最終話 『本当に』
数ヶ月、一週間投稿という遅いペースの投稿でしたが、ここまで読んでくださった皆様、ありがとうございました!
天からは突然、雲に穴が空いたかのように一本の光の筋が差してきた。サンは倒したから、日光が差すわけが無いのに、何故光が刺してくる?
木曜日の主が俺の焼かれた腕を治療してくれていた。そんな中、突然、光の筋を通ってくるように男が降りてきた。
皆が困惑して、何かある訳でもないのに、周りを見渡していた。そんな時、男はこちらが困惑しているのを気づいたのか、口を開いた。
〖僕はこの世界の次なる主です。〗
近くで声が聞こえてくるのに、どこか遠くで聞こえるような奇妙な声の聞こえ方だった。その男は気遣いなどなしに、こちらのことを気にせず話し始めた。
〖今世界は曜日ごとに七つに分かれています。そしてここは日曜日の世界。そしてこの世界は貴方がたの世界に悪い影響を及ぼしています。〗
この世界、というかまぁサンのせいではあるだろう。そこまでは俺達も知っている。何を話すのか、皆の間に緊張が走った。すると、男はまた口を開いた。
〖そこで、この日曜日の世界だけを周りの世界から切り離します。〗
主たちの中で困惑でザワッという声が上がる。切り離す、そんな簡単に言ってのけたが、そんなことが可能なのか。
〖これ以上放置する時間はありません。今すぐに切り離させていただきます。〗
皆が困惑に包まれる中、突然この日曜日の世界全体が【ゴオオオオォン!!!】という揺れるような爆音を鳴り響かせた。途端、黒い絵の具をこぼしたかのように視界は黒に染まっていった。そしてそのまま俺は意識を失っていた。
目を開くと目の前にはキル家全員がかがみこんでこちらを覗き込んでいた。
「アストラーッ!!サンを倒したんだな!!」
パニック兄ちゃんが泣きながら抱きついてきた。いきなりでびっくりしたが、それよりも驚いたことがあった。何故サンの事を知ってるんだ?サンの存在は知っていても、何故倒したことを……
俺のその気持ちに気がついたのか、隼さんをおんぶしているランドさんが口を開いた。
「俺たち死ぬ前の走馬灯っていうか、なんて言うか。夢みたいな感じでサンとアストラ君が戦ってるの見てたんだよね。」
なんだと!?そう聞くとだんだん恥ずかしくなってきた。それでも……
「ようやく終わったのかぁ……」
これでようやく全てが終わったのだ。世界に平和が訪れた。……だが、まだこれでは終わらない。まだ全てが終わったわけではない。
数ヶ月後、キル家、隼組、『怪物達』……全員が集まって、ガストロ達の墓の前で手を合わせていた。華やかな飾り付けがされた墓は彩りと共に哀しさを感じさせた。
目を開いたマインが同時に口も開いた。
「お前らありがとうな。もう……俺たちの事を気にしなくてもいい……」
マインは突き放すように言った。「恩知らず」、単純にそう思ったパワーが立ち上がって近寄ろうとしたが、隼が手で遮って動きを止めた。
「分かった。みんな、もう帰るぞ。」
皆少しの不満を持ちつつもその場を立ち去ろうとした。だが、初めに帰る提案をした隼がその場に立ったままだった。そして少しだけ言った。
「いつでも来いよ。」
ニヤッと笑みを浮かべて隼はその場から立ち去った。これで終わり……いや、まだあるのだ!!!!
俺は誰も連れず一人で家の地下に下がっていった。だんだん暗くなっていく。階段を降りきると、扉が立ち塞がるようにあった。見慣れた景色。その扉を開くと、眩しい光が漏れてきた。家の地下なので何度もここに来てはいるが、毎回目が痛くなるのは変わらない。
父さんがいつも夜にキルデビルの研究をしていた部屋。その部屋の扉を開く……瞬間、バァッンッ!!という音と共に中から二人の男?生物?が飛び出してきた。
「うぎゃあああっ!!!!」
そう、中から飛び出したのはデンジャ兄ちゃんと【Y】。デンジャ兄ちゃんは、裏切った罰という事も含めて、Yを預かっているのだ。
「ふぃ〜……痛た……ん、アストラ?」
少年のような笑みでこちらを見てくる。いや、決戦の前まで俺の事殺そうとしてたよな?
「あぁ……隼組の研究で一年以内にはYを人間に戻せるって……」
デンジャ兄ちゃんの下敷きになりながら、そう言う。すると、Yと一緒にデンジャ兄ちゃんは「うおおぉ!」と無邪気な声を上げて喜んでいた。すっかりデンジャ兄ちゃんはYと仲良くなったらしい。
「じゃあ。」
特に用事もなかったのでそう言って外に出た。
これで本当の本当に平和が訪れた。だが、そうなるとすることもなくなった。
なので行くあてもなく、川沿いの橋を歩いていた。よく、父さんと散歩に来ていたところだ。父さんはアイナの事件と共にどこかへ失踪してしまった。ライルに殺されたのか、キルデビルに殺されたのか、何も知らないが、多分もう二度と会うことは無いだろう。
でも、下を向くことは無い。後ろを振り返るのは時に大切だ。でも、下を向いていても何も変わらない。今は前を向こう。
そう思っていた時、突然後ろから誰かに抱きつかれた。敵っ!?本能的に暴れそうになったが、声を聞いて誰か分かった。
「わぁっ!」
「デンジャ兄ちゃん!?なんで出てきてるの!?」
あの地下室から出てきてはいけないと散々デルム兄ちゃんに釘を打たれていたのに、勝手に出てきていた。なんで魔法とかで閉じ込めなかったんだろう。
「Yは置いてきた。今頃部屋で寝てるよ。」
「まぁ……いいけど。ブラック兄ちゃんに見つかったら殺されるよ?」
ブラック兄ちゃんは裏切り者を許さないというスタンスでいるので、デンジャ兄ちゃんとは仲が悪い。というか元々ニャン太兄ちゃんはアイナのためを思っていたので、多少は許したそうだ。
「う……まぁまぁ、バレなければ大丈夫だよ!」
そう言うと横にきて、黄昏れるように川を眺めた。
「もう裏切らないのか?」
「裏切らないよ。」
「……本当に?」
「本当に。」
『崩壊を止めた15人の勇者たち』 完
本当にここまでご愛読ありがとうございました!最終回になっても、まだ締め方が変だったり、多分作品全体でも矛盾点が多い作品だったと思いますが、ここまで続けられて本当に良かったです!
この作品はこれで終わってしまいますが、まだ次回作も制作中ですので、是非そちらもよろしくお願いします!




