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君の事なんて  作者:
3/65

始まった秘密の関係

「あなたが永井萌さん?」


 その綺麗な人は私の前に座った。

 綺麗な顔から発せられる言葉には冷たいものがある。

 言われる事はわかっていた。


「……え、あ……はい」



「あなたとは趣味が合いそうね……」



「そうですか?」



「私が言いたい事、わかるかな?」


 その人は笑顔でそう言っていたが、目の奥は全く笑っていない。

 対抗心剥き出しでかかってくる感じ……。


 ほんと、面倒くさい……。



「たぶん……。 でも大丈夫ですよ。 私、別れますから……」



「え? 何で? いいの!?」


 その人は声が裏返った。

 こんなにもすんなり話が進むんだからびっくりするよね……。



「もう別れようかなと思ってたし……どうぞ、仲良くしてください」



「ありがとう! 永井さんっていい人ね!」


 会心の笑みでその人は去って行った。

 それだけを言いに私のところへ?

 そこまで彼の事が好きなんだ……。

 ある意味、そんな気持ちを持てるのが羨ましかった……。


 彼女が去った後すぐに彼にメールを打った。



 『さっき、綺麗な女の人に私とあなたの事を聞かれたよ。 

 大丈夫です、別れますからって言っておいた。

 あの綺麗な人と仲良くね。 バイバイ』


 そんな感じであっけなく終わった初めての恋愛。

 彼との付き合いを楽しめなかった私も悪い。

 男の人の事を心のどこかで疑ってかかっていた。


 そんな私だからこうなった事は仕方ない事だし、悲しさもない。


 お別れのメールをしても彼からは返事がなかった。

 校内で二人が歩いているのを見た。

 でも何も思わなかった。

 私はサークルにも顔を出さなくなった。

 元々幽霊部員もたくさんいる。

 私もそこに加わっただけだった。


 3年生とは卒業も一緒。

 私も元彼もあの綺麗な人も一緒に大学を卒業した。

 それ以来二人とは会っていないし、今、どうしているのかもわからない。

 特に興味もなかった。


 短大卒業後、今の会社に入社してからも何人かの人と付き合ったけど、どの人も長続きしなかった。


 二股だったり、知らずに浮気相手だったり、もうすぐ結婚が決まっていたり……。


 そのもうすぐ結婚が決まっていた人と付き合っていた時に出会ったのが金子さんで、一緒に飲みに行っては彼の愚痴を聞いてもらっていた。



「何か怪しいんですよねーー。 電話かけても出ないし、でも、メールすると返ってくるんですよ……」



「永井さんはどう思ってるの?」



「えーー……、浮気かなーーって……」


 金子さんは奥さんの不満を口にする事が多かった。

 結婚5年目の奥さんと2年前くらいから妊活中だがうまくいかず、奥さんとギクシャクしているらしい……。

 お互いの不満を話して聞いてストレス解消していた。

 気兼ねなく話せる金子さんは会っていても楽だった。


 しばらくして私は衝撃的な真実を知ってしまう。


 実はもうすぐ結婚する人で実際は私が浮気相手だった……。


 電話には出ずメールなら返信してくる理由を聞くとあっさり白状した。



「ごめん……彼女がいてもうすぐ結婚するんだ……」



 え?

 どういう意味?


 私は彼女じゃなかったの?

 あなたの彼女だと思っていたのは私だけ?


 結婚って何!?


 この時ばかりは衝撃過ぎて金子さんを飲みに誘った……。



「有り得ない。 私も気付かなかったのはいけないけど……!」



「俺たちってさ、幸せになりたいだけなのにね。 永井さんには本音が言えてほんとの自分でいられる。 それが楽だよ……。 二人で何も考えず一緒に居よっか……」


 そんな笑って言う優しい言葉はその時の私の心にまっすぐ刺さった。


 飲み足らず私の家で飲み直す事になったが、もうお互いほろ酔いでいい気分になっていた。

 テーブルに何本かビールやチューハイを出す。

 おもむろに開けた缶を一口飲んだ。


「はぁ……」


 まさか結婚が決まっていた人と付き合ってたとは……。

 気持ちが忙しい日だったなぁ……。


 お酒に逃げ、金子さんに話を聞いてもらい、何とか前向きになれるかなと思える様になった。


 こんな体験、なかなかできないよね……。


 そんな事を考えていた。


 一息ついたその後、一瞬の静けさが走った。


 ふと目が合った瞬間、どちらともなく自然と唇が重なった……。

 そうなるともう止まる事はない……結局、深い仲になってしまった。


 私の中で、そんなつもりはなかったという前置きを用意しつつ、でも、もしもがあっても金子さんならまぁいっか……という気持ちがあったはずだ。


 その時の彼とは違う、私をちゃんと見て求めてくれるその気持ちがわかってお酒も入って尚更心地よく抱かれた。

 そんな気持ちになってセックスしたのは初めてだった……。


 でも金子さんは既婚者。

 こんな仲になってはいけない人。

 今日でおしまい、お互い飲んでしまってたから……ハプニングみたいなもんだよね。

 今後はこんな事があってはいけない……。


 あの時、そう思ったのに気付けばもう五年もこんな関係を続けていた……。

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