4-4.魔王シゲルと美緒
このリンメイ編が『異世界に行ったら最強になった』の本編に追いついたので、再び本編の続きを書こうと思います。
その前に、この『4-4.魔王シゲルと美緒』をシゲル視点からに書き直します。
シゲルも異世界の者だった。リンメイに、この世界に来た時のことを話してくれた。
「俺は交通事故で死んだ・・らしい。で、女神から天国に行くか異世界に行くか選ばされた。そこで天国がいいかな?と言ったら女神に『退屈よ』って言われたので異世界に行くことにした。元の名は佐川茂。だから異世界に来るのにヤマトシゲルに改名した。
で、この世界に転移してきたんだが、魔物退治をするならギルド協会でハンターになると報酬がもらえると聞いた」
◇
シゲルはエランデル国のギルド協会を訪ねた。そこでナルーシャに魔法検査を受けた。
「レベル100ですね」
「100?・・大魔獣もそのくらいと聞いている。俺は女神から魔王として転移されてきた。そんなはずないだろう」
「そう言われても、そんなものです」
シゲルはナルーシャのに想定していた値より低く言われたので思わず声を上げてしまった。
しかしナルーシャから
「そう言われても、そんなものです」
とはっきり言われた。
そこに一人の女が二階に上がってきて
「どうしたの?」
とナルーシャに聞いた。
「彼が、自分が魔王だと言うのよ」
「え?」
女はシゲルに近寄ってきて
「あなた誰?」
と聞いた。
「俺は異世界から来た魔王ヤマトシゲル」
名乗った。
「ああそう。・・で、この世界に何しに来たの?」
女はシゲルが魔王と名乗っても動じることはなかった。
「何しにって、魔物を退治にだ」
シゲルは女に、この世界にやってきたいきさつを話した。
「女神から聖剣ももらってきたんだ。魔物退治用の聖剣ミツルギ。中古品だとは言っていた」
「なにそれ」
「で、きみは誰?」
女に聞くと
「私も異世界から来たんだけど、私の場合は死んではいないから」
とこたえた。
「で、なにしてるの?」
「いろいろ」
ナルーシャがシゲルに
「彼女はレベル500はありますから」
と教えてくれた。
「レベル500?・・魔女か」
思わずそう言うと、女は激怒して
「違う!もう一度、魔女と言ったら張り倒すから」
と強い口調でシゲルに言った。
「俺に勝てると・・」
「私も聖剣なら持っているわ。セイントソード!」
女は聖剣を呼び出し
「私と闘ってみる?」
とシゲルに聖剣を突き出した。
シゲルは女の気迫に圧倒され
「や、やめておきます」
と怯えるように言った。
そしてナルーシャに
「レベル100でいいです。仕事をください。稼がないと生きていけないので」
と頼んだ。
「ないことはないけど、魔王様に見合った仕事ねぇ・・」
ナルーシャは態度が大きくなって
「カリア村の警護でいいかしら」
とシゲルに言った。
「何でもいいです」
シゲルが仕事を引き受けると、女が
「カリア村って葡萄の木があるところ?」
とナルーシャに聞いていた。
「さあ、詳しくはわからないけど、村に魔物が出るからハンターの依頼が来るのよ」
「そうなの」
「で、村にはどうやっていけば・・」
シゲルがナルーシャに聞くと
「馬車を頼むか歩いていくしかないわね」
と冷たく答えられた。
「今夜も野宿か」
シゲルが消沈すると
「しょうがない。私が面倒をみるわ」
と女が言ってくれた。
「美緒さん、ほんき?」
ナルーシャに心配されて
「私も雅則くんじゃないけど、世話好きなところがあるから。カリア村に行けば葡萄の木が手に入るかも知れないの。これも何かの縁かも」
と女はナルーシャにこたえて
「一緒にカリア村に行きましょう」
とシゲルに言ってくれた。
「私は美緒。よろしくね」
シゲルは飯店『ハナ』に案内された。
「私は今はワリキュール王国に住んでいるけど、もとはここエランデルで過ごしていたこともあるの。そしてここはそのときに泊まっていた飯店よ。宿代は私が出してあげるから心配しないで」
と美緒は飯店に入っていくと、そこの娘らしいユリにシゲルも泊まれるか聞いてくれ
「部屋は空いていそうよ」
と部屋を借りてくれた。
「美緒さんは何者なんですか?」
二階に上がりながら美緒に聞くと
「どう説明したらいいか・・魔女ではないから」
と念を押され
「エランデルには葡萄の木を探しに来たのよ。ワリキュールには無いようだから」
と言われた。
「どうして葡萄の木を?」
「ワインをつくるためよ。この世界にはお酒はあるんだけど、ワインはないみたいなの。だから私が作ってみようと思って。・・シゲルさんの部屋はそこね」
と言うと美緒は自分の部屋に入った。
「何者なんだ。彼女は・・」
シゲルはこの世界に来てはじめて宿に泊まった。
◇
翌朝、美緒に誘われて一階の食事処で朝食を食べた。
「美緒さんも異世界からの転移者? それにレベルが高くて聖剣も出せるって・・」
「どう話したらいいかな。私自身も驚いているのよ。もともと剣道は習っていたけどね。こっちの世界に来ていろいろあって、それなりに楽しんでいるわ」
「で、どうやってカリア村とかに行くに?」
「たのもしい仲間が居るのよ」
「美緒さん、馬車が来ました」
ユリが声をかけてくれて、外に出ると、馬車が。そして御者は女だった。
「リンス、今日もよろしくね」
「はい」
シゲルとリンスは初対面だ。自己紹介することなく3人でカリア村に向かった。
「私はカリア村にも行ったことがないの。リンス、案内、お願いね」
「はい」
村に向かっていると
「早速出てきたわ」
と美緒が空を見上げて言った。何かが飛んでくる。
「飛び蟻ですね。比較的小さいもののようです」
「飛び蟻にも種類があるわけね。魔王シゲルさん、フライアントラーを落として」
シゲルは美緒に言われた。
飛び蟻とは羽を使って飛んでくる大きな蟻のような形をした魔物らしい。
「え?どうやって・・」
シゲルがとまどっていると
「魔王があんなものを倒せないでハンターが務まるの?」
と言われた。
「あんなものが出てくるなんて知らないし・・」
「しょうがないわねぇ。悠介さんみたいにフィンガーマグナム(指弾)は使いたくないわ。一応レディだから」
美緒は襲ってくる飛び蟻に衝撃波を放った。レベル500の美緒の衝撃波は、飛び蟻を落とすには十分すぎるほどの力があった。
「凄い・・」
シゲルは唖然としていた。
「リンスは指弾は使えないか。でも水星魔法に特化しているのよね。(飛び蟻を)撃ち落とせる?」
「水を使った魔法で魔物を攻撃したことはありません」
「使わないのはもったいないわ。例えば水を凍らせて相手にぶつけることは出来ないかな。悠介さんじゃないけど、私も少しはアニメをかじっているから」
「やってみます」
リンスは水を発生させると、それを凍らせて飛び蟻に向けてぶつけるように念じた。
すると水の玉が当たった飛び蟻が落ちていった。
「すごい、水を手裏剣のように飛ばせるじゃない」
「手裏剣はわかりませんけど、新しい攻撃魔法を覚えました」
馬車に並走するように奇獣に乗った魔物が現われた。
「あれも魔物か?」
新たに出て来た魔物にシゲルは驚いた。
「雅、いえハーロックの馬車も襲った魔族かしら」
美緒が想像でリンスに聞くと
「多分そうだと思います。あれはグレコ族。奇獣を操ります」
リンスがこたえた。
「ハーロックと同じ魔法を使ってみようかしら。火星魔法、ファイヤーボール!」
大きな火の塊がグレコ族の奇獣を襲った。
「すごい魔法だ」
シゲルは驚くだけで何も出来ない。
リンスは馬車を止めた。
「橋が流されています」
確かに橋を架けたよう形跡はあるが、橋はなくなっている。
「遠回りするようになるわね。リンス、水星魔法に特化しているならもっと大きなことが出来るか試してみようよ。浅瀬で水を凍らせてみて」
「川を凍らせる?」
シゲルはまた驚く声をあげた。
「試してみます」
リンスは川に向かって魔法陣を放った。すると川の水が凍りはじめた。
「いいわ。馬車を向こう岸に渡らせるわよ」
渡りきると氷が解け始めた。
「リンスの魔力もすごいわ。頼りになる」
美緒は喜んでいた。そして
「紹介しておいたほうがいいかしら。リンスは人間体に変異出来る魔族なの」
美緒が教えてくれた。
「魔族?・・驚くことばかりだけど、美緒さんとどういう関係?」
「話すと面倒だから、仲間と思ってもらえればいいわ」
美緒はあっさりと言った。
「魔族と仲間?」
しばらく行くとカリア村に着いた。
村長のヘンスが出て来た。
「エランデルから来ました。この魔王ヤマトシゲルが村を魔物から守ってくれるはずです」
美緒が挨拶した。
「俺だけか?」
「稼ぎたいんでしょう?私は他に目的があるから」
美緒はヘンスに
「彼を住み込みで雇ってもらいたいの。役にたたなかったら追い出していいから。それと葡萄が近くの山にあると聞いてきました」
と事情を説明していた。
「あるにはあるが、村でもブドウ畑をつくりはじめたんですけど、魔物が奪いに来て困っているんです。葡萄は今は魔物の餌になっているんです」
「じゃあ、交渉してきます」
美緒は臆せなくヘンスに言った。
「マジ行くのか?」
驚くシゲルに
「あなたは、村を守って」
と美緒とリンスは山奥に向かった。
その後、美緒は魔族・グレコ族と交渉をして葡萄の木をもらえることになった。
シゲルはカリア村に住み込み、村の警護をしながら暮らしはじめた。
◇
リンメイはシゲルの話を興味深く聞いていた。
その後も、リンメイはシゲルと出会うことになる。




