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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十四章 山海と先住民達
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氷炎の戦砦 その一

「おい、どういうことだ?こんな話は聞いていないぞ」

「わ、わからねぇ!俺達もこんな事態は初めてなんだ!」

「無理かもしれないけど、信じて!お願い!」


 可能性は低いものの、我々が騙されたのかもしれないと思って問いただしたのだが、マックとポップの口調からどうやら出口が塞がったのは彼らの想定外だったらしい。もしこれが演技だったとすれば、二人とも役者を目指すべきだろう。


 だが、この事態は何故起きたのか。パッと思い付いた原因は二つある。一つ目は二つの入り口から同時に侵入したから。二つ目はボスを挟み撃ちするように陣取っているからだ。どちらが原因であったとしても、この状況から逃げ出せる訳ではないのでこれ以上深く考えるのはよそう。意味がないのだから。


「わかった。問題はここからどうするかだが…どうやら、ボスのお出ましだ」


 そうこうしている内に、ボスエリアの中央にぽっかりと空いた穴からボスが這い上がって来る。ズシンズシンという重低音を響かせて現れたのは、巨大な骨の化け物であった。


 見た目としては大骨塚グレートボーンマウントに近い。だがその大きさは桁違いで、半径二十メートルほどの半球に近い形状の巨体であった。その全てが骨で出来ていると考えると、一体何体分の魔物の骨が材料なのか想像もつかない。


 そんな骨の塊からは、歪ながら手足だと思われる部位が放射状に六本生えている。これらは三本か四本の鉤爪を持っていて、これを引っ掛けて穴をよじ登ったのだと予想された。


 全身から冷気を放っており、骨の表面には霜が棘のように生えている。私の位置にまで流れてくる靄の冷たさが、この霜が虚仮威しなどではなく本当に極低温であることを物語っていた。


――――――――――


種族(レイス)大骨戦砦グレートボーンウォーフォート Lv81

職業(ジョブ):戦砦 Lv1

能力(スキル):【体力超強化】

   【筋力超強化】

   【防御力超強化】

   【精神超強化】

   【変形自在】

   【骨吸収】

   【骨操作】

   【骨源抽出】

   【分体生成】

   【氷骨】

   【炎骨】

   【破砕射】

   【貯骨庫】

   【状態異常無効】

   【物理耐性】

   【魔術耐性】

   【光属性脆弱】


――――――――――


 大骨戦砦グレートボーンウォーフォート …実際に【鑑定】してみるとその強靭さが良くわかる。体力と防御力が強化されている上に物理と魔術も効き難いとなれば、この山のような骨を崩すのは相当な長丁場になるのは必定だ。


「ギギギギギギ…」

「おい、どうすんだ?」

「どうするもなにも、逃げられないのならば戦う他に道はない。ただ、我々と君達で上手く連携が取れるかがわからん。そこで、三つのパーティーで三方向から囲むように立ち回ろう」


 マック達とボスエリアに来るまでの間に戦闘は起きていないこともあり、彼らがどのように戦うのか全くわからない。戦い方も知らずに背中を預けるのはお互いに不安しかない。


 ならばいっそのこと、広いボスエリアを活かして三部隊に分かれようというのが私の意見だった。分散することにも不安はあるが、連携するどころか足の引っ張り合いになる方が問題だろう。


「…わかった。けど、俺達は何度も逃げてんだ。まともに引き付けられるかどうかもわからねぇぞ」

「大丈夫だ。どうせ、向こうのジゴロウが…」

「イィィィクゼェェェェェ!!!」


 マック達に説明する前、我慢できなくなったらしいジゴロウが大骨戦砦グレートボーンウォーフォートへと突撃した。愚直に駆けるジゴロウにむかって、大骨戦砦グレートボーンウォーフォートは弾丸のような速度で骨を射出する。これをジグザグに走ることでこれを回避しつつ距離を詰めると、ジゴロウは脚に炎を纏わせて飛び蹴りを食らわせた。


 何かが折れる鈍い音がここまで響いた直後、彼は素早く後退している。エイジ達の近くに戻った彼は、凶悪としか言い様がない笑みを浮かべているのが見えた。


 手応えはあったが楽に倒せる相手ではなく、奴が求める死闘を繰り広げられそうだとでも思っているのだろう。我が兄弟分とは言え、勝てないかもしれないほどに強力な相手と戦いたいという気持ちは未だに理解出来ない。


「ば、化け物かよ…あんたの仲間…」

「イザームよ、儂も行くぞ」


 ジゴロウの戦いぶりにマック達は瞠目を禁じ得ないようで、全員が呆然として彼を見つめることしか出来なかった。実際、最も付き合いの長い私とアイリスですら驚かされることもあるので彼らの気持ちは痛いほどわかるなぁ…。


 しかし、同じく戦闘狂(バトルジャンキー)である源十郎はあれを見て触発されたらしい。直ぐにでも突撃したくてウズウズしているようだった。無論、我々も戦いに加わるが、今は少しだけジゴロウ達に任せたい。


「少し待ってくれ。げ…いや、ルビーは皆を連れて向こうへ行って欲しい」

「イザームは?」

「少しだけマック達といる。すぐに合流するから、無理をしないように戦い始めてくれ」

「わかった。行くよ、皆!」


 ルビーにリーダー役を頼んだのは、偏に源十郎が暴走した時に諌められるのが彼女だけだからだ。ルビーは元気に返事をすると仲間達を引き連れて指定した場所へ向かう。


 さて、ここに私が残ったのは何故か。それは戦う前に聞いておく必要があることが二つあったからだ。


「マック達に聞きたい。この中に【付与術】を使える者はいるか?」

「はーい。私が使えるよ」

「そちらは大丈夫か。では【魂術】を使える者は?」

「【魂術】?何だそりゃ?」


 やっぱりそうなるか。【魂術】を使えるどころか、彼らは存在も知らなかったらしい。これは仕方がないことであるとは思う。これは神官系、それもイーファ様に仕える神官でなければ取得出来ない能力(スキル)であるからだ。


 マック達の中に神官はいないらしく、それもボスの攻撃が激化すると逃走するしかない原因の一つであった。神官系の職業(ジョブ)を選ぶ最大の要因である【治癒術】は不死(アンデッド)だとダメージを与えるだけであり、そもそも習得すら出来ない。それ故に神官を選ぶプレイヤーはいなかったのだろう。


 これでマック達の事情は把握した。よし、この戦いにおける私の役割は決まったな。


「細かい説明は省くが、【魂術】は不死(アンデッド)でも回復させることが可能な魔術だ。それを全員に掛けるから、終わったらマック達はルビー達のパーティーとは逆の方に行って欲しい」

「それで囲むってのはわかったが…あんた、本当に色々知ってんだな」

「何、色々と試行錯誤した結果に過ぎないさ。では、【魂術】を掛けるぞ」


 感心したようにこちらを見るマックの視線を少し照れ臭く感じつつ、私は【魂術】の大魂癒を掛けていく。全員に掛け終わると次はジゴロウ達の元へ向かった。そこでは一人で飛び出して拳や蹴りを叩き込むジゴロウ達と、連携して戦うエイジ達という構図となっている。随分と自由にさせているようだ。


「おお、上様!」

「何が何やら分かりませんが、ご一緒させていただきます」

「頼む。【付与術】を掛けに来た」


 大仰な言い方をするネナーシと丁寧な口調でそう言いながら目の内の幾つかを伏せるミケロ。二人は話している間も、蔓や魔眼によって攻撃していた。


 エイジが大盾で雨霰と降り注ぐ骨を防ぎ、振り回される脚を弾いて守る。その背後から現れたモッさんが接近して翼や爪で骨をズタズタに切り裂き、そこへ七甲の召喚獣が突撃してモッさんが離脱する隙を作る。実に見事な連携であった。


 その連携の中にジゴロウがいないことに私は苦笑してしまう。きっと無理に連携に組み込むよりも好きにさせておく方が実力を発揮出来るという判断なのだろう。思いきった作戦だ。


「ふぬううぅっ!助かります!」

「このパーティーのリーダー誰がやっているんだ?」

「モッさんやで、ボス!」


 全員に【付与術】を掛けつつ、私は誰がリーダーか尋ねた。恐らくはモッさんだと思っていたが、予想通りであったらしい。エイジと七甲、あとミケロもリーダー役は得意だと思うが、このメンバーならモッさんだろう。


「モッさん。我々のパーティーと君達、そしてマック達のパーティーで三方向から包囲しようと思う。どうだ?」

「なるほど、いいと思いますよ。位置取りと立ち回りに気を配る必要はありそうですが、どうにかしましょう」

「助かる!」


 【付与術】を掛け終わったところで、私は再び飛翔して源十郎達に合流する。そして素早く【付与術】による強化と【魂術】による常時回復を施した。


 離れたのは短い時間だったが、大きなダメージを食らっている者もいる。それは意外なことに源十郎であった。


「もう、お祖父ちゃん!好戦的過ぎない!?」

「ほっほっほ。いや、まさか切り口から炎が迸るとは思わなんだ」


 私が戻ったとき、大骨戦砦グレートボーンウォーフォートの脚がちょうど一本斬り落とされる場面であった。それをやったのはもちろん源十郎なのだが、その切断面から火炎放射器のようにボウボウと炎が噴き上がったのだ。


 つまり、源十郎は切断した時に炎を浴びて負傷したのである。硬質な外骨格が炙られたせいで所々変色して歪んでいた。体力は半分弱にまで減っていて、間違いなく重傷である。


 彼は【火属性脆弱】を持っていたが、粗悪なお札を使っての訓練によってこれを克服している。もしも【火属性脆弱】を持ったままだったなら、これで即死していたかもしれない。地道な努力のお陰で九死に一生を得たのだ。


 今はルビーと紫舟が前衛で張り付き、シオとウールが後衛から攻撃をしている状態だ。ポーションで回復を図る源十郎に、私は真っ先に【魂術】による回復を掛けた。


「気を付けてくれよ、源十郎。我々のパーティーで物理攻撃による最大火力は貴方なのだから」

「心配は不要じゃ。次はないわ…しかし、気遣いには感謝するぞい」


 ジワジワと回復してようやく体力が六割を超えた辺りで、源十郎は再び刀を握って立ち上がった。そして前翅を開いて後翅を羽ばたかせると、三本の刀による攻撃を再開する。不覚をとったことを反省しているのか、慎重に立ち回ってダメージを受けないように注意しているようだった。


 源十郎の前線復帰によって余裕が出来たルビーと紫舟が一度退き、そこへすかさず【魂術】を掛ける。接近して攻撃する以上、反撃として射出される骨を全て回避するのは難しいようで、二人とも体力を削られていた。


「遅くなった。すぐに回復と強化をする」

「ありがと!それと、お祖父ちゃんを止められなくてゴメン!」

「いや、謝らなくていい。ジゴロウの暴れぶりを見て熱くなった源十郎を止めるのは、土台無理な話だったのだろう」

「凄く元気だよね!良いことだよ!」


 謝るルビーを私と紫舟はフォローした。ただ、祖父の有り余る活力を褒められたルビーは、喜ぶべきか恥じ入るべきかわからないようだ。プヨプヨと不規則に変形する粘体(スライム)の身体が、彼女の内心を物語っている。アイリスと同じく、彼女もまた顔がないのに感情が豊かだ。


「あ、あはは…。そんなことより、この連合(ユニオン)で勝てそう?ボク的には厳しいと思うけど…」

「勝てるように最善を尽くすのみだ。そのために、私は三パーティーの援護に飛び回ることになるだろう」


 このボス戦における私の役割。それは三つのパーティーを的確にサポートすることだ。魔術の能力(スキル)が多く、複数の引き出しを持つ私にしか出来ないことだろう。


 奴には【光属性脆弱】があるので、攻撃面でも貢献は出来るとは思う。しかし攻撃の手は足りているので、ここは援護を主眼に置いて立ち回る方が全体のためになるはずだ。


 ボスに関する情報は足りず、当然のように格上の相手との戦いになった。だが、格上との戦いはもう慣れっこだ。山のような骨の塊を、我々で崩しきってみせようじゃないか!

 大変申し訳ありませんが、作者体調不良のため次回は7月4日にさせていただきます。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、共闘いい流れ。同じ釜の飯を食う、同じ強敵に立ち向かう、は仲間フラグ、臣民フラグ。実際UO時代から未だ付き合いのある方っていますからねぇ、私。PSの差を見せつけるような勝利を望みます。…
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