5. 最後の手紙について
どうやらこれで最後らしい。
今回の手紙には、これまでのように自分の人生を振り返るような内容ではなく、これからの事と、頼み事、そして頼み事の報酬のようなものか入っていた。
正体は最後まで隠したままではあったが、やっと相手の目的が分かってたので正直ホッとしている。
どうやら元々、死期を悟ったうえで手紙を送り始めたのだろう。そしてそれが思ったよりも早く近づいてきたため、送るのに手間取ったり、後半が駆け足気味になったようだ。
正体を隠し、呪法や『はごろも』の核心も伏せ、団体も明かさなかった理由も、今となれば腑に落ちる。
それらのうちひとつでも語れば、双子の巫女の件のように、こちら側には制限と報告義務が生じるからだろう。
好奇心を刺激しつつ報告するほどでもないという、絶妙な匙加減の走り出しだったとも言える。
上手いこと手の平で転がされたようで癪ではあるが。
さて、最後の手紙を参照すれば分かるように、ここからは考察など必要ない。
あの手紙の主は、世話をかけた師への最後の挨拶と、その使いっ走りにも餞別をくれたというわけだ。
双子の巫女たちのところへも、他の人間に頼むか勝手に投函すれば良いとも思ったが、そうもいかない事情があるらしい。
双子の巫女たちと手紙の主の間に縁を作らないためには、もうワンクッション挟む必要かがあり、近所にうってつけの人間がいたというわけである。
実際の話、いかに双子の巫女たちの警戒心が強かろうと、こちらの所在を明かせば手紙ぐらいは受け取るだろう。
本来であれば接近を禁じられるはずの木端役人が、いつかの生徒の手紙を渡しに訪ねて来るのだ。普通の事態でないことぐらいは分かる。
双子の姉妹たちに渡すよう頼まれた封筒は、今までのような無造作な輪ゴム留めとは違い、きちんと封もしてある。
軽く揺らしてみた感じでは、中には小さな板のようなものが入っているような感触がある。厚みからして手紙も入っているようだ。
本来は関わるべきではない集団の長から頼まれたものであるから、厄介なことになる前に渡しておこうと思う。
それともうひとつ。
こちらは自分に宛てたものらしい封筒だ。
これもまた封がしてあり、中には板のようなものが入っているらしい。
中身を開けると手紙が入っており、もうひとつ、密封された紙袋のようなものがあったので、まずは手紙を読んだ。
そして残念なことに、この手紙の内容は証拠に残すわけにはいかないものであったので、すぐさま処分した。
同封されていた板についても、たとえメモ書きであっても言及することはない。
ただ、こうしてメモを残しておく事で、この餞別としてもらったものがどういった経緯で手に入ったのかを記録しておく必要がある。
そのため随分と思わせぶりにはなってしまったが、残念ながら書ける事はもう何も残っていない。
近いうちに、不本意ながら双子の巫女たちのところへ行き、それでこの件はクローズしたものとする。




