『新しい靴』他
お題をくださった皆さま、ありがとうございます。
・新しい靴で文章を書く
亡くなった祖母はお洒落でセンスが良かった。生前、よく言っていた。良い靴を履きなさい。靴でお洒落の全てが決まるから。良い靴は貴方を良いところに連れて行ってくれるから。私は新しい靴を買う時にはこの言葉を思い出し、よく吟味する。どうかしらおばあちゃん。この靴は、私を幸運に導いてくれる?
・路地裏の猫で文章を書く
荒んだ心でいると目つきまでそうなるらしい。俺と目を合わせた少女は明らかに怯えた顔で、逃げるように立ち去って行った。性質の悪い路地裏の猫みたいに見えたんだろう。路地裏の猫でも、太陽や月に焦がれる事があると、彼女は知るだろうか?痛み苦しみ喜び、涙する日もあるなどと言う事は?
・桜舞い散るで文章を書く
花は物を語らない。その事に救われる時がある。桜舞い散る中、私は涙を散らしていた。逝ってしまったあの人は、もう二度と戻らない。二度と逢えない顔、聴けない声、触れない手。そのどれもが恋しくて仕方がない。どうして先に逝ってしまったの。私は声を押し殺して、雫のひとひらを落とし続けた。
暗い物陰に隠れてた、私を見つけ出してくれた貴方。醜いと自嘲する私を詰り、君は気高くて美しいと言った。 その言葉と声が私の胸を貫いた。 そこらに落ちてる紛い物とは違う、宝石みたいな言葉。私を明るい所に導いてくれた。 ありがとう。 私が今、胸を張っていられるのは貴方のお蔭。
清けさが降るさやさやと。光の小さな粉がこぼれて、ほら手のひらに落ちてくる。
淡くて、一つ一つはよく目を凝らさないと見えない。けれどある。
そこにある。
竹の葉擦れは優しく歌う。
さやさやさらさらさわさわ。
吹かれて流れてどこまで行くか。どこまでも行こうか。
ほら、空は青いから。
貴女は美しい年上の人。紫色がよく似合う。微笑はそれだけで媚薬となって、僕の心を蕩かせる。いつでも毅然と顔を上げて気高く振舞うその陰で、涙する日があることも知ってる。貴女は涙さえ美しくて、それを見る贅沢を僕に与えてくれた。僕の血の最後の一滴まで、僕は貴女に捧げよう。
青い海が身を揺すると、珊瑚や真珠、海の宝石たちも揺れる。
なぜ、海は揺れるのか。涙が一粒、落ちたから。
たくさんの涙が集まって出来た海は、今日もまた、広い広い身を揺する。
悲しみは絶える日がない。
笑みもまた、そうであるように。
やわらかにしめやかに香る花。
傷つけない。
ただそこにあるだけ。
それだけで空気を染める。豊かに。
光輝というほどのものでもなく、ただ彩る。
痛みや悲しみを吸い取って宙に解き放つ。
そのために生まれてきたのだろうか。
わからないけれど救われる。
ありがとう。
ただそこにいてくれて。
写真提供:空乃千尋さん
ビーズ細工・画像写真:九藤




