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73話

「カフ…どうかしたの?…」


「今学園の中に魔族が現れた…アニス先生とコルク先生が向かったけど…どうなるか…」


「なら、ガブリエルを向かわせた方がいいでしょう?…」


「そうだと思うが…勝手にいいのか?…終生の森はどうする?…」


「ねえ、ガブリエル!」


ラスティが大声で魔物を殺していく天使を呼び出す。天使は面倒だといった表情でラスティの元に近づいてくる。


「魔物が来ないようにする結界とかはできない?…」


「できないことはないが、魔力をさらにいただく。維持できるか?」


「どれくらい持つの?…」


ふむふむといった表情で、ラスティを眺める。しかし…今でさえギリギリというのに大丈夫なのだろうか…


「今の貴様では、30分持てばいいくらいだろう…」


「わかった。結界を張って…その代わり、私の魔力が切れるまでに魔族を倒して」


「ふんっ…わかった。では、魔力をいただく」


天使はそっとラスティの頭に手を乗せると、その手が徐々に発光していく。まさに魔力を奪われているというのがわかる。だんだんとラスティの顔色が青くなってくる。


「よし。これだけあればいいだろう。結界を張る…『聖護域』」


天使が歌うような詠唱をすると、一瞬で薄黄色の幕が終生の森と学園をつなぐ壁をぐるっと包む。


「さあ、時間がない…くっ…」


「時間もないだろう!私が背負っていこう。よっ」


私はラスティに背を向けてしゃがむ。ラスティはそっと体を乗せてくるので、足を持って背負う。

ラスティにはいろいろと世話になってばかりだな…ディルは何をしているのだろうか…


「大丈夫?…」


「大丈夫だ。さあ、急ぐぞ!」


「うん…!」



「サリバン様、吸血鬼族 カーミラ・ドラキュース様がお越しです。お通ししても?」


「ああ、頼む」


三つの足が生えているメイドが下がる。彼女は亜人として生まれたせいで人間の街で化け物として迫害を受けていたので、我が屋敷で雇い入れた。


「失礼する。」


黒光りする鎧を着た騎士風吸血鬼の男が先に入り、その後からメガネをかけた貴族風の色白男が入ってくる。色白男は部屋にあった黒龍の喉革で作ったソファーに何も言わず座り、こちらを見てくる。


「無礼な男だ。まあ、いい。それで、この私に何のようだ」


「申し訳ない。少し相談がありまして」


「相談だと?」


「ええ。ミノタウロスの民を受け入れたと聞きました。そのミノタウロスの王を殺したのが誰だかわかりますか?」


「あれはアステリオスのバカが勝手にデュークに因縁をつけ、軍を向けたのだろう?仕方あるまい。しかし、お前も良かったな、兄者が生きていて。一時は勇者に殺されたなどと噂されておったしな」


「…ええ。実はその話に裏があるという話は聞きましたか?アステリオス様にデュークがちょっかいを出していたとい話です」


「なんだと?……詳しく話せ」


「はい」


一瞬色白男が笑った気がしたが…気のせいか。しかし、聞き捨てならないな…デュークめ


私はラスティを背負いながら、学園の中をかける。30分しか持たないと聞いていたせいか、気持ちが焦る。移動まで背負わなかった状態なら2分もかからないので五分もあれば…いける。

背負うラスティが弱々しいのが伝わって来る。そして、自分は何もできことが無性に腹がたつ。助けられて、疑って、迷惑をかけて…こんな私は友達なのだろうか…ラスティにとっては私は邪魔な存在なのではないか?…

少し考えるとどんどんと悪いことが、頭に浮かんでくる。ディルなら、この今の気持ちになんていうのだろう…ディル…怖いよ…


「待て、小娘…」


天使が突然声をかけてくる。まだ、道のりは半分も来ていないのだが…

ふと天使の顔を見るとかなり真剣な眼差しだったので、黙って従う。立ち止まると、廊下は静かになる。聞こえるのは、ラスティの呼吸と自分の心臓の音だ。跳ねるようにドクドクとなる心臓の音が鬱陶しく感じる。

すると、突然天使が私の頭を掴み押さえつけてきた。突然のことで、バランスを崩しそのまま地面に倒れこむ。すると、後ろから爆発音が響く。


「ちっ…上級か…」


天使は睨むように、前方を見る。私も同じように前に視線を向けると、そこには真っ赤な服を着た少女が、何かを引きずりながら近づいてきていた。先ほどいろいろ考えすぎたせいで、前が見えていなかったようだ。


「カフ。逃げて」


いつもの間を空ける口調ではなく、何か焦りのあるラスティの声に心臓の音がさらに大きくなる。ラスティはまっすぐに魔族を見ながら、立ち上がる。私は未だ天使が頭をつかんでいるので、起こせない


「あなたは…名前は」


「ん?…俺はバク」


「…やっぱり…お前だけは…許さない…殺す…」


「ん?…よく見ればお前、どっかで見たな…エルフかー。」


ラスティはブツブツ呟きながら、ふらふらと悪魔に近づく。すぐに天使がラスティに駆けつけ、止める。見たことがないほど焦った表情の天使が必死にラスティを抑え込む


「お前が…お前が…


「そういやー、人間がエルフで実験したなー。面白そうだったし、ちょいと記憶いじったら見事に魔物になったなー、あれは傑作だった」


抑えこまれているrスティが必死に天使から抜け出そうとするが、天使も本気で止めている。


「殺す殺す!お前だけは、この私が!殺す!」


「なんだ?…そういえば、お前に似てたなー。娘か?…待てよ…」


しばらく頭を抑え目を閉じると、不気味な笑みを浮かべながらラスティを見る。私も少し冷静になったので、天使と一緒にラスティを抑えるのを手伝う。


「おい、小娘、こいつを頼むぞ」


「は、はい!」


そういうと天使はラスティから手を離し、そっと悪魔と対峙する。天使の両手には光り輝く剣が二本握られている。その姿は、神々しくまさに神の使いと実感できる。


「ぉぉお!天使かー…面倒だな。やっと、あのガキの人質見つけたっていうのに」


「時間がないのだ、こっちから行くぞ」


そう言いながら天使は目にもとまらぬ速度で魔族に近づき、二本の剣を振り下ろす。魔族は手に持っていた何かを下ろし、その剣を交わし、バックステップで距離をとるが天使も追い打ちをかける。


「危ないな…てか、聖剣はずるくね。当たったら即死じゃんーまじ不利だわー」


「うるさい。貴様は滅する。以上だ」


「っち…」


次々と振り下ろされる攻撃を魔族はギリギリかわしていく。その表情に余裕は感じられない。

これならいけるんじゃないか!?



「リーゼル!緊急だ、最上級学園魔法を発動する」


「わかりました!教員に連絡を送ります。」


「わかった。詠唱が終わり次第だ。」


そういうと、モールスは懐から一本の杖を取り出し詠唱を始める。その間にリーゼルが教員に念話を送る。

すると、突然地面から幾何学模様の謎の陣が浮かび上がる。周りにいた教員や生徒は警戒をする。しかし、そこから現れたのは皆が待ち望んだあの方だった…


「すまぬ、遅れてしまった」

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