2-11.トレイン
「そんなことがあったんだ」
リンメイはジルの話を聞いて驚いた。
「信じられないだろう? 俺もびっくりだった」
「ハーロックさんは、そのソアラさんも館の仲間にしてしまったの?」
「信じられるか? ふつう。俺も館の住人、仲間にされた。変わった人間だと思うよ。ああ、この世界では人族と言うのか」
「私も仲間にされちゃったけど」
理由は人それぞれだが、リンメイも雅則たちの仲間にされた。
「これからよろしくね。俺もいつ元の世界に戻れるかわからないし」
「はい」
板金屋のトーマスからトレインが出来たとカリナに連絡が入った。
翌日、雅則と悠介がカリナとリサを連れてトーマスの工場に行った。
そして夜の館の会議で、トレインの完成と今後の予定の話があった。
トレインとは、自動車で何台もの客車を引っ張る乗り物らしい。それをエドワールに納めてエドワールの街中を走らせる計画らしい。
「トレインをSLの貨物車に載せてエドワールまで運ぶ」
雅則が計画を話すと悠介が
「魔獣が襲ってきて納車前に壊されたら困るぞ」
と心配した。SL列車はときどき魔獣に襲われていた。
「魔獣は自動車には興味ないだろう。奇獣に乗る魔族は居たな」
雅則が思い出して言った。
「魔族が自動車を知って興味を持ち始めたら?」
「魔族の暴走族はやめてほしい」
雅則と悠介の会話に
「それジョークよね」
と美緒が念を押した。
「搬入当日は、俺と悠介、カリナ、リサ、それにコーネリアにも見せてやりたい。リンメイも一緒に行くか?」
と雅則がリンメイにも声をかけてくれた。
「はい」
リンメイは何だかわからないが、ときめきを覚えた。ジルも
「俺も一緒に行っていいか?」
と頼んだ。
雅則が
「美緒ちゃん、2人を1日休ませてくれ」
と美緒に頼んだ。
「わかった。仕事は私がやりくりするから」
◇
トレインをエドワールに納める日、リンメイも立ち会った。
トレインはSL列車の小型化した形をしていた。客車を牽引する動力車はSLではなく自動車と同じエンジンを用いているらしい。煙は出ず、油を使った燃料で走る。レールは必要なく、道路を走ることが出来る。これもリンメイには驚くものだった。
トレインをSLの貨物車に載せ、エドワールに行くと、駅でライアンたちが待っていた。
トレインを貨物車から下ろし連結すると領事館まで走らせた。
「トレインも楽しそう」
コーネリアがトレインの動くのを見て嬉しそうに言った。リンメイもジルも素晴らしい乗り物だと思った。
◇
それからまた数日して館の会議で、雅則とリサがライアンとユリカとエランデル国の温泉に慰安旅行に行く話が出た。雅則が働き詰めのライアンに、たまには休むように促していたらしい。
「ライアンは生真面目というか仕事熱心だから、たまには休んだら?と勧めたんだ。そうしたら休みを取る日を決めたそうだ。ライアンたちと温泉に行ってくる。リサ、リンスに『ハナ』の予約を頼んで」
「はい」
「雅則くんもリサもおめかしして行かないとね」
美緒が言った。
「リサのスカートとかドレスファッションを見たことがないわね。リサは綺麗だからドレスも似合うと思うわ」
「そうですか?」
美緒に言われてリサはとまどっているようだった。
「でも私は・・」
「魔族も人族も関係ないわ。一緒に暮らしているんだもの。おめかしして悪いことないのよ。それにライアンやユリカと一緒でしょう? あまりカジュアルな服装でもライアンたちに悪いわ」
雅則もリサもそれなりの衣装を身につけて出かけるようにしたようだ。美緒がニナの店で雅則とリサの衣装を見繕った。
そして雅則とリサはエドワールに出かけていった。
リンメイは電力会社に出かけた時にジルに気になっていたことを聞いた。
「いつもハーロックさんはリサを連れて行くけど・・そういう関係なの?」
「そういう関係って、俺もそっちの話は苦手だけど、リサはハーロックの従者だったらしい。今は解任したらしいけど。イビルに聞いてみようか」
館に帰ってから、戻ってきたイビルにジルが
「ハーロックとリサについて聞きたいんだけど。リンメイも知りたがっている」
と話しかけた。
「気になる? ここじゃ何だからスナックにつきあってくれれば話してもいいけどぉ」
「お酒につきあえってことか。喜んで。リンメイは飲めるのか?」
「自信ないけど・・」
「アルコールの入ってないのもあるみたいよぉ」
リンメイもジルとイビルに誘われるようにスナックに行った。
◇
そして数日後、雅則とリサが帰ってきた。
リサは美緒から
「温泉旅行はどうだった?」
と聞かれていた。
美緒は人族とか魔族とか種別に関係なく、親しくなることを望んでいるようだった。
夕食後の会議で
「エランデルからのアズパイアや野菜の輸入は飛行船を使わないか? 列車より魔獣たちからの被害も少ないと思う」
と悠介が切り出した。
「そうだな。モディナ族へ渡す物資は飛行船で臨時便を出すか。他に変わったことはなかったか?」
するとカリナが
「みんなが出ているとき、ヒュンケルが来たわ」
と言った。
「別に用はなかったみたいで、私しか居なかったからがっかりして戻っていったけど」
「スラーレンとは連絡の取りようがないからな。たまには会いに行ってくるか。でも今はやることがいっぱいだからな」
雅則もエドワールに火力発電所をつくるための事業に携わっている。
雅則はエドワールに出かける前に、宮殿に行ってハンスに会ってきた。エドワールの火力発電所の鉄鋼材の進捗状況を確認をしてきた。
そして館の会議で
「宮殿に行ってエドワールの火力発電所の結構材の進捗状況を確認してきたんだけど、そのときハンス(侯爵)からスラーレン法国から親善大使が来る話を聞いて来た」
と報告した。
「マーラという令嬢が成人したのを機に親善大使としてワリキュールに来るらしい。こっちの世界では15歳で成人らしいから15歳になったばかりだりだろう。美人かどうか聞かないのか?」
雅則が悠介に聞いていた。
「15歳だろう? あと3年たったら聞いてやる」
「悠介はロリコンじゃなかったか」
「熟女のほうが許せる」
雅則と悠介は相変わらず会話を楽しんでいるが、リンメイはマーラと聞いて思い出した。
「それはスラーレン御三家のアレイン家のオルコックの娘かも」
と思わず口にした。
「知っているのか?」
雅則に聞かれて
「オルコック様に娘が居ることは知っていますが、幼い頃しか見たことがありません」
「そう。・・しかし国王はヒュンケルだよな。ヒュンケルがワリキュールに親善大使を向ける?・・スラーレンにもSLを走らせたいとは言っていたけど・・」
「どうする?」
悠介に聞かれて
「まあいいか。ハンスたちに任せよう。エドワールの火力発電所を進めないと・・」
と雅則はマーラの件はスルーした。
だが、このマーラがワリキュールにも脅威をもたらす存在になることを雅則はもちろん、リンメイもまだ知らないでいた。




