『メロンパン』他
お題をくださった皆さま、ありがとうございます。
・メロンパンで文章を書く
メロンパンの、外はカリカリ、中はふんわり甘い食感が好きだ。牛乳と一緒に食べると最高。今日のお昼もメロンパンを食べていたら、同じクラスの高橋君から言われた。「ほんと、幸せそうに食うよな」「だって幸せだもん。メロンパン、大好き」何よ、その目つき。あと、メロンパンを睨むのやめなさい?
・イイネの言い値で文章を書く
試着室から出てくる彼女を見るたびに、僕は「イイネ」と壊れたロボットのように繰り返す。満足そうにカーテンの向こうに消える彼女。こんな空虚な賞賛で満足できるのだろうか。イイネの言い値は一体どのくらいになるんだろう。彼女に溜まったツケを払ってもらうには、キス一つでは足りやしないな。
・桜並木で文章を書く
桜並木の道を、祖母の車椅子を押しながら、ゆっくり、ゆっくり歩く。桜はもう満開で、私にも祖母にもそのひとひらが舞い遊び降り注ぐ。ねえ、おばあちゃん。来年もまた一緒に桜を見ようね。祖母に心の中だけで呼びかける。祖母はそれが聴こえたかのように振り向き、にこりと笑う。桜、きっと来年も。
真緑のさらさら竹の葉擦れは耳に優しい。
目に沁みる青い色。若い色。さらさらと。
いつまでも弛まずにいられるものではない。
天地が荒れ狂う時もある。
稲光に照らされ雨に降られ。
それでもさらさら。
変わらずにいられる。
その秘訣を教えて。
折れない人になりたい。
神さびた枯れ木の味わいにふと振り返るものがある。
重ねてきた幾年月の時間を。
幼く荒っぽい棘のある若木の頃。今のように静かに風に吹かれる日が来ようとは思わなかった。
夢は叶えられたものも破れたものもある。
淡い陰影をぼうと眺めれば全て一瞬だった気がする。
夢も幻もあわいの内に。
何やらゆかしく思えたので。
照れたように笑った貴方が差し出した一輪の花。
私は可哀そうと口では言いつつ内心嬉しく、いそいそと花瓶にそれを活けた。花を見る貴方の目の愛おしさに嫉妬して、活けてやるのではなかったわなどと思ったりした。
だから突然、貴方に手を握られた時は、とても驚いたの。
しんしんと音もなく降り積む雪は仄かに香る。 雪の夜。粉雪こんこん。息白く。 頬は林檎の紅い色。
夢を見たの。
どんな?
花が咲く夢
素敵ね。
ね、来るわよね。
ええ、きっと来るわよ。
しんしんと音もなく雪は降る。
ただ微かに春の気配を感じさせながら。
写真提供:空乃千尋さん
画像写真:九藤




