが、大骨戦砦グレートボーンウォーフォートの膨大過ぎる体力の前には焼け石に水である。ダメージの効率が上昇しているものの、この戦いにおける決定打にはなりそうになかった。


 なら、彼らはこの戦いにおいて必要ないのかと問われればそうではない。彼らにも強力な攻撃手段がまだ残されているからだ。


「確かに厳しい状況ではある。だが、こちらも切り札は残しているだろう?」

「『奥義』と『秘術』のことか。当然俺達も使えるけどよ、発動までに時間がかかるモンばっかりだ。悠長に使ってる余裕はないぜ?」


 プレイヤーである我々に残された切り札とは、マックの言う通り『奥義』と『秘術』に他ならない。これらは非常に強力なものが多いのは確かであるが、使用するのに溜め時間が必要であったり、発動中は無防備になったりするデメリットがある。それを鑑みると、とてもではないが使う余裕などないように思えるのだろう。


「今はそうだろう。だが、いつか必ずチャンスは訪れる。それまで粘り強く戦って欲しい」

「へいへい。ったく、こんなに長引く上に神経を使うボス戦になるとは思わなかったぜ」

「全くだ。では、私はルビー達の所へ行く」

「はいよ」


 マックはヒラヒラと手を振ってこちらを見ることなく返事をした。サーラやポップ達も似たようなジェスチャーによって了解の意思を示している。


 彼らは笑みさえ浮かべているが、魔力盾(マジックシールド)が割れてしまえば防戦一方の状態に戻ってしまうだろう。彼らのためにも、一刻も早く攻勢に出るチャンスを作るように立ち回らなければなるまい。


「むぅ、儂一人で打ち倒したかったのぅ…まだまだ修業が足りぬようじゃ」

「あのー、ボク達四人掛かりで三体倒すのもやっとの相手だったんだけど?」

「やっぱり達人は自分たちと違うんすねぇ」

「まだ強くなりたいって…」

「元気だねー。長生きするよー」


 私がルビー達と合流した時、彼らは残りのジゴロウ型の分体を掃討し終わったところであった。源十郎はどこか不完全燃焼な部分があるようで不服そうにしているが、その様子を見てルビー達は呆れたり感心したりとそれぞれコメントを残している。


 私としては源十郎が強いのはとても助かる。これからの厳しくなるだろう戦いを切り抜けるには、彼の高い戦闘力が必要になるからだ。


「分体は片付いたのか。【付与術】と【魂術】を更新するぞ」

「ありがと。こっからはボク達も本体に攻撃したら良いんだよね?」

「頼む。私もそうだが、他の皆も長丁場で疲弊しているはずだ。焦りは禁物だが、出来るだけ早くケリを着けたい」


 疲れを知らずに戦えるジゴロウと違って、私達は間違いなく疲労している。それはアバターである肉体の疲労ではなく、ずっと緊張を強いられたことによる精神的疲労だ。現に前衛職の仲間達の細かい被弾は着実に増えており、更に長引けば不注意から致命的な失敗をしかねないだろう。


 この状況で一人であっても欠けることは避けたい。故に慎重でありながらもガンガン攻撃してなるべく早く終わらせなければならないのだ。


「分体の処理も大事な役割っすけど、やっぱりボス本体とやり合ってこそのボス戦っすからね。むしろ望むところっす!」

「私も頑張る!」

「僕もー、やれるだけやってみるよー」


 シオ達はやる気十分な様子で応えてくれた。分体の相手をするのは骨が折れる作業であるし、露払い的な感じがあったのだろう。重要だと理解しつつも、やはりボス本体との戦いこそボス戦の華なのだから。


 源十郎は言われずとも四本の薙刀を振るい、まるで掘削機のように大骨戦砦グレートボーンウォーフォートの表面を抉っていく。それを阻止するべく脚が叩き付けられるが、源十郎は頭上が見えているのか最低限の足捌きでこれを回避してみせた。


 その前後、彼は攻撃の勢いを緩めることすらなかった。そんな化物染みた達人が作った破壊の跡を大骨戦砦グレートボーンウォーフォートは内側にあるらしい骨の在庫によって埋めようとするのだが、ルビーの指揮の下で私達は補修を阻止しつつむしろ広げるように動いていた。


 ルビーの短剣と紫舟の脚が骨を更に切断し、ウールの声と私の魔術が新しい骨を吹き飛ばし、シオが次々に矢を射掛けて行く。これを繰り返したりその場に合った対処をしつつ、私達を含めた三つのパーティーは着実にダメージを与えていった。


「あとちょっと!」

「待って!内側が光ってるよ!」

「一度退くっす!」


 そして大骨戦砦グレートボーンウォーフォートの体力です遂に残り一割にまで削れた時、最後にして最大の変化が起きた。大骨戦砦グレートボーンウォーフォートの内側から炎の赤と氷の白がマーブル状に入り交じった光が漏れ始めたのだ。


 これまでのパターンからして、これは何かの前兆であろう。残り少ない体力を一気に削りきってしまいたい思いをグッと堪え、三つのパーティーは一度退いて距離を取る。それだけ警戒するに越したことはない相手だと、ここまで戦って来た全員が理解していたからだ。


「ギギギ…ギゴオオオオオオオオオオオオッ!!!」

「むー、うーるーさーいー!」

「えっ!?何これ!?」

「砕けた骨が…集まってるっす!」


 大骨戦砦グレートボーンウォーフォートは全身にある隙間という隙間から激しい炎と氷を噴出しながら、怨念の叫びめいた音をボスエリア中に鳴り響かせた。放出された炎と氷は大骨戦砦グレートボーンウォーフォートを守るように竜巻を成し、咆哮が空気をビリビリと震わせる。もしも欲張って攻撃し続けていれば、竜巻に巻き込まれて大ダメージを受けていたことだろう。


 その音が契機となったのか、地面に散らばっていた骨の欠片が大骨戦砦グレートボーンウォーフォートに向かって集まっていく。この欠片とは継続的に降らせていた骨の雨や弩砲から放たれた飛翔体、または切断した脚などの残骸であった。


 これまでは地面に散乱しているだけだったので、てっきり攻撃に使った骨や本体から切り離された骨は制御出来ないのかと思っていたがそうでもないらしい。しかし、今までの戦闘では使っていなかった残骸を今更集める理由は何なのだろうか?


「はぁ!?嘘でしょ!?」

「立ち上がった…じゃと?しかもこれは…」


 疑問に思っている間にも大骨戦砦グレートボーンウォーフォートの変化は止まらない。炎と氷の竜巻の内側で奴はその巨体を残っている脚によって持ち上げ、立ち上がっていたのである。


 その大きさは約半分の十メートルほどにまで縮んでいる。これは小さくなって弱体化したのではなく、凝縮されてより強くなったと考えるべきだろう。それに十メートルもあれば十分に大きいと言える。油断する要素は一つもなかった。


 しかしながら、ただ立ち上がって小さくなっただけならば、私は『変化した』とは言わない。奴は竜巻の内側で立ち上がりながら、全身を更に変形させているのだ。そのシルエットは先程の分体と同様にジゴロウの姿に似ているが、決定的に異なる点がある。それは、腕が四本もあることだった。


「なるほど、集めた破片はそう使うのか」


 そして四つある掌に骨の破片が集まり、二本の薙刀と二本の大太刀の形状に固まっていく。身体の一部ではなくなった部分を、大骨戦砦グレートボーンウォーフォートは己が武器として利用するのだ。


 それよりも、ジゴロウのような肉体に源十郎のような四本腕と武装と来たか。最も活躍したであろう二人の特徴を兼ね備えた姿になったのだろう。四本とも薙刀ではない理由は不明だが、大骨戦砦グレートボーンウォーフォートはこれで良いと判断したのだろう。


「まァた猿真似かァ?今度はもうちっとマシな動きになってんだろォなァ?」

「付け焼き刃の剣術がどれほどのものか、とくと見せてもらうかのぅ」


 姿を真似られた二人は嫌悪感を抱くどころか、一体何をしてくるのかを心の底から楽しみにしているようだった。ジゴロウにとっては動きが良くなっていたら嬉しいのかもしれないが、私からすれば勘弁してもらいたいところだ。


 とにかく、大骨戦砦グレートボーンウォーフォートがこれまでで一番大きな変化を見せたのは事実である。体力の残量から考えても、長かった戦いも終わりが近いと考えて良いだろう。巨大化したジゴロウと源十郎の融合体と戦うなんて、考えるだけでも恐ろしいがやるしかない。あらゆる手段を用いて倒してみせよう!

 7月30日に書籍版『悪役希望の骸骨魔術師』第二巻が発売されます!

 書籍版だけの追加エピソードもありますので、書店や電子書籍で手にとっていただければ幸いです。


 次回は7月24日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[一言] 氷炎の戦砦 その五 そのタイトルが二回を使われています。 ーー> その四、その五、その五、その六
[気になる点] いつも楽しく読ませて頂いてます。 サブタイトルっていうんですかね?氷炎の戦砦五が2話続いてて被ってるなと。 内容に直接的には関係ないですが気になったので一応報告だけ。
[良い点] 最終形態はMVPと準MVPの良いトコ取りですか...... これ、ある程度手の打ち知った仲間内でないと大変危ないですねぇ。 ジゴロウコピーがアレ(本人にとっては)だったけど、これはちょっと…
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