28話 合格と兄者
ソフラン先輩と二人で、結果が貼り出されるという掲示板に向かう。受験者数が今回は例年より多いらしいが、問題は特にないそうだ。一番手間がかかるのは実技試験の模擬戦闘のみで、筆記試験はあの黒板の前に座っていた老人が全ての答案を一瞬で採点するそうだ。
その老人は何者かとソフランに聞くが、「よく分からないし、謎の多い変人。でも、すごい人」と、説明しずらい人らしくよくわからなかった。
しばらくソフランと無駄話をしていると、目的地に着いたようで大きな掲示板に紙が貼り出されており、その紙を祈るように眺める子供達。名前があったのか、奇声をあげている少年や、名前がなかったのか涙を拭う女の子など様々だ。俺の隣のソフランは緊張した面持ちで俺を見てくる。
「ディル君はどうだろうね…」
「大丈夫ですよ。例え名前がなくても、気にしませんし。」
「私はものすごく緊張した覚えがあるのだけど…よく平気な顔で居られるものね…」
「ははは。失うものがありませんからね。さて、見てきますね」
「そう…行ってらっしゃい。」
綺麗な笑みでソフランが俺を見送ってくる。やはり女性の笑顔いいものだな〜っても、女性と言っても日本でいう中学生くらいなんだが…。気分良く、掲示板の前の人の波をかき分け俺も掲示板を見る。
「24…25…あ、あった。」
自分に受験番号が書かれているということは、どうやら受かったようだ。まあ、それほど心配はしていなかったが、実際受かると嬉しいものだな。
俺は気分のままソフランの元に駆けて戻る。ソフランは緊張した顔をしていたが、俺に気づくと再び笑顔を返してくれる。
「どうだったの?」
「受かりましたよ!やはり、嬉しいものですね!」
「そっか!おめでとう。でも、これで終わりじゃないのよ?しっかり勉強しないと」
「はい。わからなかったら、特待生のソフラン先輩がいますしね?」
「うぅ…後輩の信頼が重いわ…」
「冗談です!でも、一生懸命頑張ります」
「うん。それじゃあ、合格者は掲示板に書かれていた部屋に移動するけど…見てきた?」
「わ、忘れました!もう一回見てきます!」
気分が高まっていたせいで、気づかなかった。俺は再び人波を乗り越えて掲示板を見る。えーと…1-Aか。人混みからソフランの元に戻ろうとすると、見知った顔があった。カフだ。めちゃくちゃ会いにくいので…まあ、逃げたしな…
カフにばれないようこっそり遠回りしようとしたが、カフが俺に気づき、手を振って近づいてくる。あっちゃー…カフはものすごく申し訳ないような表情を作り頭を下げてくる。
「ディル。さっきはその…すまなかった…姫さまが…」
「ああ…まあ、気にしないでくれ…それでカフは受かったのか?」
俺のこのセリフを待っていました!と言わんばかりに笑顔で胸を叩いている。
「ああ!1-Aだ。まあ、当然だなディルの方こそどうだったんだ?」
「そうか、おめでとう。俺も受かったよ。そういえば三人は?シーミアとカニスとパーシアーヌスうだったか?」
「ああ、合ってるよ。まあ、優秀だが今回は試験の難易度がかなり上がっていたからな…特に「薬草学」が。まあ、クラスはBだろう」
「薬草学」かー…俺もアナウンスに教えてもらわなきゃ、やばかったな…てか、勉強したことないし…
まあ、受かっちまえばこっちのものだろう。そういえば、Aってなんの事だ?…わからん。後でソフランに聞こう。
俺はそっけない挨拶をし、カフと別れソフランの元に向かう
「そうか。学園でもよろしくな。」
「あ、ああ!…」
カフは何か俺に言おうとしていたみたいだが、気づかないふりをする。多分「火魔剣」の事だろう…でも、そんなに珍しいのか?…。今回はアナウンスが教えてはくれなかった。脳内アナウンスは謎だ…まあ、いいか。
俺はカフと話しているせいで遅れた時間を、取り返そうと走ってソフランの元に向かう。ソフランは穏やかな表情で待っていて、俺が走ってきたことに驚いているようだ。
「どうしたの?そんなに急いで…」
「い、いえ、知人と話をしてしまい遅れてしまったので…」
「それくらいで私は怒らないですよ。それで何組だったんですか?」
「「1-A」です。すいません、このAとは、なんですか?…」
「おお!さすがだね!Aか〜抜かされちゃうかもね。この学園は成績順にクラスを分けてね、成績がいい順でA~Cに振り分けられるの。Aのクラスで、冒険者科だと冒険者ギルドのランクが上がれば、それにあった飛び級もできるよ。技術科だと、品質鑑定士が認めて商業ギルドのランクが上がれば飛び級できるよ」
「飛び級…ですか」
「ははは!まあ、飛び級なんて無理だよ。ここ10年そんな生徒いないからね。さあ、そろそろ教室に行こう。担当教員とか時間割とか寮の部屋割りとか忙しいはずだから」
「そ、そうなんですか…」
ソフランがそっと手を差し出してくるので、手をつないで歩いていく。手汗は大丈夫だろうか…臭わないか心配だ…昔が高校生だったからか、これくらいでも可愛いなと思える。…少しソフランの顔が赤ったのは気のせいだろう。
手をつないで校舎に入っていく。筆記試験の時も校舎に入ったのだが、あの時は急いでいたので周りが見えていなかった。今、校舎内を見渡すとはっきり言ってボロい。汚いわけじゃないし、綺麗にはなっているのだが色が変わっていたり、床の大理石が少し削れていたりしている。あたりを見渡しているせいで、歩く速度がゆっくりだと思うのだがソフランは俺の速度に合わせてくれているようで、その心遣いが嬉しくさせる。
「どうかしましたか?そんな笑顔で」
「え?笑顔でしたか?…」
「ふふふ。新しい学び舎ですから、新鮮に映るのでしょう。」
どうやらスキル「無表情」が効いていなかったようだな…まあ、正直ウキウキしている。もし俺が転生者ではなく、ただの赤ん坊として生まれ入学していたらこんなウキウキしなかったんじゃないか?まあ、そんなことを考えても意味ないか…。
階段を三回上がり、右に4回曲がり左に7回曲がった廊下。ゆっくりと歩いていると前方から、メガネをかけた長身の男がやってくる。あれは…確か俺の模擬試験の時の…男はソフランを見ると、すぐに笑顔で話しかけてきた。
「ソフランちゃん。今年も特待生おめでとう。俺も少し分けてもらいたぜ」
「ありがとうございます。って何言っているんですか、シェダル様も風紀委員に選ばれているじゃないですか。おめでとうございます」
「ありがとう。しかし、ソフランちゃん。いい加減「様」付けるのはやめてくれ。しかし、今年の風紀員は落ちたものだ。君が特待生ではなく風紀員に入れば安泰なのだが…」
「すみません…」
「深い意味はなかったが…俺も配慮が足りなかった、すまない…。ん?君は…」
長身の男が俺の存在にようやく気付いたようで、身をかがめて話しかけてくる。ソフランと話すときの目とは違い相手の心を読もうとする目だ。俺はじっと男の目を見る。ソフランとの会話から、どうやら学年はソフランと同じか上。そして、また分からない単語が出たな…「風紀員」…
「君は確か…剣術の模擬試験の最後の生徒だったか。あれには驚いたよ、模擬試験でAを出し、あいつを倒すなんてな。」
「A評価だったのですか?…すごいですね!ディル君!」
「あ、ありがとう…ございます…」
「入学したなら確か、一番下の末っ子も確か入学してきたし仲良くやってくれ。お、自己紹介が遅れたな…
俺は シェダル=B=カシオペアだ。」




