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3-3話:ステラ島

 翌日。天頂へと昇りつめた太陽が、レオたちを祝福するかのように強烈な陽ざしを叩きつけていた。鏡のように滑らかな海面を切り裂き、聖王国の船が辿り着いたのは、通称『エメラルド・リゾート』――ステラ島である。

 港に降り立つやいなや、聖王国騎士団たちは規律正しく物資調達へと赴き、現地の担当者と打ち合わせを開始した。それを横目に、ライラに率いられたレオたちは、島でも随一の美しさを誇るリゾートビーチへと足を運ぶ。

 そこは、言葉を失うほどに美しかった。 海は透き通ったライトブルーから深い紺青へとグラデーションを描き、水面は陽光を反射して数百万のダイヤモンドを散りばめたように輝いている。何より特徴的なのは、足元に広がる純白の砂浜だ。砂の一粒一粒が、珍しい星の形をしている。それがこの場所が『スタービーチ』と呼ばれる所以だった。


「……すごい。海って、本当にあったんだ」


 生まれて初めて見る本物の海に、レオは少年のように目を輝かせて感激していた。

 レオ、ジーク、カイトの男性陣は一足先に水着に着替え、ビーチへと繰り出していた。 ジークは、パラソルが深く刺さったビーチチェアにどっしりと腰を下ろしている。鍛え上げられた鋼のような肉体、漆黒のサングラス、そして不敵な面構え。はたから見れば、誰も近寄りたがらない「海の支配者」か「闇の組織の幹部」にしか見えない威圧感だ。対するカイトは、ビーチに着くやいなや出店へ走り、既に両手に山盛りの食べ物を抱えて、幸せそうに頬張っていた。

 レオが波打ち際で呆然としていると、背後から涼やかな声が響いた。


「おまたせっ!」


 振り返った瞬間、レオの思考は真っ白に染まった。 そこには、陽光を浴びて輝く、五人の女神たちが立っていたのだ。

 先頭を切るライラは、彼女の活発なイメージにぴったりな水色のビキニを纏っていた。胸元には可愛らしいフリルがあしらわれ、アップにまとめた髪型と相まって、普段の威厳ある聖女とは違う、年相応の少女らしい愛らしさを振りまいている。

 その隣で、落ち着いた大人の色香を放つのはセレスだ。エメラルドグリーンのワンピース水着に、白いTシャツの裾を腰高で結んだスタイル。大きめの麦わら帽子の影から覗く微笑みは、包容力に満ちている。


「……っ!?」


 レオの目が釘付けになったのは、エレナだった。彼女が選んだのは、もはや犯罪的と言えるほど布面積の少ない紫色のモノキニだ。腰回りが大胆にカットされ、陶器のような白い肌と、動くたびに波打つ暴力的なまでの曲線美が露わになっている。それは「エロい」という言葉すら生ぬるい、男の理性を根こそぎ奪い去るような破壊力を持っていた。

 そして、恥じらいながら前に出たのは、アリーシャとミレイユだ。


「「ど、どう……でしょう?」」


 アリーシャは、彼女の清廉さを象徴するような純白のビキニに身を包んでいた。聖騎士として鍛え上げられた健康美溢れる肉体は、無駄な脂肪が一切なく、しなやかなラインを描いている。 一方、ミレイユは対抗するように漆黒のビキニを選んでいた。眩しいほど白い肌に、溢れんばかりの豊満な胸元。腰から太ももにかけてのラインは、見る者の目を捉えて離さない妖艶な魅力を放っている。


「マスター? 変じゃない、ですか?」

「レオさん、……あんまり見られると、恥ずかしいです」


 上目遣いに覗き込む二人。レオの顔は一瞬で茹でダコのようになり、視線は右往左往して泳ぎっぱなしだ。


「う、うん……! すごく綺麗だよ、二人とも……!」


  精一杯の賛辞を送るレオ。美女たちとの至福の時間は、激戦を控えた彼らにとって最高の清涼剤となった。


「いいわね、みんな! 砂浜に来たらこれよ!」


 ライラがどこからか取り出した魔法仕掛けのビーチボールが、青空に高く舞い上がる。女性陣による、文字通りの「華やかな戦い」が始まった。


「いくわよ、ミレイユ!」


  ライラが放ったサーブを、ミレイユが豊かな胸を大きく揺らしながらレシーブする。


「きゃっ! ちょっとライラ様、本気すぎます!」

「ふふ、遊びでも手は抜きませんよ!」


 ジャンプするたびに、水滴を弾く彼女たちの瑞々しい肌が陽光に晒される。エレナがボールを追いかけて砂浜を駆ければ、その過激なモノキニの隙間から覗く曲線美に、周囲の男性たちの視線が釘付けになる。


「あ、マスター! ボールが行きます!」


 アリーシャがしなやかな跳躍でボールを打ち返すが、勢い余ってレオの至近距離に。


「わわっ!」


  レオが慌ててボールを受け止めようとした瞬間、足元の星の砂に滑り、レオの顔はそのままアリーシャの柔らかい肩口へと飛び込んでしまった。


「あ……」


  鼻先をくすぐる潮風と、アリーシャの甘い香り。密着した彼女の肌の熱さに、レオの心臓は破裂しそうなほど脈打った。

 昼下がり。美女たちの眩しさに刺激が強すぎて、ビーチチェアで横になっていたレオを、ジークとカイトが誘い出した。


「なあレオ。男性陣でちょっと『釣り対決』しない?」とカイト。

「僕、釣りはしたことないですが……やってみたいです!」

「ノリいいじゃねぇか。よし、決まりだ」


 ジークがニヤリと笑い、近くのレンタル屋で3人分の釣具を借りてきた。もちろん、ジークが内緒で「ライラ名義」のツケにしておいたのは言うまでもない。

 3人は少し離れた岩場へと移動した。ジークは持参した酒を煽りながら、慣れた手つきで竿を出す。潮騒の音だけが響く中、しばらくの沈黙が流れた。


「レオ。お前はどうして冒険者になったんだ?」


 ジークの唐突な問い。Sランク冒険者であるジークたちの信頼に応えたいと感じたレオは、自らの出自――辺境伯の息子であったこと、そして故郷を追われた経緯を静かに語り出した。


「なるほどな……。辺境伯のお坊ちゃんだったか。それにしても、その歳でよく肝が据わってやがる」とジーク。


「レオぉ〜……そんな悲しいことがあったなんて……。よし、今日は僕がいっぱい釣ってレオを元気づけてあげるよ!」


 カイトが涙目でレオの肩を叩く。その瞬間、レオの竿が大きくしなった。


「お! きた!」

「そうだ! そこでグッと竿を引いて『合わせ』ろ!」


 ジークの熱い指導、そしてカイトの必死の応援。続いて二人にも大きな当たりが来る。


「お! 俺らにも来たか!」


 格闘すること数十分。3人が引き上げたのは、なんと1メートルを超える巨大な大物だった。 日がオレンジ色に染まり始めた頃、3人は自然と顔を見合わせた。 「俺たちは、もうただの旅の仲間じゃねぇ。背中を預け合う『ダチ』だ」 ジークの言葉に、レオとカイトが頷く。3人は友情を確かめるように、自分たちの拳を「トン」と突き合わせた。レオは、この静かな時間の中に、これまでの人生で感じたことのない強い繋がりを実感していた。


「今日はここで夕食にしましょう! 砂浜でバーベキューよ!」


 ライラの号令を受け、セバスと侍女たちがテキパキとコンロを設置していく。そこへ、巨大な魚を担いだ野郎3人衆が誇らしげに戻ってきた。


「せっかくだ、これも焼こうぜ!」とジークが笑う。 セバスは「おお! これは立派な大物ですな!」と感激し、侍女たちも「絶対美味しいですよ!」とはしゃぎながら魚を捌き始めた。

 だが、宴の本番はこれからだった。


「あ! そういえば!」


  レオが思い出し、『ディメンション・ドロウ』から以前倒したワイバーンの肉を取り出した。


「おおお! ワイバーンの肉か!!」


  あのジークが子供のように目を輝かせ、カイトはよだれを垂らしている。


「まさかこんなリゾート地で、ワイバーンを食えるとはな! 腕が鳴るぜ!」


 炭火の熱気と、肉が焼ける芳醇な香りが砂浜に充満する。 焼き上がった瞬間、平和だったビーチは「肉の争奪戦」という名の戦場へと変わった。


「あーっ! ジーク!今それ俺が狙ってた一番いいとこ!」

「早いもん勝ちだ、カイト!」

「ちょっとジーク! 私の分まで取らないでよ!」とライラが叫ぶ。

 

 そんな喧騒の中、レオの周りでも火花が散っていた。


「あ、あの……アリーシャ、あそこのお肉、取ってあげようか?」


  ミレイユが肉のたっぷり乗った皿を手に、猫なで声で提案する。


「ミレイユさん、自分の分は自分で確保します! それよりマスター、こちらの焼き魚をどうぞ!」


  アリーシャはぴしゃりと撥ね除けると、焼きたての魚をレオの口元へ差し出した。


「レオさん、こっちのワイバーンのお肉も美味しいわよ?」


  ライラまで参戦し、レオの皿は瞬く間に山盛りになっていく。

 仕事帰りの騎士団たちも合流し、宴は最高潮に達した。 星の砂の上、波音をBGMに、笑い声が絶えることはなかった。

 この先に待ち受ける、プロット大陸での激しい戦い。 それを前にした、あまりにも温かく、賑やかな一夜。 レオは仲間の笑顔を見つめながら、この平和を守り抜くことを心に誓い、夜の風の中に心地よい眠気を感じていた。


読んでいただきありがとうございます。評価、ブックマーク、リアクション等を付けて頂けると非常に励みになりますのでよろしくお願いします!次話も読んでいただけると嬉しいです!

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