『砂鉄』他
お題をくださった皆さま、ありがとうございます。
・砂鉄を使い文章を書く
何憶何万と数えきれない砂の中、光る砂鉄があるように、数えきれない人の中、光り輝く人がいる。ほんのちっぽけな存在でも。ほら、磁石に引かれるように、集い合う砂鉄たち。君も貴方も砂鉄かもしれない。まだ砂鉄でなくたって、これからそうなるのかもしれない。忘れないで。ささやか光の粒を。
・ラブリーを使い文章を書く
あたしの従妹はいつもミニスカ。白い素足をすらりと出して、艶のある唇に笑みを乗せて。鼻歌を歌うようにいつも楽しげ。ラブリーな彼女は、どこかもたつくあたしとは似ても似つかない。また彼氏と別れた。そう言って泣きつく所もラブリーで。ああ、あたし、この子を愛してるんだわと思うの。
・ヒマワリとダムで文章を書く
あの湖の底に村がある。そう老女は言った。田舎のバス停。古ぼけたベンチに隣り合わせた人。湖とはダムのことだろう。過疎の村がダムに沈む。よくある話だ。夏になれば向日葵が、家の前にこうべを高くして咲いていたのよ。そう言う時の老女は、自身がどこか誇らしくこうべを上げていた。バスが来る。
滔々と流れる水の面。
映る顔は揺れて揺れて。
何が悲しいの。
何が辛いの。
何が苦しいの。
掬い上げて掴み取る、心。
ねえ朝日が昇るの。
貴方はそれを映すの。
ねえ朝日が昇るの。
貴方はそれを浴びるの。
美しいということを貴方だけが知らない貴方へ。
醜さに打ち震えて泣く清い貴方へ。
銀紗さやさやと風に舞う。私のあの人はどこに行ったのだろう。麗らかな陽射しが少し物悲しくて。あの人がいないのが寂しい。銀と白の、相まったような波が立つ。透き通った穂の先。宿るものは何だろう。私とあの人の心の在り様が、こんな風であるといい。
風に揺れて。
その先で微睡んでいる。
人と人との縁は絡まり合った蔦紋様。緑なす恵みの縁であれ。幸いを呼び込み、ふと微笑む春風のように。頬を撫でてゆく。温かな光がそこに残る。連ねて連ねて繋がって。その果てに、ほら、花の色。赤ん坊の声。力強い響き。柔らかいもみじの手。握る力の愛おしさ。眼が澄んで、何を見てるの?愛しい君。
写真提供:空乃千尋さん
画像写真:九藤




