表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/33

『昼の川縁』他

・九藤 朋さんは、「昼の川縁」で登場人物が「嫉妬する」、「理性」という単語を使ったお話を考えて下さい。


その昼、僕らは川縁に立ち、黙って水面を見つめていた。水面には彼女と僕の顔が映る。僕は彼女の顔の隣に、もう一人別の男の顔を浮かべ、勝手に嫉妬していた。理性ではばかげていると解っていても、仲を勘繰らずにはいられない。哀れな道化の僕の、水面に映る顔が、彼女の顔で塞がれた。唇に甘い余韻。


・九藤 朋は『魚』と『暁』を使って140字SSを書きましょう!


さあ急いで。時は暁。私達人魚の旅立ちの日。南方の海から北方の海へ移動するのだ。晴れやかに門出を祝えよ。祝い言祝ぎ歌えよ。金色の極小の泡の一粒一粒が私達の髪を飾り立て、珊瑚の枝々が光り輝き、他の魚たちが眼下を旋回する。陸で出逢った恋人よ、さようなら。私を忘れて、いいえ、忘れないで。


・九藤 朋は『電話に出て』を最初に使ってSSを書いてください。


「電話に出て」そう念じながら私はスマホを握る。これが最後の命綱。廃屋となった工場の一室。震えながら隠れている。金属バットの先が地面を擦る音が聴こえる。私の頭を殴打する為のバット。早く救けを呼ばなくては。けれどスマホから聞こえるのは虚しい呼び出し音だけ。やがて部屋のドアが開いた。


・『香水』をお題にして140文字SSを書いてください。


「香水はつけないんやなかったん?」彼が尋ねる。私はうなじの後れ毛を押さえながら曖昧に微笑む。「せやけど、ええ香りやったし」「香とかのほうがええんちゃうか」「この匂いが気に入ったんや」彼にしなだれかかる。この香水は特別。女性に嫉妬心を掻き立てる。彼の奥さんに、密やかな意趣返しや。


・貴方は間宮小路 華夜理で『物仕掛けと色仕掛け』をお題にして140文字SSを書いてください。


華夜理は困惑した。なぜだか晶が怒っている。滅多に怒らない従兄弟のしかめっ面はそれはそれで貴重だが。物仕掛けで笑う彼ではない。その時、晶がふっと吐息に似た微笑を零した。「許して欲しければ、色仕掛けという手もあるんだよ?」華夜理には意味が解らない。やがて着物の襟元に晶の手が伸びても。


                 『礼装の小箱』より間宮小路華夜理、出演



・九藤 朋は『隠れ家』と『途中』を使って140字SSを書きましょう!


小川のせせらぎと、小鳥の囀りが聴こえる。僕と君の秘密の隠れ家。近くには野苺が季節になるとまるでルビーのようにさんざめく。まさにこの世の楽園だ。僕と君は寄り添い合い、一つのベッドで眠る。互いを求め合う夜を、もう幾夜過ごしただろう。その楽園は猟銃を持った妻が隠れ家に現れた時に崩れた。


・九藤 朋さんは、「夕方の川縁」で登場人物が「わかれる」、「飴」という単語を使ったお話を考えて下さい。


茜色のセロファンが閃くような川面。そんな景色を眺めながら夕方の川縁で、私たちはわかれるのだ。私はここ数日風邪気味で、喉飴を舐めていた。舐めながら流れる涙を止める方法を必死に考えていた。この川で、いっそ溺れてしまいたい。私は彼の唇に自分のそれを寄せると、口移しに甘露を与えた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ