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70話

ディル視点。


突然森の方から、ガサガサと揺れた。敵意は感じられなかったので、てっきり野生動物か何かだと思ったので意識を向けるのが遅れた。しかし、その気配はものすごい速さで駆けてくる。魔族の仲間か?


「ブルゥ…グゥ!」


鼻息荒く、かけてきた馬…あら、これは懐かしい…って、この速さだとぶつかるんじゃね!?

そっと腕を伸ばし迫る黒馬を落ち着かせる。すると、ちょうど手に当たるか当たらないか程度で止まった。綺麗な目で俺を見てくる黒馬に、可愛さを感じ顔をなでてやる。すると、気持ちよさそうに首をこすりつけてくる。


「ディ、ディル!」


想定外の出来事だ。黒馬の巨体なせいで背に乗っている人物に気がつかなかった。その声は、聞き覚えがある…いや、忘れるわけがない…俺を育ててくれた母親の声だ。

声の後にすぐローズが降りてきた。若干だが、痩せているように感じるのは久しぶりにあったからだろうか…

ローズは少し怒っているよう目に力が入っていた。何かバレたか?…力では俺の方が上だが、やはり育ての母親の目は怖い…い、いや、こうときこそ無表情だろ。俺らしく…


「お母様。このようなところで…」


「あなたこそ!ここで何をしているの!」


「それは…」


「ディルにぃ!」


ローズの顔を見ていたせいで、気がつかなかった。俺の下半身に小さな体が抱きついてきた。驚いてすぐ視線を向けると、俺の愛妹のアンカだった。アンカはものすごい力で抱きついてくる。

それを見たローズは毒が抜けたように大きく息を吐くと、知っているいつものローズの表情になった。


「ここは危険よ。早く、避難しないと…」


「そうですね…では、転移します…まずは、俺の影に入ってください…」


俺は影だけに黒魔法の魔力を流し『影渡り』を使う。影は若干黒く靄がかかる。


「こ、これは…詳しくは後で…今は早く…」


「だ、だが…」


ローズは渋るばかりで一向に影に入ろうとしない…いい加減にしてほしいと思っていると、黒馬に俺の思いが伝わったのか黒馬は鼻息を荒くするとローズの襟を噛み、持ち上げる。


「キャ、キャぁ〜〜〜!!」


ローズは必死に黒馬の顔を爪でひっかくが黒馬はそのまま首を振り回し、ローズを俺の影に投げ飛ばす。すると、ローズは…ぽちゃんと音を立てて影に沈んだ。

そして、黒馬も同じように影に進んでくると、突然地面が大きく揺れた。立っているのが辛く、しゃがんでしまう。


「あ、アンカ!ちゃんと掴まってろよ!」


「うん…」


数分経つと揺れが収まったようで、ゆっくりとアンカを支えながら立ち上がる。多くの気配が、俺たちを包囲しているの気付く。ローズやアンカにあったのは、そうとう同様したようだ。いつもなら決してこのようなことがないのに…くそ…


「アンカ!すぐに俺の影に…」


先の揺れのせいで、魔力の集中が切れてしまったので、再び闇魔力を影に流そうとすると、『危機察知』の警笛が頭の中でなり響く。すぐにアンカを抱きしめ、その場で回転しながら距離をとる。

ドゴっ…

ものすごい芯に響くような揺れと爆発が俺のいた地点で、起きた。土煙が吹き荒れる。


「マジかよ…あんたもかよ……」


土煙の中から巨大なものが動く気配がする。その気配は少しつづ土煙から出てくる…

そこには巨大な拳をかたどったハンマーを肩に抱えたヒゲの生やした男が出てくる。俺に剣を教え、この国の騎士をまとめる男…騎士団長のウォッカだ…

ウォッカの目は真っ白で、どう見ても通常じゃない…しかし、アクィラのように何か他のものの気配はないので乗り移ってはいないだろう…しかし、この気配の量は騎士団員だろう…

せめてローズを転移できれば倒せるとは思うが…ふと、アンカを見るとい…アンカを…見ると!?


「久しいな!ディルよ!…どれだけ強くなったか見せてもらおう!」


アンカは目を細めながら、ウキウキしているのがわかる。見た目は可愛らしい女の子だが、近づけばわかる。膨大な闇なの力を感じる。魔力ではない…力だ…


「ま、まさか…」


「よそ見をしているな!ディル!」


目の前にいたアンカが突然、目の前まで移動しウォッカの振り下ろしたハンマーを片手で往なしていた。いかんせん、アンカの体は小さいためウォカの攻撃を完全にいなせきれず、余った力により横に吹き飛ぶ。しかし、すぐに空中でバランスをとるとウォッカにけけ寄ってくる。


「ディル!ここは私が時間をかせ…」


アンカがウォッカに辿り着く前に、アンカを吹き飛ばしたウォッカに近づき『星斬り』で切り掛かる。ウォッカはすぐにディルの攻撃をかわすことは無理だと判断しハンマーを盾に防ごうとしたがハンマーごと真っ二つになる。


「ガフッ…お、おお…ディルじゃ…ねーか…」


「ウォッカさん…」


血を吹き出しながら、まっすぐディルを見るウォッカ。その目はあの行かれているような雰囲気はない。ディルはそっと剣についたウォッカの血を払いながらウォッカを見る。


「はは…は…すまねぇ…多分…俺が原因だろう?…」


「…」


「気にするな…はは…相棒ごと…斬れられる…か。本望じゃねーか…」


「お世話になりました…」


「何もお前に教えちゃいね…よ…お前はもともと…強かった。勇者に…気をつけろよ…」


最後にウォッカが笑顔で笑う。ディルはゆっくりと「星斬り」を音もなく振り、ウォッカの首を刎ねる。


「ディルよ…強くなったな」


「お父さんですか…」


「ああ…本当に殺して良かったのか?」


「いいんです。いつか争うとはわかっていましたから。まさか、こんな形になるとは思いませんでしたが…それで、なせアンカの姿をしているのですか?…」


「それは…まあ、いつかわかるさ。すまないな…この子の魔力が持たない…また会おうディル」


そういうと、アンカは眠るように目を閉じ倒れこんだ。すぐ受け止める…

…アンカ…アンカはなんなんだ?…


「ブルゥ…」


考えていると、黒馬の鳴き声で一旦考えるのをやめた。ウォッカが死んだとしても、騎士団の連中は様子が変わらず今にも襲い掛かってこようとしている。俺はアンカを背中におんぶしながら、騎士団に顔を向ける。アンカを先に転移させてもいいが…こんなに美味しい狩場があるだろうか?…妹の命より自分の強化のことしか考えていない兄は最低だな

黒馬は隣で、右足で地面を掘っている。殺る気満々のようだ…


「お前もやるのか?」


俺がそう聞くと、黒馬はものすごい速さで近くの騎士に近づくとそのまま体当たりで吹き飛ばす。

後ろ蹴り、前蹴り…ものすごく戦い慣れているというか…すごいな…騎士団を一匹で壊滅できるんじゃないか?

鎧を着ているはずの騎士は、数メートル吹き飛ばされ鎧に足跡が付いているほどだ。


「フュ〜…つえぇ…」


数分で騎士団全員と思われる鎧を着た死体がそこら中に転がる。この光景を見たらウォッカ悲しむだろうな…一匹の馬に育てた騎士団が壊滅だもんな

まあ、仕方ないだろう。そっとウォッカの魂記録を発動させる。真っ白で透明感のある魂を保存する…

騎士団の魂も保存していく。


「さあ、早く学園に帰るか…ラスティは大丈夫だろうか」


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