59話 奴隷の職種?
俺が鑑定で分けた奴らに関しては、じぃに任せた。待女は、家事から掃除までかなり融通のきく職種らしく正直使えるらしい。騎士団は、元騎士のやつとランスロットを中心にいろいろなことを決めさせている。
この屋敷のどこかに書庫があるらしくその書庫の近くの部屋を魔法研究者たちの研究所のする予定だ。マリアがその書庫の場所がわかるというので、案内させる。
なぜこうも待女が多いのかランスロットに聞くと、奴隷の多くは城務めで、待女が一番ウェッタや上位の貴族に会うことが多く、そのせいで奴隷に落とされやすいらしい。まあ、仕方ないだろう…
さて、そんなことよりまずは目の前にいるこの亜人たちについて決めなくてはな…えーと…ドワーフたちのジョブは「鍛冶士」か…ここに鍛冶場はないか?…わからないな…後でじぃに聞こう。
『お答えします。鍛冶場はあるみたいです。かつて、使っていたみたいですが兵を失ってから使われている形跡はありませんね。掃除はしっかりされているようです』
そうか。なら、このドワーフたちに関しては鍛冶を頼むか。俺はそっと『黒い吃驚箱』からあの牛アステリオスが使っていたハンマーのかけらをドワーフに渡す。じぃがぶっ壊したハンマーの一部だ。このハンマーは何か魔法がかけられているようで結構な重みがある。
「これは何だ?…こ、これは!?」
「元は巨大なハンマーだったが今じゃ鉄くずだ。これから武具を作ってもらいたい。鍛冶場はある。頼めるか?」
「おい、見ろ。これは『重鉄』だ。」
「錬成はそこまでされてないな…もったいない」
「魔力を通せば重さが変わるんだ、重さは重要だからな…」
「腹減った…」
ドワーフは集まって円になると、渡したハンマーにかけらを眺めながら何かブツブツと話し合っている。俺の言うことは無視か…まあ、いい。次は獣人か…
「わ、私たちをどうするつもりだい!あんたも獣人だからって差別するのか」
「どうもしない。てか、差別なんてするわけないだろ…」
睨むように、大きな声をはりあげる女獣人…猫耳が可愛いが…鼻から口にかけてませ猫だ。なぜ、そこまで猫にする必要があったのだ…神よ!
ってのは、置いておいて…差別とは何だ?…
『説明します。獣人の多くは奴隷とされています。理由は魔獣に似ているためらしいです。』
ふーん…まあ、似てるからなんだって話だよな。ここじゃ変わらないし。
俺は一番最初に声を出した猫耳の獣人に話しかける。目から怯えが伝わってくる。
「ここじゃ何もかも同じだ。差別はないが、優遇もない。俺の元の平等だ。」
「わ、わかったわよ…そ、それと!近い!」
「ああ、すまない」
俺はそっと猫耳から離れる。何をそこまで照れる必要があるんだ?…まあ良い。
全員を鑑定していく。牛の獣人の夫婦は職業が『農家』らしいので作物を育ててもらおう。牛の獣人と言ってもミノタウロスのような完璧な牛ではなく、背が高く、ピンと張った耳があるだけだ。
その他は犬の獣人が三人だ。どうやらギルドに登録しているようで職種が剣士・弓士・魔法士となっていた。ちょうどいいので、こいつらも騎士団に入れておくか。最後は、さっき大声を出した猫耳とその妹らしき猫耳だ。
どちらも職業は針師だった。ほぉ…針師か…
しかし、気づいたのだが妹の方は目が合わない。いや、目が見えないのだろう。妹をまじまじ見る俺が怖いのか、姉が声を出してくる。
「い、妹に何するんだい!目が見えないだけで差別するのか!平等じゃないのか!」
「お姉ちゃん…大丈夫。この人から…風がする。心地のいい風が…」
猫耳妹は目が見えないはずだが、まっすぐに俺にまくってくるとその綺麗な白い手で俺の頬を触れる。ほお、暖かい…
俺はそっと猫耳妹を抱き寄せ、そのまま床に寝かせる。
「あ、あんた!何する気だい!」
「今からこの目を治してやる。そうしないと、仕事もできないしな…平等なんだ。もちろん平等に働いてもらう。」
「で、できるのかい?…」
心配そうな声を出す猫耳姉を横目で見ると大きく頷く。俺はそのまま『黒い吃驚箱』から再びオーガを取り出す。今回は終生の森のオーガではなく、じぃが倒した中級生の森のオーガだ。姉が何やらわめいたが、近くにいた犬の獣人が空気を読んで落ち着かせてた。
「『移植』」
マリアの目を治している経験があるので、それほど手間取ることはなかった。うまくいったので、そのままオーガを仕舞う。すると、ゆっくりと猫耳妹が閉じていた目を開く。猫耳姉の目は『猫の目』なのだが…移植したのがオーガだったため目が普通に人のようになってしまったが仕方ないだろう。猫耳妹は手足を眺め正面にいる俺の顔を見る。
「これが…世界?…初めて見た…これが色なの?…綺麗…」
「はじめまして。俺が君の主人のディルだよ。よろしくね?」
「うん…はじめまして?…」
すると、横からものすごい衝撃が襲い体が吹き飛ばされる。俺はそのまま床を三回ほど回転すると壁にぶつかりその勢いが止まった。
「よがった…よがった…痛い痛い痛い…」
よく見ると猫耳姉の体には多くの刺青が浮かび上がってきた。あれか…俺に手を出したからか…まあ、自業自得だな…
それを見て猫耳妹は吹き出し、それにつられてみんなが笑い始めた。
よかったよかった。さて、次は?…視線を上げあたりを見渡すと、目があった…驚くほど大きな目に鋭い眉の少女…その体は首と違い真反対を向いている。こわっ!
「お前、体が後ろ向いてるぞ?…」
「ふふふ。驚いた?驚いた?」
「わかったわかった。お前は、フクロウだろ?」
「ふふふ。正解!正解!」
「はぁ…」
なんだか、この子苦手だなとディルは思う。体はふかふかで膝まであるロングダッフルコートを着ている少女。靴は履いておらず、鋭く尖った爪がそのままだ。鑑定を使うと職業は衛兵となっていた。こんなガキが衛兵?…そして驚いたことに職種の欄にもう一つ括弧になっている職種があった
『説明します。梟族は目が特殊な構造をしているので他の鳥人より夜に適応力があるので、よく深夜の警備などで外に待っているものも多いです。それと、跳ぶ際に音がなく、かなりの速度で対象を襲うので職業に暗殺者がいいです』
そうか…だから、こいつは天職が(暗殺者)なのか…まあ、まだ未熟みたいだが。これから育ててみるか…面白そうだ。次なんだが…
「次は俺か?…俺は、ベルド=ヒュドラだ。そんで、こっちが俺の嫁さんの…」
「セント=ギーヴルです。」
自己紹介してきたのはあの蛇なのか蜥蜴なのか困っていた夫婦だ。いやー…名前的にお二人ともドラゴンですよね…
ヒュドラって猛毒でしょ?…ギーヴルも猛毒の龍じゃん…
「二人ともドラゴンなのか?…」
「いや、俺たちはドラゴンの血はあるが、純粋なドラゴンじゃない。龍種だ。」
「そうか…」
二人を鑑定してみると職種は『薬師』らしい。まあ、なんて見た目がいかつい薬師なのでしょうか。どう見ても毒薬にしか見えないだろ…ま、まあいい…
「そうか…では、部屋を与えるから薬師として頑張ってくれ…そ、それじゃあな」
そうそうに切り上げて他に向かう。正直怖すぎて話なんてできない…特に見た目だ。尖った牙に爪、鋭い眼光はさらに恐ろしさを増す。しかし、話し方的に悪そうな感じはなかったからこれでいいだろう…
そして、最後に残した女エルフだ。エルフ…多くのエルフはあの大事件で死んだ…こいつはその生き残りなのだろう…
俺は鑑定をしようとすると、エルフは俺の目を手で覆い隠してきた。
「どうかしたか?」
「鑑定は嫌い。魔力が汚いもの…さあ、見せてあげるから私の頭に手を乗せなさい」
そう言うと手を離したエルフ。俺は言われた通りエルフの頭に手を乗せる。
「『ステータス』」
エルフがそう言うと、ステータス画面が頭に浮かんできた。これはデュークがやってたやつ同じか…
名前もステータスもあまり変わったところはないな…
「一つ聞きたい。ラスティ=ネイルを知っているか?…」
「ら、ラスティお嬢様を知っているのですか!?」
「ああ…どうなんだ?…」
「私は…ネイル家のメイドをしておりました。ラスティ様は生まれた時から知っております。まさか…あんな事になるなんて…」
その場でうずくまって泣きだしてしまったエルフ。メイドか…ならじぃに任せよう。俺はそっと肩を叩く。泣きたいなら、とことん泣かせよう。涙ってのは時には出したほうがいい。




