第18話 ケジメ(★)
2020.1.10 ちょこっと改稿しましたm(__)m
かくしてミテュラの指導を受ける事となった3人。
だが、その前にミテュラはまだ確認すべき事があった。
「3人とも、村にいた腰巾着とイクト君はどうするの?」
ミテュラからすれば、腰巾……アーレスなどどうでも良かった。イクトの隠密能力に関しては使えると踏んでいるが、性格的にアーレスから離れないだろうと思い、勧誘は諦めている。
「僕は……2人に会っておきたいです。なんだかんだで20年お世話になりましたし、感謝は伝えておきたいです」
「私もこの世界に残る事は伝えておくわ。一応長い付き合いだし」
「ククルも、お2人についていくってヘタレ神に伝えますぅ」
しっかり言質を取った。ミテュラも満足そうに笑顔で応える。
いつか息子や信頼できる仲間を得た時の為に、騎士団に腰掛けてコソコソと隠れて冒険の準備をしてきたのだ。さらにミテュラにとって初めての冒険者仲間。内心はものすごくワクワクしている。
「よし。それじゃ、まずは神族の村に行くとしましょう」
*****
「やぁ腰巾着君、斥候君。またお邪魔するわね」
「「……『鬼神』!!?」」
アーレスはミテュラの拳圧によって腹部に重傷を負っている為、横になってイクトに介抱されていた。彼等の持つ固有能力に回復手段はないのである。
「あの……ただいま戻りました」
「戻ったわよ。アーレス、イクト」
「ただいまなのですぅー」
ミテュラの後ろから3人がひょっこりと顔を出す。
途端、アーレスが目の色を変えて怒鳴りだした。
「フォルテュナ、ククル! どうして『鬼神』などと一緒に居るんだ! どうして逃げなかった!? それにアシュラ!! お前も何やっでがあああぁぁ!?」
唾を飛ばしながら3人を問い詰めようとするアーレスに対して、ミテュラが彼との距離を瞬時に詰め、負傷した腹部を思いっきり踏み抜いた。
「腰巾着神さん? 私の息子と仲間に何言ってくれて……んの?」
「…………」
殺気を込めて威嚇するミテュラだったが、腹部の激痛に耐えきれなかったアーレスは、すでに白目を剥いて気絶していた。
「だらしないなぁ……こいつ本当に『戦神』なのよね?」
「はい、それは間違いないありません」
フォルテュナが答えてくれた。
ミテュラに問われたはずのイクトは、彼女の圧倒的な存在感に心が呑まれ、身体も動かす事もできずにいた。
すると、アシュラが彼等の側まで歩いていく。
そして目の前で立ち止まると、座っているイクトと同じ目線になるように腰をかがめ、彼に話掛けたのである。
「イクトさん、これまで20年間お世話になりました。俺は、ここにいる3人と一緒に世界を旅しようと思います」
目の前の相手がミテュラからアシュラに替わった事で、イクトがようやく我に返った。
肝心のアーレスは気絶したままだが、このまま4人を行かせるわけにはいかないと思ったイクトは、動き出した脳を必死で回転させていた。
「アシュラ様は全てを聞いたのですね? 村や神族、貴方の出自の事も……」
「はい、大体は聞きました。だから僕はこの村を出ます。これまで助けられてばかりの生活でしたが、冒険者として鍛えて、人々を助ける側になりたいんです」
「人々を助けたい……ですか。貴方は簡単に口にしましたが、世の中そうは甘くありません」
「それは村を逃げ出した自分が一番よくわかっています」
「この世界は、欲に塗れた箱庭なのです。生半可な覚悟で生きていける程、優しい世界ではありません。この村を出た事のないアシュラ様は、これから多くの人々の汚い部分を目の当たりにするでしょう。そして辛い目にあう事も少なくありません。こんな混沌とした世界を、歩き続ける事ができますか?」
アーレスならこう言うだろうと思いながら、イクトなりにアシュラを諭そうと試みた。だが、アシュラの眼には迷いがなかった。
「この先は、茨の道だと思います。でも俺は決めたんです。これからは自分の目で世界を見て、自分の足で自分の人生をしっかりと歩みたいんです」
アシュラの濁りの無い言葉にイクトは感情を緩めた。
「……わかりました。アーレス様には私から伝えておきましょう。どうかお気をつけて。ご武運をお祈りしております」
「ありがとうございます。 イクトさんも、どうかお元気で」
「お心遣い痛み入ります。アシュラ様」
イクトが首を垂れると、アシュラは数歩後ろへとさがり、入れ替わるようにフォルテュナとククルがイクトの前に座った。
「イクト、私はアシュラとこの世界で生きていくわ。色々と押し付けちゃって悪いと思うけど、後の事はお願いね」
「イクト様、ククルもアシュラ様とフォルテュナ様の傍にいたいのですぅ。ヘタ……アーレス様にもごめんなさいってお伝えくださいですぅ」
イクトは、フォルテュナとククルにそっと微笑みながら言葉を返す。
「承知いたしました。フォルテュナ様、そしてククル。どうかアシュラ様のお力になってあげてください。この先、様々な苦難に心折れ立ち止まる事もあると思います。ですが仲間を信じて、どんな時も支え合う事が大切です。……どうかお気をつけて……」
「ありがとう(ございますぅ)」
フォルテュナとククルがアシュラと並び、遠ざかっていった。イクトの目にうっすらと涙が浮かぶ。偽りの村だったとはいえ、長い間生活を共にしてきた仲間なのだ。決別はやはり心に来るものがあった。
「……全く、俺が気絶してる間にやってくれたな」
「……アーレス様、申し訳ございません」
「いや、構わん」
アーレスが意識を取り戻していた。彼は横たわりながら、3人の後ろ姿を瞥見する。
「『―――【隠者解除】―――』」
アーレスが、突然偽装を解除したのだ。
アーレス、イクト、フォルテュナ、ククルの4人は、村人としての姿から、神族としての本来の姿へと戻っていく。
「これは……」
「元の姿に戻ったのですぅ」
「これが2人の本当の姿……凄く、綺麗だ」
突然の事で、フォルテュナとククルは驚き、アーレスに向き直る。
アシュラは2人の本来の姿に目を奪われ、見惚れていた。
「……2人とも達者でな」
アーレスはそっぽを向いて言い放つ。
そんなアーレスに、フォルテュナとククルは微笑みながら言葉を返した。
「アーレス(様)もお元気で(ですぅ)」
そんな2人の姿を見て、イクトは思いついたかのように言い放った。
「ならば私からも餞別です。―――【偽装】―――」
イクトが固有技能の派生技を唱えた。
すると、神族の姿そのままに、フォルテュナは白金色の髪色、ククルは翡翠色の髪色に変化していく。イクトの好みなのかわからないが、どちらもよく似合っている。
ちなみにアシュラはさらなる2人の変化に見惚れている。
「全員が銀髪のままでは旅に支障をきたすと思いますので、勝手ながらお2人の毛色だけ変えておきました。。アシュラ様はそのままですが、銀髪である事が試練となり、自らを鍛え上げる糧になると思います。ちなみに私にしか解除できませんのであしからず……それでは」
「「【天還】」」
アーレスとイクトがそう唱えると、2人の姿は光に包まれ、空へと吸い込まれていった。天上界へと戻っていったのだ。
光の粒子が消え、村には4人だけが残された。
「最後だけキザったらしかったわね。でもまぁ、嫌いじゃないわ」
ミテュラは少し離れた場所で、5人のやり取りを見てひとり呟いた。
「折角だから、この村を拠点にしましょう。アシュラ、自宅に案内してね」
「わかりました母さん。でも俺の家じゃなくてフォルテュナの家ですけど」
こうして4人は、拠点となるシェイクス……いや、アーレスの自宅へと足を運ぶのであった。
「あのぉ、フォルテュナ様……ひとつ気になった事があるですぅ」
「どうしたのククル?」
「皆様、天上界に還られましたけど、ミテュラさん対策だったと思うですぅ」
「そうね。そう考えると、別に天上界に戻る必要なかったわよね」
「という事は、クズ国王の討伐任務も放置していったですぅ?」
「きっと私達に丸投げしたのね」
「…………」
「…………」
「「…………あんのヘタレ神がぁ!!」」
さり気なく任務を擦り付けて行ったアーレス。
改めてヘタレのクズ神として認定された瞬間であった。
改稿内容については2点のみ。
タイトルを「決意と別れ」から「ケジメ」に変更しました。
内容的にタイトル負けしすぎてると思った為の変更です。
そして今話は名前の修正と会話の調整のみで、大きな変化はありません。
いつもお読みいただき本当にありがとうございますm(__)m




