9話 魔法の検証とエンカウント
それからは賊が入ったと言うことで、俺は女騎士の部屋に居る。俺をどうするかの話し合いで女騎士が猛アピールしたようで女騎士が預かることになったそうだ。
しかし、それから俺が一人きりになることは少なくなった。今は女騎士から離れることができる少ない時間の訓練の時間だ。女騎士の訓練は毎日4時間で、その間はメイドが俺を見守る。
「さあ、坊ちゃん。お休みの時間ですよ。」
「……」
メイドは俺をベビーベッドに入れるとすぐに去っていく。そして、俺は今焦っている。
この前、現段階で使用できる魔法の中にあった『影盗聴』を使っている。この魔法は対象の影に手を触れた状態で発動できる魔法で、対象の会話が聞こえる。かけた本人が気を失うか相手が気を失わない限り、いくら離れていようと盗聴できるという何とも悪魔が持っていそうな魔法だ。しかし、この魔法にも欠点があり、魔術の抵抗がある者や、結界が貼ってあるところでは切れてしまう。しかも、一時間に付き20分程度の間を開けなければ会話が聞こえないのだ。
まあ、それでも今の俺にとってはかなりの情報収集になっている。ちょうど、女騎士が魔法系統の抵抗を持っていなかったようで『影盗聴」をかけている。
そんなある日女騎士の会話の中にとてもまずいものがあった。それは俺を育てるにあたって、どれほどの潜在能力があるかを調べるためステータスを確認するというものだ。しかし、今の状況でステータスを視られたら異常なことがばれてしまう…
しかし、まだ乗り切る可能性はある。まあ、ゼロに等しいが…
それは、俺の[魂記録]でスキル[偽装]を得ることだ。今の状況で殺すなどほぼ不可能なのだが…
考えていると、女騎士の会話が頭に入ってくる。どうやら、愚痴のようだ。相手の声は若いな…男か
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「早く終わらないものか…」
「何をそんなに焦っておいでで?」
「焦っては居ないのだがな…あの子が今どうしているかと考えると…」
「ハハハ。確か…ローズ様の義妹の息子さんでしたか?お名前は?」
「そ、そうなのだ!名前は義妹から聞いていなくてな!今度ステータスを見るときに知るのだ!」
「そうなんですか。えーと…『信託』や『天職』を持っていればいいですね。でも、私みたいに[偽装]を持っていたらどうするので?『天職』の[鑑定士]にでも頼むので?」
「分からないな。まあ、[偽装]を持っていたとしてもあの子では詠唱もできないだろう。その前に使えないだろう。」
「そうですね…そうだといいんですが。今度抱かせてくださいね!」
「ああ!もちろんだ!さあ、訓練に戻るぞ!ついてこい!」
「はいっ!」
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ほぉ…いいことを聞いた。しかし、その男からどうやって奪うかだ…
「抱かせてください」と言っていたし、俺を調べる前に抱きに来なければチャンスもないな。まあ、チャンスがあれば…
まあ、いい。それと、魔法の検証だが残り一つの魔法を確認しなければな!まずは[黒い吃驚箱]からだ。
頭の中で[黒い吃驚箱]と唱える。
すると、右腕の辺りに黒い穴が生まれた。穴は手の平サイズのコンパクトだが、右回りにゆっくりと回転している。手を入れてみると、ひんやりとした感覚だ。
これは?…
『お答えします。[黒い吃驚箱]とは空間を作り出し、物の出し入れをできる亜空間収納系統の魔法の上位魔法です。上限が無いため、どんなものも収納できます。亜空間なので時間も止まっていますので物質を形状保存できます』
おお!これはいい!なんも入れるものは無いけど、これからの生活に必須だな。それに異世界の王道でもあるよな。
しばらく見ていると穴が小さくなっていき、最後には消えた。自然消滅のようだな…
よし。これで最後の魔法だな!えーと…[影の操り人形]だ!なんか、名前がかなりやばそうな気がするんだが…
何か「操り人形」がってのが怖いな…いや、このままでとにかくやらないとな!
普通の魔法のように頭に…[影の操り人形]を唱えるが何も起きない…
あれ?失敗したか?…
「ヘルポッケ パルペコ?」
「!?」
何かの破裂音のような声が聞こえたので驚き振りむくと、そこには人型の何かがいた。まあ、絶対人ではない…てか、化け物がこちらを見ていた。身長は2m程の身長が高く、頭が小さく胴長で腕はたらーんと力なく流し地面についている。
こ、こいつは…!?
ステータスですが、なぜデュークが見た時に隠蔽できたのかという質問ですが
自身が相手に見せる場合は、見せる範囲を制限できるが何かしらのスキルや魔道具などを使用すると、丸見えということです。