『死化粧』他
多数の方が出してくださったお題を使わせていただきました。
ありがとうございます。
・死化粧という言葉を使い文章を書く。
人の遺体は物語みたいに綺麗じゃない。死んだ後、筋肉が緩み、僅かに排泄する事なんか余り知られていない。私達の仕事はそうした身体を清めて、見目良く整える事。それは亡くなった人の為であり、遺された人の為でもある。顔には色よい死化粧を施す。生前と変わらぬ姿で、魂があちらに逝けますように。
・ライフル銃という言葉を使い文章を書く。
ライフル銃で人を殺した事があるか?たんたん、てリズミカルに音が鳴る。音が鳴れば人が転がる。玩具みたいに。あのほっそりしたフォルムから命を奪う玉が飛び出すんだ。男を惑わす毒婦みたいじゃないか?俺はもう長い事、毒婦の虜さ。片時も手放せないね。俺が死ぬ時も傍らにはこいつがいるんだろう。
・手紙という言葉を使い文章を書く
春にこの手紙を渡せと言われたの。冬からよ。もう随分、長いこと、春に逢えていないからって。可哀そうに、冬ったら、すっかりしょげちゃって。ね。読んでみるだけでも読んでみてやって。貴方が来ないと皆、困るの。白いひとひらの代わりに、花のひとひらを降らせてちょうだい。待っているわ。
・モトコンポ(小型バイク)という言葉を使い文章を書く。
君ってまるでモトコンポみたい。そう言ってあいつはけらけら笑った。だってさ、女の子みたいな顔して病弱で。坂道上がるのだって息切れするだろ?俺の周りでそんな奴、君くらいだぜ。あいつはふとそこで言葉を切り、黙った。急な沈黙。不意の静寂。だから俺は、とあいつは言った。
・「どうして人間は解り合えないのだろう」の一文を使い、文章を書く。
汚される川。埋められる海。広がる砂漠。伐られる森林。人心は荒み、今日も戦禍の音がこだまする。どうして人間は解り合えないのだろう。只、隣の人と手を繋ぐだけで良い。その連なりはやがて円環を為し、平和の恩寵を得るだろう。最も簡単で、最も困難な事。




