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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十三章 暗黒の大陸
214/688

霧に潜む者達

――――――――――


戦闘に勝利しました。

種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

【杖】レベルが上昇しました。

【知力強化】レベルが上昇しました。

【精神強化】レベルが上昇しました。

【体力回復速度上昇】レベルが上昇しました。

【魔力回復速度上昇】レベルが上昇しました。

【魔力精密制御】レベルが上昇しました。

【付与術】レベルが上昇しました。

新たに耐性付与エンチャントレジスタンスの呪文を習得しました。

従魔の種族(レイス)レベルが上昇しました。

従魔の職業(ジョブ)レベルが上昇しました。


――――――――――


 相手が強く、それなりに格上だったこともあってレベルが上がったようだ。能力(スキル)の経験値も美味しかったらしい。ただ、大活躍だった【暴風魔術】に変化が無かったのが悔やまれる。また霧魔球(ミストボール)と戦うことがあれば、きっとレベルアップすると信じたい。


「素っ材~素っ材~♪」


 しいたけは妙な歌を歌いながら剥ぎ取りに向かう。アイリスも苦笑しつつも彼女についていった。初めて倒した魔物の素材をチェックする時に心踊るのは私も同じである。有用な素材であると良いが、果たしてどうだろう?


「うぐぐ…殴っても意味が無ェのは狡いぜェ…」

「クルルルゥ…」


 新たなアイテムへの期待に満ちた女性二人とは対照的に、ジゴロウとカルはかなり落ち込んでいた。戦闘の技術に関しては間違いなく偽物に勝っていたのに、我々が倒すまで良いように足止めされたことに敗北感を覚えているようだ。


 ダメージを与えても意味が無く、倒すことも出来ず実体を持たない。しかも偽物なのだから倒すことすら意味が無い。前衛職の天敵のような相手であった。その理屈はわかっていても、悔しいものは悔しいのだろう。


「次に戦う時は、偽物を作らせる前に仕留めきるように心掛けよう。それではそろそろ時間も遅くなって来たし、探索を終えてログアウトするとしようか」

「はーい」

「わかったぜェ…」


 喜ぶ者と項垂れる者に分かれながら、我々はシラツキへと帰還するのだった。



◆◇◆◇◆◇



 翌日、私がログインしてシラツキのラウンジに行くと、アイリス、しいたけ、源十郎、兎路、エイジそしてセイが集まっていた。昨日の探索で分けた四パーティーから一人以上が揃っているのは偶然では無かろう。生産職の二人がいることからも、入手した素材に関する事に違いない。


「おっ、イザームさん!良いところに来ましたね」

「昨日の素材を見せ合っているのかな?」

「そうよ。貴方も【鑑定】してみれば?」

「そうさせてもらおうか」


 兎路に促されるのに従って、私は机の上に置かれているアイテムを【鑑定】していく。その結果、以下の通りであった。


――――――――――


霧魔球の弾性柔膜 品質:可 レア度:S(特別級)

 霧を操る魔物、霧魔球の表皮。ゴム質で良く伸びる。

 霧魔球の内部にあるのは圧縮した霧のみであり、この膜が本体そのものである。

 水属性、火属性、煙霧属性への高い耐性を持つ。

 【煙霧魔術】の触媒として最適。


狂叫悪霊の涙 品質:優 レア度:S(特別級)

 悲劇的な末路から悪霊となった霊魂が最期に流した涙。

 憐れな者の叫びは生ける者を死に誘う。

 即死効果を持つアイテムの素材となる。


纏灰汚粘体の濁塊 品質:可 レア度:S(特別級)

 死瘴灰を纏った粘体。その粘液と灰が混ざり合ったもの。

 環境に適応した粘体は死瘴灰を喰らって増え、操って戦う。

 強力な土属性を帯びており、様々な用途に用いる事が出来る。


人造人類の翼耳 品質:劣 レア度:T(秘宝級)

 錬金術によって造られた人造人類、その突然変異体の耳。

 異常な大きさになっており、元の個体は羽ばたいて飛んでいた。

 使い道は限られるが、希少なアイテムであるのは確かである。


――――――――――


「これは…思ったよりも色々いるようだ」


 並んだアイテムを【鑑定】し終えた私は、正直な感想を述べた。我々が戦った霧魔球(ミストボール)以外にも、霧と灰の中には多くの魔物がいたらしい。


 源十郎のパーティーが戦ったのは、狂叫悪霊(マッドバンシー)という不死(アンデッド)系の魔物だ。この魔物は叫び声によって他の魔物を操ったり、麻痺、睡眠、恐怖、反転、鈍化など様々な状態異常にさせる強敵だったらしい。同じく鳴き声を操るウールが居なければ、源十郎がいても全滅していたかもしれないと本人が言っていた。


 兎路とエイジ達のパーティーが戦ったのは、纏灰汚粘体アッシェダーティースライムというルビーと同じ粘体(スライム)系の魔物の群れである。ただし、動く宝石のようなルビーとは大違いの濁ったヘドロのような色をしていたようだ。アイテムとなった今も、ヘドロの塊のようでとても汚い。


 纏灰汚粘体アッシェダーティースライムは常に灰の中に潜んでおり、周囲の灰を身体の一部のように操って足元から奇襲を仕掛けてきたそうな。あまり強く無いようだが、数が多い上に探知出来なければ奇襲され放題なので甘く見ていると痛い目を見ることになるだろう。


 セイのパーティーが戦ったのは、私も戦ったことのある不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドだ。しかし、見た目は全く違ったらしい。と言うのも、彼らが遭遇したのは座布団のように大きくなった耳を羽ばたかせて飛ぶ人間(ヒューマン)の生首だったのだ。


 ちょうど羅雅亜の速度が乗っている時に出会ったらしく、あまりにも不気味だったので邯那が反射的に斬り捨てたようだ。その一撃で耳を切り落とされ、飛べずに動けないところをセイと従魔で倒したのだと言う。想像するだけでも気持ち悪いので、当然の反応と言えるだろう。


 因みに、霧の中に突入したパーティーは霧魔球(ミストボール)纏灰汚粘体アッシェダーティースライムには必ず遭遇している。どうやらこの二種類が霧の中でポピュラーな魔物になるようだ。


「やはり偽物には苦戦させられたか」

「ああ。ボロボロにさせられたぜ」

「シオが居なければ、儂も危なかったわい」


 源十郎もジゴロウと同じく偽物に足止めされて逃げられかけたようだ。シオのような動き回られても当てられる射手がいたからこそ、勝利することが出来たらしい。レベル的に無理でもあるが、ここを一人で進むのは自殺行為のフィールドだと言っても過言ではない。


「問題は奥に進めば進むほど霧が濃くなることよ。どうにかしないと目の前すら見えない状況で戦う事になるわ」

「視界が悪くて足元からの奇襲にも注意しなければならないとは…ううむ…」


 集まった者達の間に重い空気が漂う。思っていた以上にこのフィールドが高難易度であったからだ。何らかの打開策が得られない限り、攻略するのは困難を極めるだろう。


「なぁに暗くなってんのさ!こんなに素材が揃っちゃってるんだよ?」

「…そうだな。これで攻略に役立ちそうなアイテムを作れるか試してみてくれ」

「ほーい」

「なら、アタシ達は素材集めね。試行錯誤にも必要でしょうし」

「それが良いじゃろうて」

「それと、敵の情報は小まめに交換しておこう。クランチャットに書き込むようにしてほしい」

「わかったぜ」


 こんなものか。別に焦る必要は無いのだから、まったりと攻略を進めるとしよう。進展が無さすぎるなら、ムーノ殿に貰った印章を使って、他の人類モドキを訪ねてみるのもいい。どうしても黒壁を攻略しなければならない訳ではないのだから。


「霧の事はさておき、皆さんはイベントどうします?」

「今回のイベントはお祭り的な要素が強いんですよね。PKも出来ないようにされてますし…一度は行くつもりです」

「限定の素材とかあるかもだし、絶対行くよん」


 エイジの疑問に、アイリスとしいたけは即座に返答した。二人は行く気満々であるようだ。詳しい情報はまだ明かされていないが、新規プレイヤーにも優しい仕様なのはほぼ確定だそうだ。拠点と行き来可能らしいので、気軽に顔を出せるのも良い。


 実際、私もちょっとだけ行ってみるつもりではある。ただ、一つだけ懸念を抱いている事があった。


「カルを連れて行くのは…今回も止めておくべきだろうか?」

「それは…絶対注目されるでしょうね」

「変なのが寄ってきてトラブルになるのが目に見えるわ」


 そうだよなぁ。カルは余りにも目立ち過ぎる。私にとっては大事な相棒だが、連れていくのは遠慮した方が良さそうだ。


 しかし前の戦争イベントの時、長い時間離れていたせいで随分と寂しがっていた事を私は忘れていない。正直、可哀想で罪悪感を覚えてしまった。なのでイベント限定で何かどうしても欲しくなるアイテムか装備が無い限り、直ぐに帰るつもりだった。


「なら止めておくか。久々にウスバ達と話したいし、ジゴロウと源十郎を紹介しておきたい」

「えっと、有名なPKの人でしたっけ?前のイベントで協力したんですよね?」

「そうだ。その時の約束を果たしておきたい」


 ウスバ率いる『仮面戦団(ペルソナ)』の面々は、強者との戦いを求める戦闘狂だ。ジゴロウや源十郎と通じるところがあるし、何より二人は強い。強者と合わせて欲しいという彼らの願いを叶える良い機会だ。


 フレンドチャットで事前に連絡しておく必要はあるし、ジゴロウ達の都合も聞かなければならない。しかし、あの二人なら喜ぶ事はあっても嫌がりはしないだろう。


「あの人達、最近も精力的にPKに励んでるらしいですよ。高レベルプレイヤーのパーティーを一人で襲撃するスタイルは曲げてないって掲示板で読みました」

「私が手合わせした時も余裕がありそうだったし、底が知れないのはジゴロウ達と同じだ」

「ほほぅ、今から会うのが楽しみじゃわい」

「どこにでも化け物はいるんだねぇ~」


 エイジ曰く、彼らは今も元気に最前線で襲撃を楽しんでいるらしい。それを聞いて源十郎は戦意を滾らせ、しいたけは呆れたように肩を竦めるのであった。


 アイテムの整理と情報共有も終わったので、そろそろ解散の流れとなった。アイリスとしいたけは、このまま工房に籠って素材の利用法を模索するようだ。


「じゃあ、霧の探索に向かうか。四人とも来るか?」

「行きます!」

「ついていくわ」

「うむ」

「悪いけど俺は用事があるからもう落ちるわ。元々素材を預けるためだけに今日はログインしたからさ」


 探索に四人を誘ってみたところ、セイだけは直ぐにログアウトしなければならなかったようである。我々はそれを引き留めたりはしない。むしろ、素材だけは渡すべく短時間でもログインした辺り、彼はとても律儀である。


「そうか?なら仕方がないな。お疲れ様」

「じゃ、失礼するぜ」


 セイはそう言って自分の部屋へと足早に帰っていった。残った我々はパーティーを組んでから、甲板で日光浴を楽しんでいるカルを連れて霧の探索に向かう。私は霧の中に突入したのは初めてなので、若干緊張していた。


 霧の中は、想像以上に視界が悪かった。この中を進んで奥に行けば行くほどさらに濃くなると考えると、霧をどうにかする装備の開発が急務であると実感する。


「グルルゥ!」

「ハハハ、灰の感触は気に入ったか?」


 灰が降り積もっている中をバフバフと音を立てながら歩くのが気に入ったのか、カルは上機嫌だった。陰鬱な気分になりそうな場所なのだが、はしゃいでいる者がいるとそれだけで雰囲気が明るくなるよ。


「坊は大きくなっても無邪気じゃのぅ。最初はイザームの頭にしがみついておったのに」

「へぇ?小さい時を知らないから、全く想像出来な…あら?」

「ルビーからのクランチャット…中ボス的な奴を見付けたから増援求む!?イザームさん!」

「ああ、行くしか無いだろう」


 クランチャットに流れてきたのは、ルビーからの救援を求めるメッセージであった。中ボス的な奴、というのがどのような相手なのかは不明だが、彼女らだけでは厳しそうだから呼んだのだろう。


 ご丁寧に現在地を示すマップ情報まで添付されているので、行かない理由は無い。我々はルビー達のいる地点を目指して急ぐのだった。

 次回は11月13日に投稿予定です。

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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白いです。 [気になる点] やっぱり、ギミック系のフィールドなのかな? 霧の周りを探索して、そこで遭遇するモンスターの素材を使って視界を安定させたりしそう。
[一言] 高レベルというだけでなく、凄まじく厄介なエリアだなぁ 世界観的にも凄く重要そうだし、面白いね。
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