4-6.美緒出番
ワリキュールの館。
鳥獣オウムが騒ぎ出した。館に残っているのはカリナだけだ。オウムが鳴き声ではなく、何かをしゃべっているような気がするが、カリナには理解出来なかった。
夕方、牧場から戻った美緒にそれを伝えると
「リサもイビルも雅則くんたちと異世界に居っているから・・」
と美緒もどうしようもなく思った。すると
「もしもし、聞こえたら返事をしてくれ」
オウムから聞いたことのある声が聞こえた。
「だれ?」
「その声は美緒か?ダマリンだ」
「ダマリン?お久しぶり。元気?」
「俺はいつでも元気だ。挨拶をしている暇はない。ハーロックはまだ戻らないのか」
「そうなの。あと何日かは戻らないと思うわ」
「エランデルの温泉が襲われているらしい。襲っているのはケルトン族という人族だ」
「人族が温泉を?」
「俺も詳しいことはわからない。リンスからの連絡だ。温泉も人族の施設。魔族がのこのこと助けにいけない」
まあ、そういう気はないだろうと美緒も思った。
「連絡ありがとう。助けに行きたいけど、ハーロックも悠介さんもリサもイビルもジルも異世界に出かけているから。それにコーネリアを預かっているのよ」
雅則たちはポーションが作れる薬草を採りに異世界に出かけていた。
すると鳥獣クックが騒ぎ出した。そしてヒュンケルが転移してきた。
「ヒュンケル、来てくれたの?」
「クックの胸騒ぎを感じたからな」
美緒はヒュンケルに事情を話して
「コーネリアを預かってくれない?」
と頼んだ。
「俺は喜んで引き受けるが・・」
コーネリアがどんな思いをするか、ヒュンケルも気遣った。
コーネリアもヒュンケルには親しみを覚えていて
「ヒュンケルさんのところに行っていてもいいです」
と言った。
「そうか。そうしてくれると嬉しい。私とシズでコーネリアの面倒をみよう」
ヒュンケルも嬉しそうに言った。
「じゃあ、お願い。数日中には雅則くんたちも戻ってくるはずだから」
美緒は後のことをソリアに頼んで宮殿に行き、ハンスに頼んだ。
「エランデルが大変なの。ハーロックは出かけちゃっているから、私をエランデルまで飛行船で送ってほしいの」
「しかし・・それに夜(飛行船を)飛ばすことになるから・・」
「一刻も急ぎたいの。エランデルを救いたいのよ。駄目ならいい。協力してくれないなら、ハーロックが戻ってきたら報告するから。あとは知らないわよ」
美緒はハンスを脅すように言った。
機場長のボイドが
「そのための王宮専用飛行船でしょう?」
と協力してくれ、美緒は夜のうちに飛行船でエランデル国に向かった。
◇
飛行船は朝になってエランデル上空に着いた。空港に降りると飛行船を確認したランスロットとリリアが美緒を出迎えてくれた。
「ケルトン族騒動に美緒さんが来てくれたのか」
「事情は知っているようね」
「街を巡回していたらギルド協会が騒然となっていて、温泉がケルトン族とかに襲われたと知って、ランスロットに話したら動こうとしないのよ。他所の領から流れてきた一族に温泉を襲われて黙っているの? とハッパをあっけてやったの」
リリアが頼もしいことを言ってくれた。
「雅則くん、いえハーロックたちは異世界に行っているのよ。だから私が・・」
「何それ」
「知らない?」
雅則たちが異世界のマリアント国に行くことをリリアたちには言っていないようだった。
「で、ケルトン族って、どんなやつら?」
「さあ・・聞いたことがない」
「ちょっと。・・大丈夫?」
イミールとナナもやってきた。
「魔法戦士隊もそろいました」
「よし、温泉に出発だ」
最初渋っていたランスロットが号令をかけていた。
「温泉に入りに行くんじゃないからね」
城の外でリンスが待っていた。
「リンス」
「温泉で、リンメイと魔王ヤマトシゲルがケルトン族を相手にしています。それと多くのハンターも行っています」
「そう。わかった。リンス、いつもありがとう。頼りになるわ」
「ダマリン様から聞いて待っていました」
美緒とリンスは衛兵隊と温泉に向った。
温泉に近づくとハンターたちとケルトン族らしき者たちが魔法攻撃で戦っていた。
「魔法戦士隊、攻撃開始!」
イミールの指揮でケルトン族に攻撃を開始した。
◇
ケルトン族が退散していくと、オーナーのニドルも驚いていた。
「衛兵隊まで来てくれるとは・・」
「領を守るのは我々の役目ですから」
ランスロットがニドルに言うと
「美味しいところを持っていくわね」
と美緒がリリアに言った。
「そういうところは抜け目ないから」
美緒はシゲルも居るのを確認して
「ご苦労さん。魔王も役に立っているわね」
とねぎらった。
「なんとか役に立てている。最初、美緒さんに出会えたことを感謝している」
◇
リンメイは美緒が現われたのに驚き、とまどった。合わせる顔がないと思っている。
そしてシゲルが最初に会った美緒とは、やはり雅則と一緒に居る美緒であることを確信した。
「ここに居たんだ。雅則くんも心配していたけど」
美緒にそう言われて、リンメイは気まずい顔をして
「館を出て来たのは申し訳なかったと思います」
と言った。すると
「いいのよ。リンメイの心の傷は私にもわかるから」
と美緒が言ってくれた。
「美緒さん・・」
「元気で居ればいいわ。安心した」
美緒にそう言われてリンメイは
「エルフを助けられませんか?」
と言った。そして美緒をエルフのクルスが横たわっている部屋に案内した。
美緒は
「私も治癒魔法は使えないから。・・でも何でも使えるはずよね」
美緒は魔力検査であらゆる色の魔法が使えると言われたのを思い出した。クルスを助けたいと思った美緒は
「使い方を知らないだけなのかも」
美緒はクルスに手をかざし、癒えるように念じた。するとクルスの体が光はじめ。それが消えるとクルスの体の傷が癒えていった。
「よかった」
リンメイも美緒も安心した顔をした。
「自分でもまさかヒーリングマジック(治癒魔法)を使えるとは思っていなかったけど、やってみるものね」
「ありがとう・・ございます」
元気になったクルスは
「仲間が・・」
と思い出して心配顔をした。すると
「大丈夫。ダマリン様がエルフのトルエン族を保護しに向ったはずだから」
とリンスが言った。
「ほんとうに?」
美緒も
「私もダマリンから連絡を受けてここに来たの」
と言った。
ニドルが
「衛兵隊も来てくれたおかげで、温泉は守られたが・・」
とまだ心配気な顔をしていた。
「どうしてこうなったのか、説明して」
美緒が聞くと
「僕は薬師のトリルといいます。僕から説明します」
とトリルが美緒にこれまでの話をした。
ケルトン族は、かつてクハノウ国に仕えていた人族だが、クハノウ国がアリオン神国に対抗し潰れた後、領主を失って落ちぶれていった人族で、クハノウ領方面から来た一族らしい。
「このままではまたやってくるかもね。なら、こっちから乗り込みましょう」
と美緒が言うと
「え?本気?」
とシゲルは驚いた。
「でも、山の中を迷いそうだけど」
「それなら、私に任せてください。案内は出来ると思います」
リンスが名乗り出た。
「じゃあ、リンス。頼むわよ」
「まさか、またゴジラを召喚するとか?」
リリアが嬉しそうな顔で言った。
「場合によっては遠慮なく召喚するわよ」
「彼らがクハノウ領方面から来たのなら、大体の居場所は分かるわ。私もついて行っていい?」
「リリアは私のようにおてんばね」
美緒とリリアがリンスの案内で出かけていった。
◇
美緒たちが戻って来てニドルに報告していた。
「ケルトン族は潰してきました。もう温泉に現われることはないでしょう」
美緒はゴジラを召喚してケルトン族の居住地を全滅させてきたと言っていた。
雅則がスラーレン法国の貴族街を『流星雨』で壊滅させたり、美緒がケルトン族の居住地を『ゴジラ』なるものを召喚させて全滅させたり、リンメイは異世界の者に違和感をぬぐえずにいた。
これで一連の騒動は解決したようにも思ったが、リンメイの心は複雑だった。
シゲルも
「俺も村に帰ります」
とニドルに挨拶してカリア村に戻っていった。
◇
リンスは魔術師のルセールの家を監視するように待機した。雅則たちが薬草を採りにルセールに異世界に転移してもらって、そろそろ戻る時期になった。
そして無事戻ってきた。
「お帰り、無事戻ってきたようだね」
「向こうではいろいろあったけどね」
「薬草もいっぱい採ってきたね」
雅則たちが両手に抱えるように手にしている薬草を見てルセールが言うと
「はい。これでポーションをつくります」
と一緒に戻ってきたナターシャが嬉しそうに言った。
リンスが雅則の前に現し
「そろそろ戻る頃かと待機していました」
と言った。
「いつもありがとう」
「『ハナ』に泊まれるか確認してきます。それと・・リンメイが温泉に居ます」
「そう・・今はそうっとしておこう。まだ会いたくないだろうから」
「わかりました。それと大事な報告が」
リンスはケルトン族による温泉騒動を雅則に報告した。
「じゃあ、館に戻ってから美緒ちゃんから話を聞くか。リンス、ありがとう」




