『「全部俺が受け止めてやるから。安心しなって」』他
お題をくださった皆さま、ありがとうございます。
・「全部俺が受け止めてやるから。安心しなって」から妄想する
血塗れの手で茫然としている私。空き巣と出くわして無我夢中で包丁を振り回した。まさか相手に当たるだなんて思いもせず。空き巣はもう動かない。うちに来て、現場に出くわした幼馴染が言った。「全部俺が受け止めてやるから。安心しなって」恐ろしくも頼もしい、そんな彼の顔を初めて見た。
・あっぱれを使い文章を書く
ものの見事に扇の的を射ぬいた那須与一は味方から「あっぱれ」と褒め称えられた。しかしその腕前に敬意を表して舞を披露した平家方の老人は矢で殺されてしまった。与一は英雄にはなったが、この顛末に、僅かな影を引き摺らずにはいられなかった。
・ミニトマトを栽培するを使い文章を書く
ねえ、憶えてる、お母さん。私がミニトマトを栽培してたあの夏の日。狂ったように蝉が鳴いていた。お母さんはミニトマトの実をぷちんととると、そのまま口に運んでしまった。お母さんの手はミニトマトみたいに赤くて。お父さんの不倫相手を手にかけたあとの貴方は、恐ろしくて綺麗だった。
薄く繊細なひだを幾重にも纏う姫君は国の宝。貴婦人の中の貴婦人。高貴の中の高貴。光輝。国が戦に敗れた時、敵国の王は姫の身柄を要求した。国民たちは固唾を呑んで成り行きを見守った。気高い姫は高い塔から身を投げた。余りに美しい花の最期は、国民たちの、望んだ通りに。
ゆすらうめが香る頃。
きっとまた逢いましょう。
その約束は今も胸に。大切に仕舞ってあります。
生きるに困難な時代でした。
戦火が終わりを告げた時。
貴方の生死すら定かではありませんでした。
ゆすらうめが香る頃。
私は今でも貴方を待っています。そして春を数えます。
きっとまた逢いましょう。
全ての物の影が息を潜めているようでその実、饒舌な夜。一人の悪魔が僕の前に現れた。お前の望みを叶えよう。お前の魂と引き換えに。僕はつい笑うところだった。僕の魂なんかで叶う望みがあるというなら、世界はもっと平和だろうに。白黒のモザイク。赤い花びら。彼女を助けて、メフィストフェレス。
写真提供:空乃千尋さん
画像写真:九藤




