表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/2

伝承 -白亜の項-

このお話は序章よりも前の、世界観にまつわるお話です。

それはそれは、とても長いお話です。


鴉が生まれたその時から存在した半身(カゲ)のお話なのです。


あるところに二匹の鴉が居ました。


二匹は闇よりも暗く。

朝露よりも儚く。


二匹を見分ける術はない程までに似通っていて、しかし対極にあるため何処迄も違ったのでした。


鴉は鳴きます。


「どうして2つに分かたれてしまったのか。本来なれば僕達は同じモノだったはずだ」


「あゝどうか嘆くな片割れよ。私達は2つだからこそバランスが取れているのではないか」


そんな交わしを幾億も繰り返しながら、鴉らは死しては蘇りを繰り返すのです。


それはさながら円舞曲(ワルツ)のように波打ち繰り返されるのです。


鴉らに定められたのは輪廻ではありましたが、彼等はその意味を知らぬままに在り続けます。


ある時鴉はまた鳴きました。


「恐ろしく長い夢を見たようだ。まるで、私達が何回も作り直されているような」


鴉はふとした拍子に自身の記憶を覗いてしまったのです。


それは途方も無いほどの膨大な記憶。


そうした先に、彼等の起源を見掛けた矢先に。


「あゝ片割れよ、さようならだ」


あっと声を出す間もなく、半身(カゲ)が一匹闇に溶けましたとさ。



後に残された鴉は既に半身ではなく、個となり、全となり。


片割れを探し続けます。


一対となる者を見つけ、今度こそ離れられぬ様一つとなるために。


月のない世界で暗がりにひとつ残された哀れな鴉は鳴きます。


「あゝ、保たれていたものが傾いた。このままではいずれ僕は崩折れ消えてしまうだろう。どうか、どうか、半身よ。もう一度僕の前に現れてはくれぬか」


しかし待てども探せども先は夜道。


やがて鴉は動くことをやめました。


代わりに、鴉は思考しました。

考えられるべき全てを。


記憶よりも深く、深く。


そうしてまた幾億と時が過ぎ去りました。


幾星霜の時を迎えた鴉は、頭が焼けてしまったかのように感じました。


しかし、貼り付いた喉を振るわせ鳴きます。


「真実だ。これが真実か。どうして今まで気付きもしなかったのだろう。あの時の僕達は。あゝ片割れよ。嘆くな片割れよ。僕は知った。あの時君が見た記憶の根を」


鴉は起きます。そうして一度も使ったことがなかった両手を目一杯に広げました。


「僕達はまだ産まれてなんかいなかった。ただ、此処に在るだけだった。それはそれは様々なものを見た。新興と衰退。それはただの夢に過ぎなかった。あゝ、片割れよ。君は先に気付きながらも待ってくれていたのだな。僕が、そこに行ける日まで」


鴉は一声鳴きました。


その時闇は強く羽ばたいたのです。



かくして世界は崩れました。


記憶をなくした世界は既に煤けて散り散りになっていましたが、思考が飛び去ったことでその残りも消え去りました。


残ったのは白く眩い明かりに照らされた真っ白の砂地。


山もなく、谷もなく、風も水もない世界。


これはとても長い長いお話の。

始まりの一ページです。

読んでくださりありがとうございました。

次回からキャラクター登場予定です。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ