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第37話 手の中の宝石

「あとは、徒歩でお願いできるかね」


 荷馬車が当初予定していた分かれ道に停まったところで、ミナの親父さんが話しかけてきた。


「もちろんです。ここまでお世話になりました」

 礼儀正しくソーンが深くお辞儀をすると、つられてミナと親父さんもお辞儀をする。

 そのあとソーンは言いづらいことをなんとか勇気をだして口にした。


「えーと、ミナちゃん、クーマを渡してもらってもいいかな?」

さっきほどから、確固たる意志でしっかりと胸元に抱きしめた、茶色い毛皮のもふもふを手放したくない女のミナが首を左右にぶんぶんと振っている。


「もふもふさんと、もっとおしゃべりしたいの、別れるのやぁ」

今にも泣きそうな顔をみせて、必死で、もふもふした毛玉を抱きしめているミナに全員がどう説得したらいいか悩んでいた。


 アルフがふと思いついたように、ソーンが持っていた袋から、なにやらとりだして、女のミナに話しかける。

「んー、りんごとかどうかな、美味しいよ。りんご・・・」


ちらっとそれをみたミナが泣き出した。


「いらない、もふもふさんがいい」

大好きな赤い果実りんごも今はどうやら、眼中にないようだ。


 親父さんが、やれやれと申し訳なさそうに話し出した。

「あぁー、すまんね。ソーン君、いつも仕事で構ってやれんから、よっぽど、もふもふさんとのおしゃべりが楽しかったみたいだ。まあ、無理やりにでも説得するからちょっと待ってくれるかね」


 すると、じっとなすがままだった茶色いもふもふがしゃべりだした。


「ふむ、楽しい時は、いつも一瞬じゃよ。ほれ、お嬢さん、皆が困っておる。わがままばかりでは、大きくなれんぞ」


 クーマはミナに抱っこされた状態で、上体を捻ったあと、スっと、ふさふさの毛でおおわれた手をのばして、女の子の頭をヨシヨシした。


「でもでも・・・もふもふさんいなくなったら、ミナさびしいよ」

 ミナが泣きそうな声で、つぶやく。


 すると、クーマは頭にのせている帽子の中に手をいれて、何かを取りだした。

「ふむ、楽しい時間を過ごした記念に、お嬢さんにこれをプレゼントじゃ」

 そういいながらクーマが身を捻ると、ミナがあっ、という声をあげるとしっかりと抱っこしていた手から離れた。ふよふよと浮いているクーマが、ふさふさの手を差し出してミナに何かを手渡した。


「わぁ、これなに?宝石なの」

ミナの小さな手の中に赤く光る石のようなものがキラキラと輝いていた。


「ふむ、それは魔法の石じゃ、悪い奴らに襲われたときに、強く願うと、悪い奴を退治できるはずじゃ。間違っても親父どのに向けて使ってはいかんぞ」

 そういいながら、クーマが舌をちろっとだして、親父さんを指さす。


「いいものを、もらったなミナ。今度ミナを怒るときは気をつけんとな。しかし、かまわんのかね、宝石は良く知らないのだが、高価なものとかでは」

 そう言いながら親父さんが心配そうな顔をした。


「えーと、クーマの持ち物ですし、本人がいいならきっと、大丈夫なものなんだと思います。ミナちゃんも喜んでるしいいんじゃないでしょうか」

 それを見たソーンがすぐに問題ないことを伝えた。


 その間も、じっと手の中の赤い宝石を見ていたミナが、顔をあげて、もふもふさんに話しかけた。


「ありがとう、もふもふさん。これ大切にする。またいつか遊んでくれる?」


 それを聞いた、クーマはふよふよと浮きながら女の子に近づいて、ふさふさのオナカで、抱きしめながら頭をヨシヨシした。


「ふむ、時は長い、どこかで会うこともあるじゃろう。ミナは特別じゃ覚えておくぞ」


 残りの時間にいくつかの言葉を交わしたあと、馬車から荷物を降ろしおえたので、ここからは別れて進むことにした。


 馬車の荷台から大きく手をふるミナを見送って、ソーン達も、もう少しとなった目的地の町を目指して歩き出した。



____森の側に続く道、その先は遠く山岳地帯へと延びていた。


 ここから少し遠目に白く霞んだように見えるのは、山の中腹にある湖からの霧のせいだろうか、もう少し歩けば、大街道の整備された道へつながるだろう。

 しばらく歩いていると、緑の草原に剥き出しの大きめの岩がゴロゴロと転がっている風景にそろそろ飽きてきたかなと思ったところで、


気になるものを見つけた。

 

いつも読んで頂きまして有難うございます。つづきも読んでいただけると嬉しいです。

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