3.婚約は破棄される事はありません。いい加減に諦めて下さい。
「どうぞ、お掛けになって。」
ブランチュ侯爵家に私は招待された。お互いに挨拶をした後、ブランチュ令嬢の命令で使用人は誰一人いなくなり、二人きりになった。
ブランチュ令嬢は何を言って来るのだろう。レナード様の事を諦めたという話かしら? 私への謝罪とか? 少しだけ期待に胸を膨らませた私だったけれど、
「単刀直入に言います。ハイチュウ令嬢が何をしても、私とアルフォート侯爵の婚約は破棄される事はありません。いい加減に諦めて下さい。」
そんな期待を切り捨てられた。私は相手が侯爵令嬢であろうと、レナード様の為ならば立ち向かうと決めていた。だから、反論する事にした。
「…ブランチュ侯爵令嬢。私とレナード様は愛し合っています。お言葉ですが、貴女は邪魔者なんですよ。ブランチュ侯爵令嬢がどんなにレナード様の事が好きでも、貴女の想いは届きませんよ!!」
私の言葉に、ブランチュ侯爵令嬢は黙り込んだ。私の言う事は正しくて、何も言い返せないのね! 良い気味だと思う。
「…なるほど、改めてよく分かりました。アルフォート侯爵の仰っていた通りですね。」
「な、何がですか…!?」
「貴女は、侯爵の妻には相応しくありません。」
その言葉に、忘れていた痛みを思い出す。何故、ブランチュ令嬢がその言葉を知っているの!?
「っ、ど、どうしてそれを、?」
「…私の話を聞いていなかったのですか? アルフォート侯爵から聞きました。」
いや、待って…レナード様がブランチュ令嬢にそんな事を言う筈がない……なら、やっぱり。
「…ひ、酷いですブランチュ侯爵令嬢!! 貴女がレナード様に、私にそんな事を言うように脅したのですね!?」
なんて最低な人。こんな人がレナード様の婚約者になるだなんて、絶対に許せない。
「…私がアルフォート侯爵を脅した? 何故そんな話になるのです。」
「私を騙そうとしたって無駄ですわ!! だって、レナード様は私を愛しています。それは、ずっとレナード様の傍にいた私が誰よりも知っています! そんなレナード様が、私が妻になる事を反対する筈ないじゃないですか!!!」
そう、私は知っている。レナード様の想いを。ランカ・ブランチュの嘘に騙されたりしないわ!
「……成る程。確かにアルフォート侯爵はハイチュウ令嬢を愛しているのでしょうね。」
その言葉に、私は勝った、ランカに勝ったんだ! と思った。でも、
「でも、アルフォート侯爵がハイチュウ令嬢は妻には相応しくない、と言ったのは本当の事ですよ。」
続けられた言葉に、私はまた凍り付いた。