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骸骨魔術師のプレイ日記  作者: 毛熊
第十三章 暗黒の大陸
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不完全人造人類

 危ないところだったが、助けられた!間一髪である。


 カルの敏捷を可能な限り強化して、空中を飛びながら地上を見ていた。そして騎獣に乗ったセトゥン殿達が気持ち悪い化け物に何かを投げたのを発見したのである。


 遠目に見ても分が悪いのは明らかであった。まるで効いた様子もなく、遊ぶように大きな岩を揺すっているのだから。なのでカルが抱えていたエイジを投下し、上空からの奇襲を仕掛けたのである。


 とんでもない重量のあるエイジの投下は、予想以上の一撃となっていた。落ちながら武技を使っていたようで、落下の速度を乗せた事で上空の我々が思わず耳を覆ってしまうほど大きな音をたてた。まさしく質量の暴力である。彼の一撃により、化け物は四散してしまった。


「うわっ、まだ動いてる…皆さん、大丈夫ですか?」

「あ、ああ。問題ない」


 エイジは足元で蠢く化け物の上から降りながら、セトゥン殿達を気遣っている。空から助けにやって来て、人々を心配する…なんだかアメコミヒーローのようだ。


 彼らを助けられたようだが、まだ化け物は健在だ。倒すにせよ逃げるにせよ、敵の情報は知っておく必要があるだろう。いつものように【鑑定】だ!


――――――――――


種族(レイス)不完全人造人類ホムンクルス・フェイルド Lv61~68

職業(ジョブ):失敗作 Lv-

能力(スキル):【体力超強化】

   【筋力強化】

   【知力超強化】

   【五感鋭敏】

   【痛覚無効】

   【超速再生】

   【物理脆弱】

   【火属性脆弱】


――――――――――


 ほ、不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドだと…?これが、この化け物が仮にも『人類』という二文字を持っているというのか?あまりにも冒涜的である。


 最初は生首の集合体に見えたが、粉塵が消えた今ならば相手の本性がよくわかる。奴等は人間(ヒューマン)森人(エルフ)の頭部と、その本来ならば首がある位置から手足が生えている姿をしている。つまり、『生首の集合体』から手足が生えているのではなく、『手足の生えた生首』の集合体であったのである。


 全体的なレベルが低いように思えるが、そこは持久力と数で補うスタイルなのだろう。如何に相手が格上だったとしても、百を超える数の暴力を以てすれば無理を通せるというものだ。


 個体によって手足の本数が違うし、長さや太さも不揃いだ。不完全人造人類ホムンクルス・フェイルド達はエイジによって強制的にバラバラに分散させられた形になる。奴等はもう一度集まるかに思えたが、散らばったままお構いなしに地上にいる者達へ一斉に襲い掛かった。そろそろ、我々の出番である。


「私達も行くぞ。物理に弱いが、再生力は高いらしい。火属性に弱いから、黒焦げにしてやれ」

「へへッ、エイジにだけいい思いはさせねェぜ!」


 ジゴロウはカルの背中から飛び降りると、空中で炎を纏いながら急降下していった。そしてエイジと同じく落下の速度をそのままに不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドの一匹を踏み潰す。頭部のほとんどが吹き飛んだのだが、手足をバタつかせているのでまだ生きているようだ。し、しぶといな!


「弱点あるんすか?じゃあ火の矢を使えばいいんすね」


 シオは弓に火属性を付与した矢を番えると、淡々と射撃を開始した。空中からの精密な射撃は、吸い込まれるかのように不完全人造人類ホムンクルス・フェイルド達の頭部に突き刺さっている。弱点を突かれると流石にダメージが大きいようで、矢が刺さった個体は地面を転がり回りながら慌てた様子で引き抜いていた。


「ならば熱い視線を向けて差し上げましょう」


 ミケロがそう言うと、全体が真っ黒な眼球から黒いビームが放たれた。ミケロ曰く、魔力を消費して闇属性と火属性を併せ持つビームを出す攻撃専用の【黒光の魔眼】から出ているらしい。光と名がついているが、光属性の攻撃ではないのでちょっとややこしい。


 それはともかく、ミケロの魔眼の威力は強烈であった。視線を動かすのに合わせてビームも動くので、不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドの歪な手足による速度では逃げきれない。本人は燃費が悪いとぼやいていたが、十分に強力な攻撃であるように思える。


「見てばかりではいかんな。カル、私達も行くぞ?」

「グオオオオオッ!」


 仲間の仕事ぶりに感心してばかりでは格好が着かない。私も戦って仕事をしなければなるまい。これまではエイジとジゴロウを運んでいたカルの首元に跨がって、一人と一頭で急降下していく。最初はジェットコースターのようで怖かったが、今ではすっかり慣れてしまった。私も成長したのである。


 着地で数匹の不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドをカルが踏み潰し、尻尾を豪快に振るって蹂躙していく。潰され、斬られても大柚子胡椒魚(オオユズコショウウオ)をも上回るペースで回復するのだが、ここは私の新たな魔術の出番であろう!


「丁度いいし、使ってみるか。星魔陣、遠隔起動、壊炎(バーンアウト)


 私は新たに覚えた【火炎魔術】、壊炎(バーンアウト)を使う。すると発現させた魔法陣から一瞬だが巨大な炎が炸裂し、地面の草ごと焼き払った。おおっ、これは中々派手で威力も高いではないか。


 壊炎(バーンアウト)は高威力の魔術であり、加えて火属性に対する耐性を一時的に下げる事が出来る。本当ならば火属性の攻撃では効果が薄い相手にも一定のダメージを与えられるようになるのだ。ただし、耐性がある相手なら他の属性を使った方がいいしので耐性を下げるために使う事はあまり無いかもしれない。


 だが、【火属性脆弱】がある敵に対しては絶大な威力を発揮する。より脆弱になりつつ高威力の炎を浴びるのだから堪らない。不完全人造人類ホムンクルス・フェイルド達は汚い声で絶叫しながら転がっていた。


 我々が暴れている横ではセトゥン殿達が巧みな連携で一匹ずつ仕留めていた。集まっていたら強敵なのかもしれないが、一匹一匹は妙にタフなだけのキモい魔物である。槍で貫き、騎獣で踏み潰し、チームワークを活かして絶え間なく攻撃することで、彼らの強力とは言えない武器でもトドメを刺すことは出来ていた。


「グゲッ!ゲゲェッ!」

「ギュオオオオッ!」


 あまり頭が良さそうには思えない不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドだが、自分たちが不利だと言うことは理解していたらしい。一匹が何かを叫ぶと、呼応するように生きている全ての個体が集まった。そして再び頭部の集合体に戻って行く。


「集まってくれたのなら都合がいい。魔法陣、遠隔起動、壊炎(バーンアウト)…何っ!?」


 私は一網打尽にするべく、再び壊炎(バーンアウト)を使う。予想通り、一塊となった不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドの球体は火達磨になった。


 しかし、予想だにしていなかった事が起こる。なんと不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドは燃えた個体を内側に入れ、逆に内側にいる個体が外に出てきたのである。分かりにくい例えかもしれないが、まるでタマネギの表皮とその内側が入れ替わったかのようであった。


 炎を受けた個体は、この間にも体力を回復させていることだろう。ちっ、面倒な相手だ!


「ならば何度でも燃やし…げっ!」


 私はもう一度焼いてやろうと思ったのだが、不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドはそれを最も警戒していたらしい。内側と入れ替わった途端に手足を生やし、猛然と最初に揺らしていた岩に向かって突撃したのである。


 今、目に見える場所に探しているキルデ少年はいない。と言うことは隠れているのだろうが、その場所の候補はあの岩の影くらいしかない。不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドがセトゥン殿達を無視して弄んでいた事からも、私の推理は正しいと思っていいだろう。


 出鱈目に生やした手足をバタつかせて走る不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドは思ったよりも素早く、火達磨にすればキルデ少年が危ないかもしれない。我々の事情は知らないのだろうが、厄介な事を…?


「ブガアアアアアアアアアアアア!!!」


 エイジか!?岩と不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドの間に割り込んだ彼は、雄叫びを上げながらアイリスによってより強固となった盾で受け止めた。


 エイジは十メートルほど押し戻されたが、どうにか突撃を止めることに成功する。不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドとエイジの力比べは、エイジに軍配が上がったらしい。


「ぐうっ!?コイツら…!」


 エイジに押し止められた不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドだったが、目障りなエイジを仕留めるべく盾を迂回するように手足を伸ばして掴みかかった。あれ?前にもこういうこと無かったっけ…しかし、エイジに止められた突撃が最後の悪足掻きとなるだろう。


「逃げてんじゃねェぞ!」

「的が大きくなったっす」

「つれないですね」

「グルオオオオオオオオオッ!」


 何故なら、我々が追い付いたからだ。ジゴロウが燃える拳で背後から殴りかかり、シオが容赦なく火属性の矢でハリネズミにし、ミケロの魔眼が焼き貫く。カルがのし掛かって爪と牙、そして尻尾で切り裂いて私は魔術で焼き尽くす。


 さらにセトゥン殿達も槍や手斧で攻撃している。彼等からすれば助けるべき酋長の息子が危機に瀕したのだから必死だ。所詮は雇われである我々とはモチベーションからして異なる。


「ふん!ぬぅん!」


 押さえていたエイジだが、彼は冷静に盾を迂回してくる手足を斧で切り落としていた。普段使いの斧ではなく、盾の裏に仕込んでいた小型のモノを使っている。盾を剥がそうとする者への対策として編み出したのだろう。


 集合体という性質と恐るべき再生能力によって戦い続けていた不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドだったが、終に全ての個体が力尽きた。純粋な意味での強さは大したことは無かったが、色々と考察のし甲斐のある敵であった。素材を剥ぎ取り次第、予定通りに出立するとしよう。



◆◇◆◇◆◇



――――――――――


種族(レイス)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

職業(ジョブ)レベルが上昇しました。1SP獲得をしました。

【魔法陣】レベルが上昇しました。

新たに儀式陣の呪文を習得しました。

従魔の種族(レイス)レベルが上昇しました。

従魔の職業(ジョブ)レベルが上昇しました。


――――――――――


「迷惑をかけたね、イザーム」

「いいえ、ムーノ殿。こちらとしても収穫がありました」

「…本当に黒壁に行くのかい?」

「ええ。全員で話し合って決めたことですから」


 セトゥン殿達と共に途中までキルデ少年を送った後、我々は少し話し合ってからナデウス氏族の言う黒壁へ行く事に決めた。最初は適当に大河を溯上するつもりだったが、不完全人造人類ホムンクルス・フェイルドと戦った事で事情は変わった。つまり、黒壁には興味深いモノが沢山眠っていると踏んだのである。


 現地の住民が避ける場所なので間違いなく危険な地域なのだろうが、そこに高確率で宝が眠っているとなれば行くのがプレイヤーである。我々は他の誰よりも進んでいなければ気がすまないタイプではないが、目の前にある誰も目にしたことが無さそうなある場所を放っておくことは出来ない。結局はプレイヤーなのだから。


「風来者ってのは皆こんなに無鉄砲なのかい?精々頑張りな。あと、これがキルデを助けてくれた礼だよ」


 そう言ってムーノ殿は細緻な紋様が描かれた木の板らしきモノを手渡してくれた。これは一体なんなのだろうか?【鑑定】してみよう。


――――――――――


ナデウス氏族の紋入り手形 品質:優 レア度:S(特別級)

 疵人のナデウス氏族が作成した手形。

 独特の紋様は彼らの信頼する者を意味している。

 丁寧な作りであり、簡単には壊れないように工夫されている。


――――――――――


「コイツはアタシがあんた達の身分を保証するって意味さ。疵人(スカー)以外でもこの大陸に住む者達なら理解出来るよ。ま、理性の無い奴にゃ伝わらんだろうけどね」

「それは…ありがとうございます」


 私は礼を述べるが、ムーノ殿は手をヒラヒラと振りながら去っていってしまった。彼女はこの度の働きで我々の後見人になってくれたようだ。憎まれ口を叩いていても、酋長の息子は大切に思っているということだろう。きっと、不器用なのだ。


「さて、と。そろそろ行くか。シラツキ、発進!」


 別れの挨拶はもう済ませた。後は目的地まで飛んでいくだけである。我々が乗り込んだシラツキはゆっくりと川から浮上し、目的地へ向かって飛び立った。


 まさかシラツキが飛ぶとは思っていなかったのか、見送りに来てくれた者達は目を皿のように大きく見開いている。基本的に冷静なムーノ殿すらも開いた口が塞がらない様子だ。


 一方で小さなアルヴィーはキャーキャーと歓声を上げながら全力で手を振っていた。ちょっと前は泣いていたのに、エイジはどうやって彼女を明るくさせたのか。謎である。


 とにもかくにも、これからは新たな危険地帯に突入する。気を抜かず、それでいて冒険を楽しもうじゃないか!

 次回は11月1日に投稿予定です。

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エイジにいちゃん良すぎる 近所に住んでてたまに遊んで欲しい
[気になる点] 誤>他の属性を使った方がいいしので 正>他の属性を使った方がいいので
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