『霜柱の迷宮』他
・霜柱の迷宮という言葉を使い文章を書く。
今年一番の寒波到来の日。出勤する途中、霜柱をたくさん見た。踏みしだくとジャリリと音を立てる。白い息を吐きながらバス停に並ぶ人の列。私たちはまるで社会という迷宮に彷徨う幼子のよう。見て、疲弊した彼らの顔を。私達の顔を。こんなに寒い日に身を外気に晒し。迷宮の出口は、誰も知らない。
・九藤 朋さんに課す、今日のお題は…… 『暴力』 『海』 『青』
非暴力不服従。さるインドの高潔な人が言った言葉だ。言うに易く行うに難い。そんな言葉の最たる物の一つだろう。広い海原を見はるかす。煙草が甘くて苦い。紫煙が青を揺らめかす。蜃気楼のように。美しいお伽噺は海底に眠る。今を生きる人間には泥濘が似合う。牙と爪を研ぎ荒ぶる社会を生き抜くのだ。
・九藤 朋は『池』と『冒険』を使って140字SSを書きましょう!
凍れる池の水面を渡るように。全身の力を抜いて、神経を研ぎ澄ませて。そうでなければ生きていけない世界。ゲームの冒険のようにやり直しは利かない。生も死も一度きり。さあ、テーブルクロスを広げましょう?今日は好い天気。紅茶にクッキー、スコーンもあるわ。時には世の憂いを忘れて、息抜きを。
今はまだ眠る。上は凍える風。冷たく薄い氷が張りつめ、私たちの背を丸めさせる。今はまだ眠る。土の底の底。夢見て微睡む命たちがある。羊水のように未来を背負う。いずれ萌え出づる春が、そこから芽吹き、緑を高らかに歌う。春が凱旋する。長い夜。暗い土の下。今はまだ眠る。春遠からじ。
栗色の巻き毛の少年は、蠱惑的な瞳と唇で私を惑わせる。ほら、おいでよと手招きして私を誘うが、一向に追いつく事ができない。あの細く白い脚のどこに、そんな力があるのか。私は必死に追い縋る。やがて森の開けた所に出る。そこには紫のパンジーが咲いていた。ああ、春だったのだ、あの少年は。
幾枚の鱗を数え幾つもの夜を過ごす。鱗粉を撒きながら、逢える日を思う。逢えない時間が熱を高める。共に飛翔する身なれど、互いを隔てる垣根は高い。蒼天を舞えよ、永久に愛を歌えよ、謳えよ。淡い光が二人を照らす。彼らは誓う。青と赤。病める時も健やかなる時も慈しみ敬うことを。
写真提供・空乃千尋さん
挿絵写真・九藤




