『朝起きたら虫になってた女の子の話……』他
お題をくださった皆さま、ありがとうございます。
・朝起きたら虫になってた女の子の話……
爽やかな春風が窓硝子を叩く。伸びをしようとして私は手足がないことに気付いた。寝返りを打とうとしたら長い肢体がのたうつ。そうか。私は青虫になったのか。何だか妙に納得する。青虫ならば蛹となり、やがては羽化するのだろう。青空を舞うのだろう。何だかわくわくしてきた。
・エビに支配された世界で戦争が起きて、大量のエビフライができるお話。
この世は赤に染まった。見渡す限りの海老の群れ。初め、平和に日常を営んでいた彼らは、やがて些細な事で争い、それは世界規模の戦争にまで発展した。積み重なる海老の死体。大量の油が用意され、その死体は揚げられた。こんがり香ばしいそれらを食べるのは、争いを只、傍観していただけの人間達。
・九藤 朋さんは、「早朝(または朝)のベッド」で登場人物が「寄り添う」、「傷」という単語を使ったお話を考えて下さい。
早朝のベッドの上。微睡の時。誰かと寄り添う幸福と安らぎ。何にも代え難い温もりが、過去の傷を緩やかに溶かしていく。貴方に逢えた喜びに、泣きたい時がある。それはふとした瞬間。鍋の蓋を取る時。洗濯物を干す時。貴方を出迎える時。一緒にご飯を食べて眠り、そしてこんな風に目覚めた時。
雪融けて草木の繁れる春が来る。若草、若葉、若木、春には「若い」という文字が似合う。少し背伸びして見る、白雪の向こう。暖かな陽が射し、新しい季節の到来を知る。ふくよかな笑みが広がり、手を繋ぎ合う。貴方の大切さを知る。笑み交わす幸福。また共に冬を越せたねと言って温もりを伝え合う。
清らなる透明の底。住まう主のあり。齢は百をとうに超え、世の趨勢を眼に宿す。深淵なる心、時に波打ち、また静まる。その繰り返し。住まう透明の漣と等しき程に同化して、神霊の一となる。姿見れば静かに拝せよ。礼を尽しひたむきな心持て。平穏を愛する彼の君の心乱すな。
冬の雪を裸足で歩むように、貴女の経てきた道のりは厳しい。その厳しさを糧として人にそよがせる風の温もり。雪崩のように降る辛苦。越えようとする翼。蕾がやがて綻び花を咲かせるように、貴女の幸いが開く日を信じて祈る。淡い赤、濃い紅が貴女を取り巻き彩るだろう。それはきっと近い未来。
写真提供・空乃千尋さん
挿絵写真・九藤 この花の絵と言葉をA・Mさんに捧げます。




