6.はてはてどうしたものやら
住んでたアパートが燃えた。
燃えた・・燃えるって何だろう。
アパートの周りには、警察と消防隊がいた。
俺も住んでいた住人として事情聴取をされた、朝から出かけていたからわからないと伝えるとすぐに解放された。
大家さんから聞いた話だとまだ原因すらわからないらしい。
幸い大事な物は持ってきていた為大丈夫だったが、焼け跡には入れず俺の私物も焼け跡からはみつからなかったらしい。
どうやらほんとに全焼してしまったらしい。
他に住んでいた人は、実家に帰れる人は帰って、帰れない人は大家さんがホテルをとってくれたらしい。
もちろん実家気近い俺は、帰らなくてはならない。
どうしようこのままだと地元の男子高校に転校しなくてはならない。
「終わった・・・」
「ドンドンドン♪トンキートンキーホーテー♪」
自分の携帯の着信が鳴る。着信先は・・・
「社長!!?」
こんな時になんだろうやっぱり気分が変わってクビとかだったらどうしよう。
取り合えず恐る恐る出てみた。
「あ、つながった・・・もしもし?」
「・・・・」
あのいかつい社長かと思えば女性の声だった。少しフリーズしてしまった。
つまり・・・そう言う事だ。
「はい、もしもし…さやかさん?」
「あのね急に電話してごめんね、
まだフレンド申請こないし
明日からのことでちょっと話したいことも
あって・・
何かあった?サイレンの音するけど」
「実は……
借りてるアパートに帰ったら燃えてて
跡形もなくなっててクビを回避したのに
実家にかえらなきゃいけなくなって・・・」
「・・・・・」
少しの沈黙の後少し息をのむ音がしたと思ったら角田は言った。
「ならあたし家来なさいよ
あたしもね実は3か月前に大阪から
引っ越してきたのよ、東京の今の高校に通う為に
無駄に広いお父さんの家に」
「無駄に広いし部屋も余ってるし、
パートナーなら近くにいた方が何かと
便利だからね。とりあえず迎えに行くわね
荷物まとめてそこで待ってなさい」
「ティロン・・・」
そうして俺の携帯は静まった。
「え?は?え?・・・え?」
えーと、
今日から女の子の家に同棲生活……?
とりあえず状況がつかめなかった。
アパートは燃えるし、角田さんから電話かかってきて一緒に住まないかなんて言ってくるし。
あーーとりあえずどうでもいいか。
風が気持ちーそして夕日がきれい。
美しい景色を見ると嫌なことなんてすぐに・・・
真っ赤に燃えた遮るがごとく俺の目の前に黒光りした長い車が止まった。
そして車の扉が開き、再び彼女は俺の前に現れた。
さっきと変わらず美しい赤い着物を身につけた彼女が。
「おーい、大山君~大丈夫ー?
またぼーっとしてるけど
あーこりゃーまるこげだねーこりゃーひどいねー」
「あーうん、とりあえず切り替えていこう!ほらリセマラで押しキャラだけが絶対でないみたいなこともあるしね、ゲームでも現実でも切り替えが大事よ」
着物姿でガッツポーズてきな動きをしながらうんうんしてる彼女はなんだか可愛かった。
「ほらほらのってのって」
開いた口が塞がらないとは、まさにこういうことを言うのだろうと実感した。
そして運転手は若頭・・らしき人だ。
若頭だとなんだか怖いのでこんどからザコAと心の中で名付けた。
「家に戻るわよ、だして」
「へい、お嬢」
「お嬢はやめてって言ってるでしょ!もう」
そう彼女が言うと、車は進み出した。
アパートは完全に燃えてしまったので、持ち物はテグニスが入ったこのバックのみ、今更だが明日からの学校の制服もない。
「あ・・あの・・」
「なに?家はもうすぐよ、すぐつくわ」
ほんとにすぐついた。ついた家は家というか
「城?てか門?」
戦国時代のお城の門みたいなところについた。
どうやら会社の中と同じく家も和風らしい。
門は自動で開いた。ここは現代っぽいな。
「ここまででいいわ、母屋までは歩いて行くから」
「 今日はもうでないと思うから車は車庫にもどしと来なさい。」
「大山君そういうことだから降りていくわよ」
言われるがままに行動し、とりあえず彼女についていく。本当に今日は色々あった。
そんな今日も前を歩く美しい着物姿の彼女を見ると何もかも忘れられそうだった。
やはり可愛いが正義である。
そして、着物だと歩いているときにほんのり映る下着のラインは素晴らしい。
こうして玄関から連れて行かれた2階の部屋には、ぽつりと机と椅子が1つずつおいてあるだけの質素な部屋だった。西側には大きな窓がついていて部屋も結構広い。
「とりあえず今日からこの部屋つかって、ちょと着替えてくるから話はそれからね」
そう言って彼女は部屋から出て行った。ぽつんと部屋に残された俺はとりあえず西側の窓を開けた。
梅雨まっただなかだけど晴れた空からはちょっとだけ涼しい風が吹いてきた。やはり今日の風は気持ちいいし、夕日も綺麗だ。
どれくらいたっただろうか、10分、30分・・いや俺がぼーっとしていただけでまだ5分もたっていないかもしれない。
「綺麗でしょ、ここからの夕日」
「この部屋はね・・おに・・いや何でもないわ」
「よく私もここで夕日を眺めてるんだ」
「そうなんだ・・ほんとにきれいだね」
そういった彼女は隣にいた。
「それでね、この部屋これから自由に使っていいから私たちと一緒でもいいなら・・・」
「食べよ・・・」
「それと・・」
「あっ・・あの!」
「どうしてこんなにしてくれるんですか!?」
「俺たちまだしっかり話して半日もたってないですよね」
タダで泊まれてご飯まで食べられる生活なんて最高すぎる。まるで詐欺にでもあったかのようだ。
さらに同級生・・可愛い委員長・・。マジ最高。
「それは・・・ね?・・・うーーん」
「いやーせっかくパートナーがきまったのに、はいさようならってのはなんだか嫌じゃない・・」
そういった彼女は着物姿ではなく緩めのTシャツにズボンを履いた彼女は耳元に垂れる黒髪をくるくるしながらすこし小声で言った。
「・・・・・・」
なんだかはずい。
「ご・・ごほん!」
「で?どうするの?実家に帰るってなら止めないけど」
「是非!是非ここで住まわせてください!」
「よろしい!」
「じゃあこれからよろしくね!お・・大山君!」
さやかはそう言いすこしハニカミながら俺のほっぺたをツンとした。