62話 実験失敗とサウロン
『説明いたします。魔法とは無属性の魔力が使い手の意思によってそれぞれの属性の魔法に変化します。武具にも無属性の魔力が存在し、魔法を使うと武具の無属性の魔力も『意思』を感知し応じて魔法になります。付与ですが、ある一定の魔力を流しても壊れない無属性の何かが必要です。そして、その魔力を流しながら付与したい武具に触れさせれば完成です。魔力のパターンによって、できる範囲は変わります。例えば雷魔法を付与した剣は、稲妻が轟く剣だったり、稲妻を纏う剣になったりと、そのパターンは星の数だけ増えます。』
しかし、その魔力の量ってのはどれくらいなんだ?…あまりにも現実離れしてたら無理だぞ?それに割と難しいんじゃないか?…
考えていると、隣の女の子が俺に声をかけてきていたのに今気づく
「…って聞いているのか?」
「すまない。付与だが、魔法を何かを通して伝えないといけないようだ…」
「ないようだって…誰かに聞いたのか?」
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
「おかしな奴だ。まあ、私に話しかけるだけ十分おかしいがな」
『ですから、他人の魔力によって魔法に変化したもので触れさせるだけです。』
ロットの声と混じって女の子の声が聞こえなかった。まあ、気にしなくていだろう…
んで、いいたことは…つまり、俺が魔法で何を魔法で伝えてそれで触れていればいいんだろう。なら、人間にも魔力が上がれてるんだよな…?
「すまない。実験していいか?…」
「あ?ああ…」
俺はそっとミノタウロスの一人がもっていたバトルアックスを取り出した。女の子は目を見開いて驚いているが、無視だ。そして、そっと女の子の方に触れる。
「なっ!お、お前な、何を!?」
「この斧を握ってろ…」
俺はそっと斧を女の子に渡す。戸惑っていたが俺の口調から真剣さを受けたのか、黙って槍を握った。しかし、重いのか、頭は地面に落ちかけている。俺はそのまま女の子に触れている手に火属性の魔力を流していく。だんだんと、無属性の魔力が暖かい熱を持ち始めるのがわかる…
「あっ…ああ…」
「大丈夫だ…ゆっくり…」
俺はゆっくりと魔力を上げていく。すると、どんどんと女の子は甘ったるい声を出してくる。それをジト目でラスティが睨む…そんな目で見るなって…
だんだんと女の子にもたせていた斧が赤く光り出す。そして、女の子の服までも真っ赤になる…え?
そして、だんだん女の子の髪までも真っ赤に染まっていく。
『そろそろやめないと、『精霊』にランクアップしてしまいますよ?』
「は!?」
俺はすぐに流すのをやめる。そして、すぐに手を離すと少女はその場で倒れこんだ。行きはしているが体が熱い…そして体の色はすぐに戻ったが髪が真っ赤になったままだ。
「何したの?…見てたけど…あんなに大量の魔力を流して…殺すつもり?」
「わ、わからん…そんなたくさん流したつもりはないんだが…」
「とにかく、この人…体の魔力が一瞬だけだけど…火属性になった…今はだんだんと治ってきてる…」
「大丈夫そうか?…」
「火魔法は優しいから、害はないと思うけど…懐きやすい…それに、この子魔力の量が多くなった…」
「どういうことだ?」
「魔力を取り込む袋と考えればいい…魔力は均等に袋に入ってる。その袋を限界まで引き延ばした…でも、すぐ中身を抜いた…すると、引き延ばした部分は戻らないから緩む。その緩みを均等にしようと魔力を溜め込む…だから多くなる…」
『火属性は水属性よりは劣りますが人と親和性が高いので、優しくそして、懐きやすいと表現したのでしょう。』
おお!いいことを聞いた。魔力を増やせるのか…今度奴隷に試してみるか…
「そ、そうか…やばかったみたいだな…ふぅ…」
「私にもやって…今の…そうすれば魔剣士になれる…」
「ダメだ…危ない…この子どうする?…」
ここで殺してやってもいいが…さすがにかわいそうだな…だが、いろいろ面倒だろう…
精霊にランクアップって言っていたが…ランクアップって文字通り、精霊になりかけたってことか?でも、精霊は小人じゃないのか?いや、確か、その属性に長けた種族なんだけか?…いつの間にか向かい合っていたラスティが俺の横に移動していた。
「んっ…んん〜!」
女の子は大きな伸びとともに体を起こした。その姿は先までの女のことは別人になっていた。容姿などは一切変わっていないが…
「なんじゃ、貴様らは…な、なんじゃこの姿は!?」
△
暗い一室…ろうそくの明かりが一本だけ付いているくらい部屋に一人の女性が入ってきた。人形のように綺麗に整った体躯。綺麗な髪…二次元でしかありえないような、綺麗な顔を持つ女性。優雅に、手に持つポットを部屋の中央の机に置き、机に伏せて置いてあったカップに注ぐ。すると、ろうそくの明かりが届かないほど遠くから老年の雰囲気のする声が響いた。
「おお!我が妻 リリアンナよ。帰ったのかい」
「あら、サウロン。まだ生きていたのね」
「ははは。すでに死している我にどう死ねと?」
女性の嫌味的な発言を笑いながら、答える声。女性はカップに口をつけ注いだ紅茶で喉を潤す。
「身を焼けばいいんじゃないかしら?」
「連れぬ女よ。サリバンが生者をよこせと言ってきた」
「今サリバンに狙われたら終わりよ…ったく、どこまで偽善者なの。あの堕落した天使は…まあ、良いわ。おとなしく渡しておきなさい…」
「良いのか?…」
意外な答えだと言うような口調になった、その声に女性はカップを右手にロウソクを左手に持ちゆっくりと声のする方に歩く。
「ええ。土地は渡さえあればまた育てれば良いじゃない?私たちの子・を」
「ああ。そうだな。それで、手に入ったのか?あいつの体は」
「いいえ。でも、骨折り損でもないわ。デュークはすでに死んでる…どこにその体を隠したかよ…」
「そうだな。早く見つけなければ奴の血肉で我は完成形態になる…さすればサリバンとて敵ではない」
力強く言う声。やっと女性は声の主の元にまで来た。ろうそくが声の主を明るく照らす。そこにあったのは、全身の水分がなく乾き細くなった男と思われるミイラだった。
「ふふふ。早く見つけて世界を手に入れましょうね…あなた?」
「ああ。そうとも。愛しき妻 リリアンナよ」




