第98話 査問会?(その2)
___一旦、皆で向き合う様にベッドの端に座ってから、興奮気味のミリアをしっかとつかんだ状態で、艶のある黒い耳をぴこぴこさせながらアルフが答えた。
「ヨシッ、いいゾ。ソーン。ミリアは抑えているから今のうちダ」
「えーと、ちょっと誤解があるようで申し訳ないけど、昨日部屋を抜け出していったのは、昼間見かけて気になる場所があったからで・・・」
「へぇー。いつの間にそんな如何わしいお店を調べてたのソーン君」
ベッドの端に座りなおして片肘をついた姿勢でニヤニヤと悪い顔をしたマイがそう告げると。
それに激しく同調するミリアが今にもアルフを振り切りそうな勢いでソーンに迫ろうとしている。
「あわわわ、ち、違います。マイ先生もミリアを煽らないでください」
そういって急いで否定するソーンが続けて答えた。
「昨日の装備屋の裏手のところに、ルルキアの街で見かけたのと同じような階段を見つけたので、もしかしたらあの場所へ行けるのかなって思って」
それを聞いたアイリが訊ねる。
「あの場所?以前にソーン君が話してた地下にある金色に輝く糸が綺麗な場所ってやつかしら」
「そうです。あの場所は歴史ある建物だと思ったので、今度伺うことができたら遺跡を調べてた村長のことを聞いてみたいと思ってました」
ソーンがそう言うとマイがさきほどとは違って真面目な顔で訊ねた。
「それは・・・その場所って遺跡に関係するってことなのソーン君」
「・・・僕のただの直感なんですが、きっと遺跡かそれに近い技術で出来た場所だと思ってます、それで昨日見つけた階段が皆さんには見えてなかったようだったので、気になって夜中だったんですが確認したくなって・・・」
なるほどと皆が納得する中で、ひとりミリアが声を荒げて質問する。
「ちょっ、ちょっとそれで、女の人と会ってたってところの説明がないわよソーン。誤魔化そうったってダメだからね」
そう言ってソーンに詰め寄ろうとするミリアを再びアルフが止めにはいる。
「えーと、待ってミリア。話は続きがあって・・・その地下に、金色の髪をしたとても綺麗な女の人が居てね。ルルキアの街であった時とは、ちょっと雰囲気が違ってたけど・・・色々あって詳しく話をする間もなく気を失っちゃって・・・でも村長探しのヒントはもらえたんだ」
それを聞いたミリアがまだ納得しないようで質問する。
「そう、綺麗な女の人が居たわけね。ふーん。でその人と会って何をして気を失ったのかしら」
なんだか泣きそうな顔のミリアがそう言うと、不思議そうな顔でソーンが答える。
「えーと、それは、その時に頂いた、甘い蜂蜜みたいな飲み物を口にしたときに・・・」
それにはマイが食い気味に質問した。
「ソーン君はそれを口にして気を失ったの?それって濃厚な蜜のような・・・口にしたときに気を失う以外に何か変化はあった?」
「はっ、はい。その時に村長の事を訊ねようと思ってたんですが、視界・・・意識が凄い勢いで走りだして次々と景色が変わっていって、まるで魔術で集中している時のような感覚でした」
それを聞いていたマイが興奮気味に続けて発言する。
「なるほど、たしかに遺跡がらみの案件ね。その階段があったところに今すぐ行ってみましょう、それとミリアちゃんが心配しているようなことはソーン君に限っては何も無いと思うから・・・可愛らしい反応するから、ちょっとからかってみただけよ」
「なっ、何をマイさん!・・・もう、あたしはちょっと昼間の事もあったしソーンが心配で・・・」
そう呟くと顔を伏せ気味にしたミリアの傍に座ったソーンが答えた。
「えっと、心配かけてごめんねミリア。今度からは階段を見つけたらミリアと一緒に行くようにするよ。それで今からその場所へ案内しようと思うんだけど一緒に来てくれる?」
そう言ったソーンが申し訳なさそうにミリアの顔を覗き込んだ。
「・・・そう、そうね。まあ反省しているなら許してあげる。次からそこへ向かう時は、あたしと一緒にだからね。ソーン、ちゃんと覚えててよね」
慌てて再び顔を伏せたミリアが答えると、それを聞いていたアルフが続けて答えた。
「あっ、ボクもその時は一緒に行くゾ。ソーンはすぐに危ないことに巻き込まれるからナ、護衛役が居ないとダメだゾ」
それを聞いたソーンが答える。
「そうだね、また気を失ったら連れて帰ってもらわないといけないし・・・」
その発言には、本当に反省してる?とミリアの怒りが再燃してきたので、
慌てたソーン達は早く支度しちゃおうと蜘蛛の子を散らすように逃げていくのだった。
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