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魔族戦争編 84話

じぃにお茶に誘われたので、ラフな格好でじぃの部屋に向かう。確かフィローラといったか?じぃとの関係は元カノといえばいいのか?まあ、サリバンの話だと二人とも両想いだったんだし元カノか。その前に敵か味方か…判断しなければな。この状況でサリバンのメイドがやってくるなんて怪しすぎるし。

俺は気を引き締め、じぃの扉を叩く。


「じぃ、居るか?入るぞ」


「どうぞ、ディル様」


扉を開け中に入ると、じぃとフィローラが仲良く話をしていた。机の上には綺麗なカップやポットにケーキスタンド甘そうなケーキなどが並べられていた。じぃの部屋は壁一面が本棚になっていいた。置かれている家具もかなりアンティーク感漂うものばかりだ。俺は二人の話の邪魔にならないよう席に座る。


「ようこそ、ディル様。私の部屋に入るのは初めてでしたな。」


「そうだな…想像していた通りだ。」


じぃは伏せてあったカップに紅茶を注ぐと俺の前に置く。ほのかに茶葉の香りがする。


「あなたが、ジル様のお孫様ですね。先ほどはご挨拶できず申し訳ありませんでした。改めて…私はアラクネ族のフィローネと申します。」


「これはご丁寧にどうも。俺はディル=アヴィオール=ドラキュースだ。それでじぃ、フィローラさんは元カノってことか?」




「ええ…昔の恋人であっております。」


「そうか。まあ、祖母もすでに死んでいるならじぃの好きにするといい。そういえば、フィローラさんとじぃは同い年なのか?どう見てもフィローラさんは若いと思うのだが」


「ディル様、『さん』付けはおやめください。私とジル様は同い年ではありませんよ。私の方が年下ですが、年齢は秘密ということで」


「わかった。フィローラと呼ばせてもらう。すまないな、配慮が足りなかった。」


俺は軽く頭を下げると、フィローラは笑顔で許してくれた。敵ではないかと疑っていたが、その可能性も低かな?…

ジルは俺とフィローラを見ながら笑顔になる。


「んで、『誓いの牙』とはなんだ?」


「誓いの牙とは、吸血鬼が心に決めた女性の喉に牙を立てることです。吸血鬼が牙を立てるのは血を得るためであり、血は吸血鬼にとって命と言っても過言ではありません。まあ、要するに婚姻するということですかね…」


照れ臭そうに頬を掻きながら説明してくるジル。少しいじってやろうか…


「では、じぃは誓いの牙を立てるのだろ?」


「ええ…そのつもりです」


「では、じぃはフィローラを愛しているということだな。それで、フィローラはどうなんだ?」


「私はジル様を愛しています。ジル様が私を好きでいないとしても愛し続けます」


自信満々にそう答えるフィローラに、ジルは顔を若干顔を赤くする。俺は紅茶を一口飲んで間を空けてからジルを見つめる。


「じぃはフィローラを愛しているんだろ?言葉にしなければわからないんだが」


「うぅ…それは言わなければいけないのですか?」


「当たり前だ。さあ、どうなんだ?」


じぃは軽く俺を睨むが、フィローラは目を輝かせながらじぃを見つめる。どうやら言って欲しいみたいだ。


「私も…あいし…?…ディル様」


「ああ、じぃ。わかっている。デュークの寝室だな」


俺は気配察知スキルで、誰かがデュークの寝室に侵入したかわかった。じぃも同じようにわかったみたいだな。それにしてもデュークの寝室に何のようだ?


「じぃ!寝室にあるのはデュークの遺体だよな」


「明日の満月で火葬する予定でした。今もデュークの遺体は部屋に置かれています」


「何が目的かわからんが、行くぞ!」


「ええ」


一人現状が飲み込めていない表情のフィローラを置いていき、俺とじぃはそのまま部屋を出て行った。



長い廊下を多くのコウモリが飛んでいく。洞窟でもここまで多くのコウモリが飛ぶことはないだろうな。

俺はコウモリの姿で飛びながらじぃに話しかける。この状態だと、声で話すのではなく念話のようになる。


「何か心あたりはあるか?…」


「いえ…ですが…何でもありません。」


「そうか。さて、着いたぞ」


俺とじぃは姿を元に戻し、俺は星斬りをいつでも抜ける状態に、じぃはミノタウルス戦で使っていた黒槍を構えている。俺はデュークの寝室の扉を開けると、そこにはベッドに向かって何かを詠唱しているベテルギウスの姿があった。ベテルギウスはチラりと俺をみるが、詠唱をやめる気配がない。


「ベテルギウス。ここで何をしている…」


『ベテルギウス!?…まさか、こういう邪魔をしてくるのですね…』


脳内のロットの声が驚きの声を上げる。ロットの件は後で直接聞くとして。

俺がベテルギウスに問いかけると、同時に詠唱が終わったのかデュークの遺体が載せてあったベッドが光り出したと思うと一瞬で消えた。


「デュークの遺体をどうするつもりだ?…」


「ワシのすることは済んだ…すべて話そう。わしは帝国から吸血皇帝の遺体を手に入れろと勅命を受けた。吸血皇帝を殺したウェッタにあると踏み、何か秘密を知っているものから聞き出すためにウェッタのゴミ屋敷に潜り込んだ。奴隷としての。そうすると、主人がやってきた。主人なら何か知っているかと思い近づいた。本当に…騙して申すわけない」


「そんなことはどうでもいい。それでデュークの遺体をどうするつもりだ」


「主人は吸血鬼というのを理解していないようだな。吸血鬼は血を飲めば身体能力が跳ね上がるだけでなく、若返ることができる。不老不死と言っても過言ではないのじゃ。」


「まさか…帝国は堕王にでもなるつもりか!」


じぃが今にもベテルギウスに殴りかかるほどの勢いで叫ぶ。ものすごい威圧が飛んでくるがベテルギウスは表情一つ変えることなく俺を見つめる。


「ああ。堕王になるつもりじゃ。主人は堕王というのを知らぬじゃろう。堕人…つまり主人が母親を救うためにやった行為を王がするつもりじゃ。しかし、主人が母親に移植したのはオーガの肉体じゃ。その母親に特殊な力を持ったじゃろ。それがもし、吸血皇帝だった場合どうなるか想像できるか。まあ、聖女は殺されてしまったしの。すぐに新たな聖女を探すだろうが」


「聖女…ラスティか。」


「そう。聖女は常に体から聖魔法を放っている。見つけることは比較的簡単じゃ。」


「聖女を殺したのは誰だ?…本当にアクィラなのか?」


「ウェッタの命でアクウィラが殺した。これは主人と一緒に行ったクラリスの墓で見た光景での…先ほど説明した帝国の狙いもすべて墓で見た光景じゃ。」


「つまり、ウェッタに魔族が狙ってきたのは帝国の仕業でもあるわけだ」


「ああ。じゃが移植するのは吸血皇帝の心臓のみじゃ。他はそのまま吸血鬼の男に渡す約束じゃ。」


「どういうことだ?…多くの部分を移植すればさらに強くなれるんじゃないのか?」


「それはそうじゃが、心臓だけでもかなり強いことにはかわりない。肉体はどうするつもりか知らぬ…」


「じぃ。何か思い当たるところはないか?…」


「あります…しかし…最悪の事態になりそうですな…。サウロンはリッチなので、死体を体に融合すればデュークと同じ力が使えます。」


「うぅ…」


突然ベテルギウスが胸を押さえてうずくまった。見ると全身から黒い棘の刺青が浮かび上がってくる。奴隷紋か!


「はぁはぁ…魔法で奴隷紋を押さえておったがもう限界のようじゃ…この一件が終われば、孫を解放してやってくれぬか…主人よ。」


「ああ。分かっている。」

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