『手のシワ』他
お題をくださった皆さまに感謝します。
「手のシワ」を使って文章を書く。
いつの頃からか、君の手に軟膏を塗るのは僕の仕事になった。君は最初は遠慮していたけど、その内これがなければ眠れないのよと、笑ってそう言うようになった。いつしか君の手のシワが僕たちの過ごした年月を表し、互いに頭は白くなった。死が二人を分かつまで。僕は君の手に軟膏を塗り続けるだろう。
「ハニーミルク」を使って文章を書く。
甘い甘いハニーミルク。例えるなら僕たちの恋はそんなものだった。けれど、彼女とは違った。ただひたすら苦いだけなのに、離れられず別れ切れず。ハニーミルクはどこかに行った。僕には苦いビターだけが残った。そうして、僕はビターの彼女に、教会で終生の愛を誓った。
「ねこさん」を使って文章を書く。
可愛いねこさん、ミルクを舐める。あたしの一番のお友達。辛くてもねこさんがいれば平気なの。パパやママは、最近、お姉さんになってきたわね、なんて言うけれど、まだまだあたし、子供なのよ。あたしだって、ねこさんみたいに美味しいミルクを飲みたいの。あなたならわかってくれるわよね、ねこさん。
「スウェーデン」を使って文章を書く。
スウェーデンから帰国した彼を空港で出迎える。彼の隣には、見知らぬ金髪の女性。ごめん、あっちで彼女ができたと告げられ、私は呆然とする。私は貴方を想わない日は一日とてなかった。けれど貴方は違った。空港から一人で帰る私の頭上からは雨。お陰で涙を紛らわせることができた。
君は香る花のよう。囀る声は鳥に似て。 そう称された妓楼一の舞姫は、ある将軍に見初められ、身受けされた。彼女には末を誓った恋人がいた。彼は将軍の部下だった。直談判した恋人は将軍に斬り殺され、首は河原に晒された。朝靄の中、舞姫は歌いながら首を胸に抱き、自らの首をも掻き切って果てた。
写真提供:空乃千尋さん




