2.身分を利用する女なんかに、私は負けたりなんかしない!
今、私はレナード様に、何と言われたの?…。
「ごめんねアイラ、これからブランチュ令嬢と約束があるんだ。また今度話そう。」
レナード様は私に背を向けて歩き出す。私は遠ざかるレナード様の背中を見つめる事しか出来なかった。
「私が…レナード様の妻に相応しくない…?」
分からない…なぜそんな事言われなければならないの。今の言葉は、本当にあのレナード様が言ったの? レナード様は私の事が好きなのに、一体なぜ…。
思い悩んでいた私は、ふと気が付いた。あぁ、どうして気が付かなかったのだろう。レナード様が私に酷い事を言う筈がない。そうよ、私に酷い事を言うように脅されたに違いない。考えられるのは、レナード様のご両親。もしくは…ランカ・ブランチュ侯爵令嬢に違いない。
「…許せないわ。私とレナード様を引き離そうとするだなんて。そんな事は許されない! レナード様は私の運命の人なのよ。」
諦めてはいけない。私は自分を励ますと、今後の事を考える為にも家に帰る事にした。
◇◆◇
「レナード様っ!!」
「アイラ、今日も可愛らしいね。」
パーティー会場でレナード様を見つけた私は彼に近づいた。何時も変わらない、レナード様と想いを通じ合わせたその日から、私達はこうして挨拶をして楽しいひと時を過ごす。けれど…
「…ご機嫌よう、ハイチュウ男爵令嬢。」
「…はい、ご機嫌麗しゅう。ブランチュ侯爵令嬢。」
レナード様の近くには、ブランチュ令嬢がいるようになった。私達の仲に割り込んできた、邪魔な存在。だから、私は考えた。
「ねぇ、レナード様。あそこのテーブルにあるケーキは、前に一緒に行ったお店のケーキに似ていませんか?」
「うん? …あぁ、確かにそっくりだね。」
「とても美味しかったですよね! 食べてみませんか?」
「そうだね、食べてみようかな。」
ブランチュ侯爵令嬢に、私とレナード様の仲を引き裂く事は出来ないのだと思い知らせてやろうと思った。そして、婚約を諦めて貰う事にしたのだ。私はブランチュ令嬢がいても居なくても、レナード様の傍に居続けた。婚約者であろうが何だろうが関係ない。レナード様も、変わる事なく私を優しく受け入れてくれた。
あぁ、やっぱり。私はレナード様に愛されている。妻に相応しくないだなんて、そんな事を思う筈がない。ランカ・ブランチュなんかに、身分を利用する女なんかに、私は負けたりなんかしない!
私の想いはいつか届き、レナード様から婚約解消されたと言われる日を待ち続けた。そんなある日、私の元に一通の紹介状が届いた。
「…ブランチュ侯爵家からの招待状?」
それは、ランカ・ブランチュから、私と二人で会いたいという内容の手紙だった。




