表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/21

Episode4:起

4話です。



 結局時間いっぱいまで楽しんだ。

 家では歌うこともないから、久々にストレスを一気に解放できた気がした。


「……えーと、支払いは」

「『A-s 電子決済』でお願いします」

「え?」

「これを使えば、色々とお得になります。あと、今私はかなり残高を予め取得した状態ですので、基本お金はこちらからお願いします」

「あー……そういえば書いてあったね」


 生活サポートのために、特別な決済サービスを使えるとかなんとか。

 でも、残高の話はなかったような……。


「これで支払いはおっけーです。ささ、行きましょう!」

「あ……ああ」

 結局、私は(めい)に流されるままカラオケ店を後にしたのだった。




***




『次のニュースです。昨夜K市の路上で、女性が刺される事件が発生しました。犯人は未だ捕まっていません。遺体には鋭利な刃物の跡のようなものが残されておましたが、現場に刃物は残されておらず──』


「怖いなー」

 朝起きてテレビをつけたら、いきなり殺人未遂事件のニュースが流れてきた。なんというか、朝ごはんを食べている時に見るニュースではない。自分が住んでいるK市ということもあって、漠然とした不安にも襲われる。


「………?」

 突然、私は少し胸を押さえた。

 自分でも何故なのかは分からなかったが、少し胸が締め付けられるような感覚があったのである。


「箱庭さん、どうかなさいましたか?」

「あ、何でもない。犯人が捕まっていないから、一応気をつけようね」

「そうですね。何かあったら、私も戦えますよ!」

「いや……戦わないで逃げようね……」


 (めい)はロボットの体を持つからなのか、結構物騒なことをさらっと言う。もしかしたら物凄く強いのかもしれないけど、殺人鬼相手にわざわざ戦いにいく必要はない。


「……それにしても、この画像……この道路って、多分うちから駅までの道中だな」

「そうですね。ここから南へ徒歩6分ほどの場所です。地図をお出ししましょうか?」

「いや……大丈夫だ。気をつけることには変わりないからね」


 かなり物騒なニュースを見てしまったが、今日やろうと思っていたことはやろうと思う。


「まぁ、予定通り、今日はショッピングモールに行こうか」

「はい!」


 K市の駅から15分ほどの場所に、ショッピングモールがある。面積は非常に大きく、周辺の街からも休日には人が集まってくる。

 昨日の夜、命が行きたいと言ったので今日はそこに行くことになった。彼女は本当に感情があるかのように話すので面白い。


 私たちは食事を終えると、皿を片付けて外出の準備を始めた。

 私も命も自分の部屋に10分ほど篭った。


「……あれ」

 私は自分の部屋で服を着替えていると、ふとズボンに巻いたベルトが少し緩んだような気がして、慌ててきつく締めなおした。


「さてと……」

 私は部屋に置いてあった手帳を手に取った。毎年町の本屋で同じシリーズのものを買っているため、書くのも確認するのも慣れたものだ。

 私はパラパラとページをめくり、今月のページを開く。

「……よし、今日くらいに送れば、多分ちょうど届くな」




***




「……!」

 とことこと歩いていくと、我らK市が誇るショッピングモールが見えてきた。

 それを見て、(めい)が目を輝かせている。何度も言うようだが、その表情は本当に人間みたいだ。


「箱庭さん!私、ショッピングモール()初めて来ました!」

 (めい)がそんなことを言い出して、少し興味深いと思った。


(……そもそもほとんどの施設には行ってないはずなのに)

 というのも、精神科AIは基本的に毎回1人1つ用意されていて再利用されることはないらしい。つまり私が起動させたときからしかデータはないはずだ。

 しかし、命はまるで外を出歩いていた頃があるかのような話し方をする。その姿は私には少しおかしくも見えた。


「色々回っても良いですか!」

「ゆっくり回ろう。せっかくだからね」


 無邪気にはしゃぐ(めい)は、なんというか子供のようだった。

 (めい)を見ていると、まるで自分が子供を連れた親かのように思える。実際は子どもどころか結婚もしていないというのに。


 私たちはショッピングモールの1階の北口から入場すると、そのまま真っ直ぐ南口へと歩くことにした。2階へと至るエスカレーターは北口と南口付近それぞれに設置されている。


 北口の端には、レストラン街があった。

 (めい)は目をキラキラとさせている。AIロボットは食べ物を食べる必要はなく、充電するだけで問題ないと説明書に書いてあったのだが、何故か(めい)は美味しそうに食事をするのでこちらも何か食べさせたくなる。


箱庭(はこにわ)さん!こっちも入って良いですか?」

「あ、良いよ」


 命に連れられて、私は衣服店に入る。安価ブランドが多く置いてある店だ。私もよく利用している。


「箱庭さん!これとかどうですか!」

「え?……あ、良いんじゃないかな」


 命は私にスカートのようなものを見せる。命が楽しんでいるので私は特に突っ込まなかったが、私は女性物の服は全く分からない。

 結局、命は衣服数点を購入した。私の家には大した服がないため、気になったのだろうか。


 そして、私たちはそのまま南口へと一気に抜けていく。


「……」

 私は不思議と心が落ち着くような気がした。

 心が少しだけ、外部の刺激を求めるようになっていく。

 眩しい照明の光が、体を刺すものから、体を照らすものへと変わっていく感覚を覚えた。

お読みいただきありがとうございます。良ければブックマークなど、是非。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ