底にいるのは親戚でした
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種族レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
職業レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。
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洞穴猿が諦めて出てこなくなるまで狩ったところ、レベルが一つ上昇した。敵の質も大事だが、塵も積もれば何とやら。数をこなすことで経験値を稼ぐことも出来るのだ。根気の要る作業ではあるが、それを耐えれば比較的安全にレベルアップすることが出来る。
ただ、私の性分に合わないやり方だ。それはジゴロウのように強敵に餓えているなどという理由ではなく、格下とばかり戦っていると格上と戦う時の勝負勘が鈍るような気がするからである。
何か必要なアイテムが大量にある場合や、皆で迷宮を攻略する前に一つでもレベルを上げておきたい場合のように必要不可欠な状況でなければわざわざここまでの雑魚を相手に経験値稼ぎをすることはないだろう。
「いやー、助かりました。僕だけなら大丈夫でしたけど、コロンブスは絶対に食べられてましたよ」
「おーい!ケースケくーん!大丈夫かーい!?」
私に礼を言うケースケ君を、エイジ達に助けられたもう一人が大声で呼んでいる。さっきは気付かなかったが、良く見ればコロンブスと呼ばれたプレイヤーは女性であるらしい。彼女は豊かな口髭を蓄えたアバターで呑気に手を振っていた。
うむ、そうなのだ。声は女性だが、見た目はカイゼル髭が立派な長身痩躯の紳士である。それが丸い帽子を被り、ポケットがたくさん付いた服を着てロープにぶら下がっているのだ。探検家のステレオタイプなイメージを具現化した出で立ちであった。
「中々にユニークな方だな」
「ははは。そこがいいんですけどね」
「何だ、惚気話か?」
「そう思ってくれてもいいですよ」
ふむふむ、親密な関係の二人で冒険を楽しんでいるということか。リアルの知り合いかもしれないが、それを詮索するほど私は野暮ではない。
「ところで、君たちも下を目指しているのか?」
「そうですよ。見ての通り、古典的な方法ですけど…そちらは楽そうですね」
「その通りだが、君たちも空輸するのは無理だぞ。私は人を抱えて飛べるほど力はないし、あっちにも余裕などない」
ケースケは羨ましそうに我々を見るが、彼ら二人を運ぶことは出来ない。私は副腕をなるべく隠したいので使いたくないし、そもそもルビーのように重さがあってないようなアバターならともかく男一人を担いで飛ぶのは恐らく無理だ。
モッさんにも余裕はない。それはエイジと言うただでさえ重量級の、しかもガチガチに重装備で固めた仲間を運んでいるのだ。モッさんは筋力重視の拳闘士だからどうにかなっているが、もう一人運ぶのは私と同じく無理だろう。
「あー、そうですかぁ…。じゃあ、降りる間だけでも護衛してくれませんか?報酬は…成功報酬で三万ゼルでどうです?」
「おい、相場より安くないか?魔物だからと言ってケチるなら、ここで放置して行ってもいいんだぞ」
「あちゃー。バレてました?」
無論、私は護衛クエストの相場など知らない。カマかけである。このケースケ君は柔和そうな見た目だが、どことなく強かで油断ならないところがありそうな雰囲気を感じた。完全に私の勘であるが、間違っていなかったらしい。
やってくれるじゃないか。魔物プレイヤーを都会に出たばかりの田舎者とでも思っているのか?よろしい、ならば本気で交渉してやろうじゃないか。
「じゃあ、相場通りに一人辺り五万で…」
「目的地までの距離がわからない上に、私たちを甘く見て報酬を渋ろうとしたことをもう忘れたのか?」
「うぐっ…なら六…」
「迷惑料込みで八万だ」
「八万!?いくらなんでも…」
「向こうのコロンブスに君が私を騙そうとした事実を教える気はなかったんだがなぁ?」
「じゃあ八万で…」
「口止め料は別料金だが?」
「だぁーっ!もう!わかりましたよ!十万!これでいいんでしょう!?今は金欠なのに…」
初心者であるコロンブスならともかく、ケースケのような高レベルプレイヤーにとって十万ゼルなど大した額ではない。それを出し渋った時点で彼は金に困っているのかもしれないとは思っていたが、その通りだったらしい。
予想していた通りではあるが、ここは勉強代だと思って支払って貰おう。魔物プレイヤーだからと思って舐めた態度をとったツケである。
「契約成立だな。貰う分は働くとしよう」
「うぐぐ…高い金を払うんですから、キッチリ守って下さいよ!?」
ケースケ君は半ばヤケクソ気味にそう言った。個人的な溜飲は下がったので、ちゃんと働こうか。まずは依頼を受けたことを二人にも伝えるとしよう。
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【杖】レベルが上昇しました。
【杖】の武技、纏魔撃を修得しました。
【魔力精密制御】レベルが上昇しました。
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エイジとモッさんと共にケースケとコロンブスを護衛しながら縦穴を降り初めてから一時間ほどが経過している。想像よりも遥かに穴は深く、洞穴猿以外にも虫や蝙蝠などの魔物に襲われた。
どれも弱かったので大したことはなかったが、やはり数が多いので面倒臭い。それに人類二人は夜目が利かず、腰に着けたランタンの頼りない光に頼っていたので降りるペースは少し前までとても遅かった。
「いやー、助かるよイザーム君」
「まさか新しい武技が松明代わりになるとは…」
だが、新しく覚えた纏魔撃という武技のおかげで暗さの問題は解決した。というのも、この纏魔撃は読んで字のごとく自分が使える属性魔術を杖に纏わせる武技である。自分の杖限定である代わりに、【付与術】よりも魔力の燃費が良いのが特徴だ。
これを使って雑魚を払っていたところ、火属性を纏わせることで擬似的な松明として利用出来ることに気が付いた。これが思いの外明るく、二人が降りるペースを向上させることが出来たのである。
火属性でこれなら、光属性ならどうなるのだろう?サイリウムのようになるのだろうか?私が不死だと知られた時に面倒なので今は使わないが。
「おっ!底が見えてきましたよ!」
「明かりがあるとわかりやすいですね」
松明と化した杖の光が、ようやくその底に届いて照らし始めた。ゴールが見えると二人のモチベーションも上がったらしく、動きが露骨に良くなっている。
護衛の仕事もようやく終わりだ。護衛対象が二人と少なく、片方は十分に自衛が出来るので割りと楽かと思ったがそうでもなかった。それは現れる敵は全て群れを成していて数が多く、逆に護衛である我々の人数も少なかったのが原因だ。これは十万でも安いように思うが、まあいいだろう。
「到着ーっ!いやはや、冒険の臭いがするじゃないか。なあ、ケースケ君!」
「そうだね、コロンブス」
「これで仕事は終わりだ。わかっているよな、ケースケ君?」
「…そうですね、イザーム」
興奮しているコロンブスには朗らかに返事をするが、私の時には声が一段低くなっている。いつの間にか呼び方も敬称が取れて呼び捨てにされていた。まあ、それが当然の反応ではあるが。
ケースケ君は私に無言で金が入った巾着袋を渡した。それを受け取った私は契約通りの金額であると確認した後、十三万ずつをモッさんとエイジに渡した。二人は笑って構わないと言ってくれたが、この護衛は私が勝手に請け負った仕事である。付き合わせたのだから、多めに渡すべきであろう。
「そこまで気を使わなくても…」
「親しき仲にも礼儀あり、という奴さ。勝手に依頼を受けた私を許してくれた二人への礼だよ」
「エイジ君、貰っておきましょう。お金はあって困るものではありませんし…何より、イザームさんは受け取るまで説得して来そうな勢いですから」
エイジは困った顔をしながら、モッさんは苦笑しながら金を受け取ってくれた。そのことに安堵しつつ、私は纏魔撃を解いて杖を通常の状態に戻す。縦穴の底を照らす光はケースケ達のカンテラだけになったので、急に弱くなってしまった。
二人は慣れない暗闇に苦労するかもしれないが、我々は夜目が利くので問題はない。とりあえず縦穴の底を見回したところ、奥へと進めそうな穴を発見した。
「目的地はあそこか?」
「そうですよ。行きましょう」
「きっと気に入りますよ」
二人がこうまで焦らす場所には何があるのだろうか。私の中で期待が否応なく膨らんでいく。先に進むエイジとモッさんの後に続く私だったが、さらにその背後からケースケとコロンブスがついてきていた。
「一緒に来るのか?」
「しょうがないでしょ!こっちにしか道がないんだから!」
一本道なのだから当然ではある。わかっていて聞いたのだが、不愉快にさせたようだ。からかい過ぎたかもしれない。
結局は五人で一列となり、細い穴を一分ほど進んだ。すると開けた場所に出て…そこには無数のテントが張られているではないか!
テントがあるということは、その数近くもプレイヤーがいると考えるのが自然だ。ケースケ達のようにあれだけ面倒な襲撃を突破してでもこんな場所を目指すのは珍しい方だと思っていたが、そうではなかったのか?
「何だ、ここは?」
「ここはですね…おっ、丁度いい所に!ポップさーん!」
エイジが手を振って誰かを呼ぶと、その人影がこちらへスーッと近付いて来る。その動き方と容姿を見て、私はここにいるのがどういう人々なのか大体察した。
「す、透けてる!?」
「なるほど、ここにいるのは不死のプレイヤー…私の親戚とも言うべき者達か」
ポップと呼ばれたプレイヤーは半透明であり、幽霊系の魔物だったのだ。なるほど、私は忘れかけていたが不死は光に弱い。日中に行動するのは難しく、ゲーム時間で夜にしか外を歩くことは出来ないのだ。
だからと言って、不死のプレイヤーがゲーム時間で夜のタイミングにしかイベントエリアに行けないのは不公平過ぎる。なので昼でも彼らが行動出来る場所としてここが選ばれたのだろう。
「あ、エイジ君。それにモッさんも。いらっしゃーい」
「紹介します。こちら、騒衝幽霊のポップコーンさん。ポップさん、この人がぼく達の所属するクランのリーダーのイザームさんです」
「半透明系美少女のポップコーンでーす!短くポップでいいよ、イザーム。よろしくねー」
「ああ、こちらこそ宜しく」
騒衝幽霊のポップコーンか。そんな種族もいることに驚きつつ、私達は互いに挨拶を交わした。ポップは騒衝幽霊という種族に似合わず明るい性格らしい。無邪気な笑顔を浮かべて空中でポーズを決めていた。
本人の言う通り半透明ではあるが、アバターの容姿は美少女と言うに相応しいほどに整っている。ファンも多いのか、上からやって来た我々の周囲にいつの間にか集まっていた他のプレイヤーが拍手を送っていた。…骨がぶつかる硬質な音や、妙に水っぽい音も混ざっているのが気になるが。
何はともあれ、ここが目的地である。私は二人の案内によってイベントエリアの最深部、通称『不死の休息地』へとたどり着いたのだった。
書籍化作業のため、勝手ながら一度お休みさせていただきます。
次回は5月29日に投稿予定です。




