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63話 アンカの秘密と脱出

城の一室。ローズの私室だ。中ではアンカが椅子に座って一人で何かをしゃべっている。


「ねぇ、お姉さん!もっとやってもっとやって!」


「何をしてるの?アンカ?」


扉から入ってきたローズにアンカは笑顔で答える。

アンカ…よくわからないこの子はたまに何もないところに話しかける。そのせいで、周りから変な子だと思われているようだ。兄のディルはディルでやけに大人びた雰囲気で逆に気味悪がられたが、アンカの方がタチが悪い。でも、アンカも同じ私の子。そんなことは関係ない。


「今ね!綺麗なお姉さんがね!遊んでね!くれるの!」


「綺麗なお姉さん?…」


「うん!すっごーーく綺麗なんだよ!見えなの?なら、ライオンさんは?」


「ごめんね…お母さんは見えないや…」


悲しそうにそういうアンカ。本当にこの子には何かが見えているのかもしれない…


「そっか…大丈夫!みんなディルにぃにのお友達なんだって!でも、力が出せないんだって!」


すると、突然背後から声が聞こえた。すぐに振り返るとそこには白髪の見慣れた老人が立っていた。


「その話詳しく聞かせてくれるか?アンカ」


「し、シリウス!学園ではないのか!?」


「今帰ってきたばかりじゃ。それで、アンカ…先の話聞かせてくれるか?…」


「いいよー!あのねあのね!ディルにぃにのお友達なんだよ!みんな!でもね!みーんな悲しいんだって…特に蟹さんが…近くにいるのに気づいてもらえないって…。でも、お酒を持ってるお兄ちゃんはディルにぃにに会えたって喜んでるの!」


「そうかい…なあ、アンカちゃん。その中に双子のお兄ちゃんが見えるかい?」


何かを確認するようにシリウスはアンカに話しかける。アンカは話を聞いてくれる人がいるのが嬉しいのかいつもより大きな笑みで答える


「うん!いるよ!牛さんとか羊さん!とか!みーんな面白いの!サソリさんはいろんな事を教えてくれるの!お姉さんは優しくていっつも遊んでくれるの!牛さんと羊さんはお昼寝ばっかりだけど、いっつも一緒に寝るの!お魚さんはパクパクしてて可愛いの!ライオンさんとヤギさんが守ってくれるの!でね!弓矢を持ってるお兄ちゃんはお母さんを守ってるんだよ!みーーんな、大好きなの!」


「そうか…ありがとうな。アンカちゃん…ローズこっちにちと来い」


シリウスは大きく頷くと、そっと立ち上がりローズの服を掴み近寄らせる。


「どうかしたのか?…お前もアンカを変な子だというのか?…」


「そんなことはない。それに、これは大変だぞ…アンカを連れて学園に来い。獅子が子を守るのはわかるが、弓矢を持つ青年がお前を守っていると言った。…これはまずい…」


シリウスが急に小さな声でローズと話しているのを、アンカはシリウスの服を掴み顔を向けさせる。


「それとね!ディルにぃにのお父さんにあったんだよ!真っ白い毛っけでね!優しいの!もう会えないけど…」


「何?…詳しく聞かせてくれ。ディルの父親は白いのか?」


「うん!よく覚えてないけど…真っ白い毛っけなのは覚えてるのに…」


「無理して思い出すことはないよ。アンカ…ローズ。さっきの話だが…「どうかしたのですか?二人でこそこそと話しているようですが?…」


突然背後から音もなくアクィラが会話に入ってきた。不気味なほど自然な笑みを向けながら見てくる。


「ちょうどいい!アクィラつ!」


急に話をやめ、喉を抑えるローズ。まるで声が出ないように喉を触る仕草に戸惑う。しかし、アクィラは平然と近くにいたアンカを抱っこする。アンカから、聖魔法を若干だが感じる…急にだ…そして、同時に太陽があれば影ができるように、アクィラから闇の魔力を感じる…ごくごく微量だが…これは何かあるな…


「アクィラ、すまないがウオッカを読んできてくれぬか?」


「ウオッカさんですか?…わかりました…後でな、アンカ〜」


アクィラはそっとアンカを下ろすと、すぐに扉から出て行った。すると、喉を押さえていたローズが解放されたのか息を荒げながら呼吸をする。すぐに水を取り出し、ローズに飲ませる。


「何だったんだ…今のは」


「今のはアンカの見えている弓を持った青年がしたことじゃろ…詳しくは学園で話す。今はすぐに移動じゃ…アクイラが来る前に。ハマル…いるか?」


「おります…」


シリウスの声に合わせるようにどこからともなく、一瞬で食堂で料理を作ってくれているハマルさんが膝を折った状態で座っていた。今のハマルは食堂で見せる元気なおばちゃんの雰囲気は一切なく、一兵士のような目だった


「この城で何かなかったか?…」


「あります。アクィラ様が夜な夜な、どこかに出かけているようです…それに騎士団の面々も表情がありません。また、ウオッカ様も同様に…」


「そうか…それはまずいな…ケルピーに例の黒馬を解き放てと伝えてくれ。そして、お主はケルピーと共にこの城を出ろ…今日中にだ。いや、今すぐにだ!」


「はっ…」


短い返事とともに再びハマルの姿が消えた。


「なんだ!?何を言っているんだ!シリウス!」


「説明したいが、それは学園でする。これは本格的にやばいのぉ…遅かったか…決してアクィラにアンカのことを言ってはならぬぞ」


「あ、ああ…」


すると、急に扉が蹴り開けられるように大きな音を立てて開いた。そこには満面の笑みで立つアクィラと、その後ろに視点があっていないウオッカの姿があった。


「連れてきましたよ!ウオッカさんです!それで、何か大事な話でも?」


「ああ…ケルピーが実家に帰るというのでな…それで一応皆に言っておこうと思ってな」


「そうなんですか…あの馬乗りたかったですね…」


「まあ、仕方あるまい…それだけじゃ。すまぬな…わざわざ呼び出してしもうて」


「いえいえ…それで、いつ立つので?」


「わからぬ…」


シリウスが声を落としてそういうと、アクィラは笑みを崩さずに声を落としシリウスを見る。その目は笑っていない…光がない。


「そうですか。では、お二人はアンカを連れていつ学園に行かれるので?」


「なっ!」


「っち…『聖香!』」


一瞬でアクィラとの間に神聖の力のある煙が立ち込める。一気に視界が悪くなると、すぐにシリウスは横にいたローズとアンカを担ぐと転移魔法を発動させる。


「逃がすかっ!」


アクィラが突如、真っ黒に染まった腕を伸ばしシリウスの転移陣に手を触れた。転移陣での転移は安全に転移する代わりに転移陣を少しでも消されたら転移が狂う特徴がある。シリウスの転移陣もアクィラに邪魔をされ転移先が狂った。

はじき出されるように転移したのは、城の裏門だった。そして、ちょうどケルピーが黒馬を放すところだった。


「ケルピー!待つんじゃ!」


「こ、これはリシウス様!どうなすったんで?」


暴れる黒馬を押さえつけながら、シリウスの元にかけてくる。その横にはハマルがいる。

シリウスはすぐに黒馬の頭をがっしりと掴み、その大きく澄んだ漆黒の双眸を見つめながら言い聞かせる。


「この女と子はお前の主人の息子…今はお前の主人か。その母親と妹だ。二人をお前の主人の元に運べるか?」


すると、暴れていた黒馬がおとなしくシリウスの目を見る。そして、鼻を膨らませグルルゥと喉をならす。シリウスはそっと頼んだぞというローズとアンカを見る。


「ローズ。お前は偉大な女騎士だ。だから、自分の子は自分で守れ。そして、お前の息子に助けを求めよ…さすれば全て上手くいく。」


「説明をしろ!シリウス!アクィラは…あいつは!どうしてしまったのだ!」


「後で答えてやる!早く乗れ!」


シリウスの叱咤に押されて、黙って馬に乗るローズ。その前に抱き閉まるようにアンカを載せる。アンカは「お馬さんだ〜」などとのんきに笑っている。その笑顔が今のシリウスを少しだけ癒した。

完璧に乗ると、シリウスは黒馬の尻を軽く叩くとものすごい勢いで黒馬はかけて行った。くらい森に入っていった。


「すまない…さあ、二人も早くいけ。そうじゃ…これに乗れ」


シリウスはハマルとケルピーの前に一台の鉄の塊を出す。


「早くこれに乗れ!ハマルお前は魔法が使えたな…手を魔力で包み、中にある輪をつかめ。そして下にあるペダルを踏めば進む。さあ、早く!」


二人もすぐに頷くと言われた通り鉄ん塊の乗り込む。すると、同時に空から銀色に輝く矢が飛来する。しかし、シリウスの持つ杖の一振りで全て地面に落とされる。ようやく運転できたのか、ものすごい速さで黒馬の消えた森に入っていく。それを後ろで見送りながら、シリウスは身構える。

すると、無数の蜘蛛が地面から這いずり出てきて集まり重なり、一つの影になるとそこからアクィラが出てきた。


「貴様…アクィラに何をした…」


「アクィラ?ああ!こいつ?いやーいい頭してるおかげで僕もやっとまともにしゃべれるよ〜」


「何をふざけたことを…」


「それに、おじさん…みーんな逃げちゃった…全部おじさんのせいだよ。面倒だな…いろいろ計画壊れちゃった…まあいいか。みーんな食べるんだし。さあ、おじさんの記憶はどんな味?」


「ワシを怒らせると、痛い目にあうぞ…若造が」


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