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魔族戦争編 85話 

そろそろディルさんには強くなってもらわねば…

目の前で苦しそうな表情で悶えているベテルギウスを見下ろす俺とじぃ。手をかすことも、奴隷紋も消す気は一切ない。それはベテルギウスの自業自得だと。多くの情報を教えてくれたことに、感謝はしているが俺を裏切り…デュークの遺体を勝手に帝国に送った。これは許せない。


「はぁはぁ…主人よ…いっそ…いっそワシの首をはねてくれ!も、もう…」


「わかった。じぃ。槍を」


俺がそっとじぃに手を出すと、じぃは驚いた表情で俺に槍を手渡してくる。


「主人よ…感謝する…」


「俺も多くの魔法が得たかったところなんだ。貴様の死が我の力なり、帝国は破滅する」


俺は軽く笑みをつくると、ゆっくりと目を閉じたベテルギウスの心臓を狙って突き刺す。ゆっくりと刃が体を通っていく感じが伝わって来る。槍もいいかもな…

確実にベテルギウスが死んだことを確認すると、俺は【黒装 闇魔皇帝】を発動させ鎧を着る。そしてまだ暖かいベテルギウスの体に触れると、眩しい光が生まれゆっくりと俺の体に入ってくる。自ら俺の体に入るか…

その瞬間頭に多くの情報が入ってくる。詰め込まれたような感覚だ…


『これで全属性の魔法が使えるわけですか…かなり運命が変わってきましたが、仕方ありませんね』


ロット。その運命ってのはどういうことなんだ?…いい加減教えてくれ。それと、邪魔をしてくる?誰がだ?


『お答えできません。』


ロットはそれ以上喋ることはなかった。俺の人生はどうなってるんだが…平和に暮らしたいぜ

ベテルギウスのおかげで全属性の魔法が使えるようになったようで、手のひらに水を生み出したり、土を生み出したりして遊んでいると、じぃが俺を真っ直ぐ見つめてくる。


「どうかしたのか?…」


「不思議な力ですね…」


「まあな。さて、俺は少し旅に出る。数週間くらいはかかると思うが、この城を頼む。」


「承知しました。お早めにおかえりくださいね?さすがに城の防衛戦でも、私一人では…」


「判っている。っと、その前にオリオンはどこにいる?」


「地下牢です。本当にされるのですか?」


「ああ。」


俺は背中でじぃの返事を聞くと、そのまま部屋を出て行った。



ロット、オリオンだがどうすればいい?正直、バクのスキルがあればよかったんだが…


『そうですね…ベテルギウスのスキルに『並列思考』がありましたし。パペット・マルペットと契約するのが良いかと」


パペット・マルペット?なんだそいつ?聞いたことないぞ?


『簡単に言えば上位精霊です。呼び出すと、勝負を挑まれそれに勝利すれば契約できます。ブラッディピクシーと戦闘を行った後に拾ったあの魔法陣に闇魔法を流してみればすぐ来ると思います』


簡単に言えば、ボコボコにして強さを示せば仲間になるってことね…

俺は黒の吃驚箱から、あのカフ兄の血がついた魔法陣を取り出す。かなり古いもののようで、ところどころ傷んでいる。俺は廊下を歩きながら黒魔法を流していく。すると、徐々に魔法陣が黒く染まっていく。ある程度魔力を込めると、魔法陣から黒い手が飛び出してきた。


『流すのを止めてください。それはまだ、まずい』


ロットが少し焦ったように早口で、止めてくるので魔法を流すのをやめる。すると、徐々に黒い腕が魔法陣に戻っていく。


『もう少し流す魔力を少なくしてください』


「要望が多いやつだな…はぁ…」


今度は先ほどの魔力の半分ほどを流すと、一瞬魔法陣が光ったと思うとすぐに消えてしまった。また失敗か?そう思っていると、肩を誰かに叩かれたので振り返ると、指が俺の頬に当たる。


「君が僕を呼んだのかな?」


そこには120センチほどの身長の少女が浮かびながら俺を見ていた。黒いローブに黒いブーツ、背中には大きな棺桶を背負っており、頭には今にも『グリ◯ィンドール!』と叫びそうなとんがり帽子をかぶっている。

顔は白く、相対的な黒と赤のアイラインに真っ赤な唇。幼さを残しながらも、メイクで妖艶さが足され不思議な子だ。


「ああ…俺だと思うが、君は?」


「そかそか〜。僕はパペット・マルペットのヒル・サイレント。」


「精霊にも名前があるんだな…」


「上位精霊だからね〜さて、いっちょ勝負でもしましょ〜」


少女は背中に背負っていた棺桶を楽しそうに開け中から何かを取り出そうとしている。


「おう。さて…最近体がなまっち待ってるからな…本気出せっかな…」


「ふふふ。僕はこれと、これとこれ〜」


そう言って棺桶から取り出しのは小さな三つの人形だった。いや、ぬいぐるみといったほうがいいか。少女は人形を地面に叩きつけると、人形から煙が吹き出しそこには、真っ黒い肌をした異形が俺を睨んできていた。


「こ、こいつは?…」


「僕のおもちゃ!僕が勝ったら、君もおもちゃ!」


「負けられねーな…」


俺は腰に差した星斬りを素早く抜いて構える。異形からはとんでもない威圧が飛んでくるからだ。相手を純粋に倒すという純粋な本能なのだろう。


「さあ、始めっ!!」



サウロンの住む屋敷の一室。そこでは、横たわる頭部のない遺体。その遺体の胸には切り開かれたあとがある。

その遺体を二つの影が囲む。


「おお…届いたか…これがデュークの肉体…これがあれば我は完璧になるのだな。リリアンナよ、もう少しだ」


「さ、さあ…早く。もう一度…デュークさまに…」


「うぐっ…あ、あああ!な、なんと素晴らしいのだ…これはすごい」


サウロンが遺体に触れると、身体中から黒い霧が遺体とサウロンが隠れる。それを不安そうに眺めるリリアンナ。

数分後、霧が完全に晴れるとそこには裸のデュークの姿があった。


「デューク様!…」


リリアンナはまっすぐ裸のデュークに抱きつく。サウロンはそっとリリアンナを抱きしめると、拳を軽く握る。


「これは素晴らしい…ふんっ」


握った拳を軽く降ると、純粋な魔力が吹き出し、壁を破壊する。サウロンの持っていた魔力とデュークの遺体の魔力が合わさって結果だ。


「さあ、妻 リリアンナよ。行くぞ。とりあえず、魔王にでもなるとしよう」


「ええ。いつまでも…どこまでも…」



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