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52話 騎士奴隷とおばあちゃん?

スタスタとランドルフが前を歩くので、俺もその後についていく。すでにオーガの死体は『黒い吃驚箱』に戻してある。ベテルギウスにマリアと、気絶している女たちのことを頼んだ。

しばらく歩いていると、一つの檻の前でランドルフが立ち止まったので俺は檻の中を覗く。すると、シャツとパンツ一枚といった格好で恨めしそうにこちらを睨んでいる男たちがいた。


「こいつらか…」


「ええ、これで全員でさぁ。さっきの爺さんに頼んで止血はしておきやした」


7名の男たちは腕と足を切られているので、地面に転がっている。どの面も城で見た事がない…それにランドルフが先ほど言っていた特殊兵とはこいつらか?…まあ、今度帰ったら城を調べるか…何かありそうだ。

俺は檻の中に入ると近くにいた男を見下ろしながら問う


「お前はウェッタの騎士か?」


「…」


男は何も言わず俺を睨みつけるだけだ。少しムッとなった俺は切ってある腕を握力強化した拳で握る。指が傷口の肉をえぐりタダでさえ血の量が多かったのに、さらに俺の手を赤く染める。男は痛みに耐えられず悲鳴を出す。


「言え…」


「…っ。わかった…いう。」


案外簡単に口をあるようだ。もう少しかかると思って色々考えていたのだが…まあ、いいか。


「俺たちはウェッタの騎士じゃなく兵士だ…まあ、今は上からの雑用係だけどな。まあ、あの国の愛国心と自分の命って言ったら真っ先に命だからな…」


ふむ…兵士か…そんな話聞いたことがないな…俺が知っているのかウオッカと騎士だけなんだが…


「ウオッカや騎士とは違うのか?」


「別物だ。ウオッカや騎士は選ばれた奴らさ。あいつらは、俺たちの存在すら知らずに生きてるんだろう。それにあいつらは城に入るが、俺たちは各地に住んでいる。周りの国が少しでも戦争を仕掛けようとすれば報告しろってな…」


「そうか…知らなかったな…」


「まあ、腕も足も切り落とされちまえばあとは死ぬだけさ。あーあ、なんでウェッタのゴミ屋敷で死ぬことになるんだよ…まあ、俺達らしいか」


男がそう言うと、周りにいた兵士も笑い出す。何とも危機感のないやつらだ…


「ゴミ屋敷?」


「ああ。上の奴らはそう言ってたから俺もそう呼んでる。ここは国王ウェッタにとって害でしかないものを捨てるんだよ。犯罪者から商人、貴族までもここに捨てられる。まあ、殺されるやつのほうが多いけどな。表面見繕っても、裏がこれじゃあ、いつかは滅ぶさ。」


そう言うと、他の兵士たちも笑い始める。なんて明るい奴らなんだろ…バカみたいだけど。

俺はそっと兵士全員に奴隷契約をする。初めて人を奴隷にしたがなんの罪悪感がないな…すると、男たちから戸惑いの声が出る。


「おい!俺はスラム出身だが、奴隷になるつもりはないぞ!てか、手足のない俺らをどうするつもりだってんだ?」


俺は何も言わず先ほど切り落とした腕を『黒い吃驚箱』から取り出すと、適当に白魔法『縫合』でくっつける。

正直どれが誰の腕かわからないし、腕があれば十分だろう。男たちは腕がついたことに驚きながらも、自分の腕ではないので怒ってきたが「また切らないとな?」と言ったら黙り込んだ。


「よし。今日からお前たちは俺の所持する騎士団だ。わかったな?」


数分沈黙が流れた。理解できていなかったのか固まっていたが、すぐに全員腹を抱えて笑い始めた。誰も反論はしてこない。笑っっていることは癪にさわるが…まあ、これでいいだろう。

それに奴隷は主人の命令は絶対だし裏切ることはできないしな。

足はなるべく本人たちの足をくっつけた。案外自分の足を探すって大変らしい。

最後の一人をくっつけ終わると、腹を割って話してくれた男が俺に話しかけてくる。


「そうかい。んじゃ、主人。俺らの騎士団の名前はなんだ?」


「そうだな…『吸血の騎士団』かな。」


「なんだそれ!はははは!よし、吸血の騎士団の旗揚げだ!」


「「「「おおお!!!」」」


まるで子供が友人同士でふざけあっているようにしか思えない…が、まあ、これはこれでいいか。

ランドルフも横で笑っている。まあ、これでいいだろう…

すると、声をかけられた。振り返ると、ベテルギウスと治療をしていた女だ。かなり距離があるが声をかけてきたということは何かあったのだろう。


「あの…お母様が目を覚まされましたよ…」


「そうか!今行く」



俺はすぐに檻から飛び出し、マリアの元に向かう。俺の後にランドルフ、その後に吸血の騎士団が続く。

ものすごい速さで走り抜け、マリアのいる檻に入ると、ベテルギウスがマリアと話をしていた。俺はそのまま感情のままに、マリアに抱きつく。ぎゅっと抱きしめる。暖かい…俺がこの世界で初めて知った暖かさがある…


「この子は?…」


「おや、忘れておるのか?…息子だと名乗っているのじゃが?」


「む…息子…?」


マリアはそっと俺を見る。俺もそっとマリアの目を見る。綺麗な赤髪はくすんでしまっていて、やつれているが…確かにマリアだ。マリアは俺を見るとどんどん瞳が大きくなっていく。震える声で口を開く。


「ディ…ルなの…?」


「そうだよ…お母さん…」


俺は再びマリアを抱きしめる。なぜか肩に暖かい液体で濡れる感覚があるが、気にしない。その暖かさまで心地がいい。マリアは腕がないがそっと抱きしめてくれる。優しく…


「ディル…そう…よかった…よかった…」


「うん…お母さん…待たせてごめんね…」


それから数刻マリアを抱きしめていると、理性が働き始めマリアを離す。


「母さん。屋敷に帰ろう?お父さんと過ごしたあの屋敷に…じぃも居るし!」


「そうね…でも…この足じゃどこへも行けないわ…それに私は奴隷になってしまったし…」


「大丈夫。母さんの主人は俺だし、すぐに解放する!足ね!わかった!待ってて!」


俺は猛スピードで、奴隷商から飛び出すと周りの目を気にせず、飛立つ。数人の貴族にバレたようだがそんなことは気にしていない。限界まで速度を出し先ほど持ち主になった墓場に戻った。さすがに人を殺してくっつけるのは俺がよくてもマリアが嫌だろうと思ったからだ。なるべく綺麗な手足で…腐敗してないやつを…

すると、頭の中でロットの声が響く。


『それなら、あの石碑の下に眠る女性がいいかと思います。』


ロットが一際大きな石碑を指示する。作られたばかりなのかまだ新しい。俺はロットの言葉を信じ石碑に近づくとそこに描いてある文字に驚いた。


『クラリス=アヴィオール ここで眠る』


名前的に女ってことはわかるが…アヴィオールって同じ名字。まさか、ローズの母さんか?…ウェッタの奥さん…


『はい。その通りです。クラリス=アヴィオールはこの間、策略によって暗殺され秘密裏に土葬されました。まあ、知っているのはアクィラのみで国王は知らないようですが』


国王は知らない?…よくわからんな…アクィラか…国王を洗う前にアクィラを洗った方が早そうだな…それに、この事も関係があるのかもしれないな…

ロットが紹介するってことはダメな部分はないだろう。俺は所有者権限で石碑を叩き切りその下にある棺桶を引っ張り出す。大きく、歪な形だがしっかりしている…金属か?…

ゆっくりと『剣術』スキルで綺麗に上だけを切り落とすとそこには、綺麗な顔で眠るローズにそっくりな女性が横になっていた。ローズは今年で24だったから、最低でも44歳か…それにしては綺麗じゃないか?きちんと筋肉もあるようだし…


「初めまして…おばあちゃん…それと、腕と足借りますね」


俺は南無と唱えてから、腕と足を切り落とし火魔剣士になり死体を火葬し元に戻す。腕がない状態で土葬は可哀想すぎる。残った灰を棺桶に仕舞い綺麗にもとどおりにする。

そして、翅で飛び上がり、再び奴隷商のところに戻る。焦る気持ちを抑えながら、路地裏で着地し奴隷商に入りマリアのいる檻に向かう。すると、ランドルフやベテルギウスなどが仲良く話をしている。


「ディル。どこに行っていたの?」


「少し…では、母さん。目を閉じてください…少し痛むかもしれませんが…」


マリアは優しい笑顔を浮かべながら大きく頷く。俺がいたずらでもしようとしているのかと思っているのだろう。俺はすぐに『黒い吃驚箱』から腕と足を取り出すと白魔法『縫合』でくっつける。痛みがあるのか、少し顔を引きつらせたがうまくくっついたようだ。つなげた縫い目もない。


「目を開けてみて」


マリアはそっと目を開くと、さっきまでなかった両手両足があることに驚いている。何度も触ったり動かしている。

そして、疑問を俺にぶつけてくる


「これは…どうしたの?…」


「勝手なことをしてゴメンなさい…全部もらってきました。でも、必要ないそうで…」


「そう…よくわからないけど…ありがとう。ディル。」

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