『恋を忘れて』他
・九藤 朋へのお題は〔恋を忘れて〕です。 〔直喩禁止〕かつ〔色の描写必須〕で書いてみましょう。
恋を忘れてしまおうと旅に出たのに、入ったバーのカウンター。酒を呑んでいると歌い始める歌姫。その熟した赤い唇より僕はピアノの弾き手の女性に目が行った。彼女に声をかけたい衝動に僕は駆られる。次の曲のリクエストは僕の番。僕は彼女に「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」を頼もうと決めた。
・九藤 朋は『頭上』と『最初』を使って140字SSを書きましょう!
その家の売却の交渉は難航した。私はどうしてもその家が欲しかった。相手の家族もそう。持ち主の老婆はどちらに売るか決めかねていた。庭で話し合っていた時、鳩が飛来して私の頭上に糞をした。老婆はこれは吉兆と喜び、売る相手を私に決めた。最初からそうと解っていても、私はここに立っただろうか?
・貴方は九藤 朋で『未送信メール』をお題にして140文字SSを書いてください。
九藤 朋で、を無視して書いてしまいました。
あの永訣の日以来、ずっと何もかもが凍りついたままだった。季節は私を置き去りにしてぐるぐると巡り、ただ時だけが過ぎる。彼に送る筈だった未送信メール。プロポーズの返事は、一生出来なくなってしまった。彼の時と同時に私の時も止まった。桜の花弁がひとひら舞う。それでも時は動くと言うように。
・九藤 朋は『風景』と『犬』を使って140字SSを書きましょう!
偽りの家族愛。偽りの団欒。父がワインを飲み母がつまみのブルーチーズを切る。弟がジュースを僕にねだる。父さん、あの女のところに行かなくていいの?母さん、そんな夫でいいの?知ってる癖に。偽りの平和な風景を、手に持つナイフで地獄絵図に変えたい。地獄の番犬ケルベロスをここに呼び込むのだ。
・貴方は音ノ瀬 ことで『愛せるなら愛してみろ』をお題にして140文字SSを書いてください。
音ノ瀬ことには過去に負った苦い後悔の念があった。聖の思慕の情に、すぐと応えるにはまだその念が強過ぎたのだ。けれど白髪、赤目の聖への自らの想いを抑えることもできない。今では、ことは開き直った気持ちでいた。(愛せるものなら愛してみろ)
※出演『コトノハ薬局』より音ノ瀬こと
・九藤 朋は『大地』と『湖』を使って140字SSを書きましょう!
裸足の裏に大地を感じる。雄々しい地熱がこの奥底にあるのだ。脈打つ、生が。私は生を踏みしめながら湖に向かう。朝靄が漂い、湖は私を迎え入れてくれるかのように乳白色の中森閑としてある。彼が死んだ時に私の心の時も止まった。今、身体の時も止めるのだ。生を踏みしめてから、死に身体を浸すのだ。
・貴方は九藤 朋で『手繰り寄せた糸の先』をお題にして140文字SSを書いてください。
またもや九藤 朋で、を無視して書いてしまいました。
気付けば黄金色の繭の中に私はいた。どこ?どこにいるの?繭の中、細い糸を掻き分けてあの子を探す。決して失えない私の子供。手繰り寄せた糸の先、本当に小さな手が私の指を握り締めた。そこで目が覚めた。救急隊員に声をかけられる。「大丈夫ですか、お母さん!お腹のお子さんは無事ですよ!」




