2-1.冒険者稼業
スラーレン法国生まれで魔術師の素質のあるリンメイは、幼い頃から魔術と格闘の腕を磨いてきた。そしてスラーレン王家のシルビア、マクレス、プロティナに拾われて仕えてきたが、腕が立つからと、ただ利用されてきただけに思うようになった。
母はリンメイが幼い頃に亡くなり、シャドーコプスの一員だった父も、王家内乱の犠牲になり、スラーレンに戻ってもリンメイには帰る家もなかった。
リンメイが生き方に悩んでいる間に、ワリキュール王国は目覚ましい進化を遂げていた。
街には油に代わる電気の明かりが灯りはじめ、街の外周をSLなる乗り物が走り始めた。
そしてワリキュール王国からエランデル国までSL鉄道のレールが敷かれ、その事業のために両国の間に新街・エドワールも出来た。
これらが雅則や美緒、悠介の力によるものであることを、リンメイはまだ知らなかった。
リンメイはエドワールを拠点に冒険者の仕事をして過ごしている。
◇
リンメイは安い宿に泊りながら冒険者の仕事をこなし、ときどきちょっと高級な飯店に泊まって心と体を癒していた。
そんな暮らしをしながら、リンメイは街の物価が上がっていくのを感じた。
生活を維持していくには報酬の高いクエストを選んだ方がいい。エドワールで働く冒険者たちはけっこう居るが、リンメイを超える魔力のレベルを持つ者は見受けなかった。中には力を威張り散らす者や乱暴を働く者もいる。しかし冒険者協会の受付の反対側には衛兵隊の詰め所があるので協会内で乱暴を働く者はいないようだ。
「カラナ、報酬の高いクエスト、何かないかな」
リンメイは親しくなった協会の職員のカラナに聞いてみた。
「列車の警護で魔物から列車を守ると報酬の割り増しが付くけど、魔物が出るとは限らないから・・ラカの森の魔物退治はどうですか? 街の建築物を建てるのに森の木材を切り出しているんですけど、魔物に襲われることもあるので、冒険者に警護の依頼があるんです」
「それって、もともとラカの森に棲んでいる生き物たちでしょう?」
「まあ、そうですよね」
「いくら魔物でも、縄張りを荒らされて追い出そうとしているだけじゃないかな。ちょっと気がすすまないな」
「リンメイさんは心が優しいんですね。じゃあ、切り出した木材を馬車で街まで運んでくるんですけど、その護衛は? 森で魔物を退治したほうが報酬が高いですけど」
「列車の護衛ばかりじゃつまらないから、たまにはそのクエストを受けてみようかな」
リンメイがクエストを受諾していると、ソーンが現れて
「今度は馬車の護衛ですか。リンメイさんのような力のある冒険者に守ってもらえれば安心です」
と声をかけられた。
ソーンはエドワールで衛兵隊第二分隊長として赴任してきて、鉄道のレールを敷く事業で警備をしているとき、冒険者になったリンメイに助けられ、それ以来、リンメイに尊敬の念を抱いている男だ。
「最近、物価も上がってきたし・・」
「その件は、私も懸念しています。統治者になったガルファード男爵が高い税金を課しているそうなんです」
「そう・・」
だがリンメイは政には関わりたくないので聞き流した。
そしてラカの森に向かった。
ラカの森は歩いてもそう遠くはない。数時間の距離だ。森から木材を運んでくる馬車が待機している運送会社の敷地に向かって歩いていた。
「この気配は獣ではないわね」
街から感じていた不穏な気配。リンメイをつけてくるようだった。
森に近づいていくと、気配は急に迫ってきた。そして・・。
リンメイの前に立ちふさがるように現れた3人の男。
「冒険者協会からつけてきたの?」
「俺たちも冒険者をやっているからな。ラカの森に行くんだろう? どうだチームの一員にならないか」
「え?」
「一人で行くんだから、それなりに強いんだろうが、どんな魔物が現れるかわからない。いざというときには俺たちが守ってやる」
「けっこうよ」
「そう言うな。俺たちも男だけでは味気なく思っているんだ。混ざってくれないか」
「生憎だけど、一人の方が気が楽だから」
「優しく言っていればつけあがって。入らないならお前をいただいてもいいんだぞ」
「好きにすれば」
リンメイは噴き出しそうな思いをこらえて言った。
「なら俺からいただくぜ」
3人の中で一番体格のいい男がリンメイに襲い掛かった。
リンメイは男のみぞおちに蹴りを入れた。
「ウグッ」
男は腹を押さえてうずくまった。
「一人でクエストを受けたくらいだ。魔法も使えるんだろうが、格闘も出来るのか」
男たちはまだ強気だった。
「弱い魔獣なら倒せるくらいにね」
「なら魔法を受けてみろ。マジックアロー」
男がリンメイに魔法の矢を放ってきた。
リンメイは飛び上がって身をかわすと
「炎の矢」
と放った。
男は魔法防御でリンメイの攻撃を防ぐと
「俺はエランデルのギルド協会でレベル50と言われた。Aクラスのハンターだ」
と言った。
「そう。なら弱い魔獣は倒せそうね」
「ばかにするな。パワーウェーブ」
男はリンメイに衝撃波を放ってきた。
だがリンメイはそれをマジックシールヂで防いだ。
「二人がかりで倒してやる」
もう一人の男も魔法をつかえるようだ。リンメイは
「まさか人族相手に成果を試すつもりはなかったけど、実験台になってもらうわ。連鎖電撃」
二人の男に電撃を浴びせた。
「ぎゃあ」
男たちはその場に倒れ込んだ。
「軽めに当てたから。言っておくけど、私はレベル80と言われたわ。Sクラスのハンターよ」
運送会社の敷地に行ったリンメイは、そこから街に材木を運ぶ馬車の護衛についた。そしてクエストをこなした。
◇
その後、エドワールの統治者がガルファードからライアンに替わった。ガルファードは裏組織のサーベルハンターの頭領だったが、ソーンがガルファードについて嘆願書を出したことから、ガルファードが雅則に倒され、代わりにワリキュール王国の男爵だったライアンが子爵に陞爵して新しい統治者になった。
それらの詳しい内容は、エドワールの住民も知らない。
その陰で、雅則が働いていたことも伏せられていた。




