学園編 84話
「わかった。名は『ネイキッド』…一言で言えば、変態だな」
「変態だと?…」
「そんで…えーと…行くのか?」
「あ、ああ。私には時間がない。少しでも強くなれるのならなんでもするつもりだ」
「そうか。よし!行き先までは俺が連れて行こう。今度の休暇でいいだろう」
「何を言っている。魔族の一件で、遠出できないんだぞ」
「遠出…まあ、遠出だな。だが、バレることはないし、俺と一緒なら…多分日帰りだ」
「一緒なら?…」
「ふふふ。それは、休暇まで楽しみにしてろ。さて、そろそろ戻らないと 「ここにいましたか!みなさん!もう!すでに授業は始まっているのですよ!」
オリオンの話に声が重なる。全員が声の主の方を振りむくと、そこには黒いスーツに白い髪の老人が頬を膨らませながらこちらに向かってきていた。
「申し訳ありません、フルーク先生。」
「全く…まあ、みなさんお若いですから。大丈夫ですよ。ベテルギウス様の学園でも同じような子がいましたよ」
長身のフルークが、前かがみになりカフと目線を合わせながら笑顔を向けている。まるで自分の子供を愛でる親のように優しい目だ。そんなフルークはいい先生なのだろうと、思っていると横にいたオリオンがムッとした表情を浮かべる
「下手なことは喋るな。教室に戻るぞ」
オリオンは怒鳴るようにそういうと、早歩きで校舎に入っていく。そのあとを、追いかけるラスティ。その後ろ姿を優しい視線で見送るフルーク。フルークとオリオンはどういう中何んだ?
「どうしたのですか?カフくん」
「なんでもありません。さて、授業です…確か一限目は…」
「はい。私の授業、『闇魔法の防衛術』です」
満面の笑みで私を見てくるフルーク。一瞬瞳が赤く染まった気がしたが…気のせいだろう。
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そのあと成り行きで私はフルークと一緒に教室に向かうことになった。廊下ですれ違う生徒にフルークは笑顔で挨拶をしていく。普通に優しい先生に見えるだろうが、私はそうは思えない。オリオンとの模擬戦終わりに話しかけられるまで気配を一切感じなかった。そして今も足音が聞こえない。身のこなしも普通に見えるが、何があってもすぐに対処できるようにしている。明らかに戦闘経験が豊富かつ、かなり強い。
「何か見られている気がするのですが…気のせいでしょうか?」
「いえ、申し訳ありません。」
「新任教師ですから色々気になるのでしょう。何でも聞いてください、お答えしますよ」
「そうですか…では、オリオンとはどのような関係なのですか?」
「オリオン…ふふふ。すでに呼び捨てにするほど仲が良くなったようで嬉しいです。そうですね…色々と複雑ですが簡単に言えば幼少期からお仕えしていたという感じでしょうか」
「フルーク先生も闇魔法を扱えるのですか?…」
フルークが立ち止まり、私を見てくる。そこには先ほどの優しい笑顔はなく、射殺すように鋭い目で私を見る。一瞬の変化に戸惑いというより、恐怖を感じた私はすぐにフルークから距離を取り剣を抜き構える。
「ふふふ。オリオン君ですね。あの子に説明はされなかったのですか?」
「説明…誰でも闇魔法は扱うことはできるなど言っていた…」
「その通りです。まあ、適性があるかどうかですが。おっと、お答えしてませんでしたね。その答えは『ハイ』です」
「闇魔法…魔族の魔法ではないのですか?」
「魔族。カフ君は魔族を一括りで見ていますね。詳しくは授業で扱いますので、教室につきましたね、どうぞ」
フルークは先ほどの優しい笑顔に戻ると、いつの間にか着いていた教室の扉を開けてくれる。私は軽く頭を下げると教室に入る。教室ではすでに生徒が着席しており視線が一斉に集まってくるが無視ししてラスティの座っている一番奥の窓際の席に向かう。フルークはそのまま教卓に登る。
「遅れてしまってもうしわけありません。では授業を始めましょう。あ、そのままで結構。」
委員長であるエトムントが号令をしようとしているのをフルークが止める。フルークはそっとジャケットの内ポケットから一本の杖を取り出すと軽く振ると黒板に置いてあったチョークが浮かび、黒板の上を走る。黒板には『闇魔法の防衛術』と書かれている
「この授業は『闇魔法の防衛術』ですね。皆さんはどこまで闇魔法について理解していますか?誰か…」
すると、一番前の席に座っていたエトムントが指先までピンと腕を伸ばす。他の生徒は誰もあげていないのは、おそらく様子を見ているのだろうと思うが…エトムントは少し空気が読めないというか…
「おお、エトムントくん。どうですか」
「闇魔法は魔族のみの魔法であり、邪悪でとても危険な魔法です。」
「はい。座って結構です。エトムントくんの言う通り、闇魔法は魔族のみの魔法と言われています。闇魔法は光魔法または聖魔法で打ち消すことができます。しかし、このクラスに光魔法ないしは聖魔法の適性を持つ生徒がどれだけいるでしょうか。適性のない魔法使いが闇魔法と戦う場合は通常の魔法使いの戦いのようにより強い魔法で打ち消すしかありません。この教室で魔族と戦闘を経験したことがある方はいらっしゃいますか?」
フルークがそう聞くと、生徒は一斉に顔を後ろに向けカフを見つめる。カフは、そっと手を挙げる。
横にいたらラスティは眠そうに瞼をこすり、その奥のオリオンは腕を組んでどこかを見つめている。
「そうですか…その時の状況を話せる範囲でいいので話してみてください」
「私は何もできなかった…ただ、強かった。それだけだ。」
「いやな思い出を思い返させてしまい申し訳ありませんでした。魔族は基本的なスペック自体が高いので仕方ありません。カフ君。その魔族の種族は何だったかわかりますか?」
「申し訳ありません、わかりません」
「そうですか。魔族と言っても多くの種族がいます。アンデッドもいれば、ミノタウルス、蝙蝠鬼などなど。その強さは固体によって違い、戦闘スタイルも違います。
では、火魔法に『炎操』という魔法があります。ドワーフが最も長けている魔法でもありますが、この魔法を扱える人間は少ないですよね。つまり適性があるからといって全ての魔法が扱えるわけではないということです。それは闇魔法でも同じなのです。種族によって、固体によって魔法が変わってきます。私は『防衛術』をあなたたちに教えるということは、すなわち戦闘を教えるということだと理解していただきたい。ですので、これからは座学と実技を半々で行います。座学では、魔族の種族と生態と対策。実技では、座学での復習として軽い戦闘訓練を行います」
「そ、それはどうやって戦闘訓練をするのでしょうか!安全面は!」
「魔族役は私が務めます。ベテルギウスさまの学園でも同じように行っているので安心ください。では、今回は座学を行います。『アンデッド種の特徴と生態』からです」
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