2. これからどうしよう
CTCは、発売30分後にテストプレイヤーによる
性的暴行事件が発生した。
どうやらテストプレイ時に性別は男性だがゲーム内では女性を演じるネカマとして登録したプレイヤーに女性が騙され襲われた。
事件はあまり大きくならなかったが
事件発覚後即座に緊急メンテナンスが入った。
メンテナンス以降、
性別を偽ってのアカウント登録が不可能になった。
俺の家の近くには大型ゲームショップがあり、
誕生日プレゼントとして父、兄、俺と3人で
1週間前から交代で並び当日1番に購入し
家に帰って即始めた。
そして俺、大山 璃音♂(15)は、
ゲーム名「あぶらあげ♀」となった。
そう俺もゲームではネカマの1人だった。
小さい頃にやった〇ケモンとかは、自分の名前を入れて、まるで自分が冒険をしているか感を楽しんだ。
中1の時買って貰ったタブレットに入れた当時流行っていたFPSゲームをやった時、3人称視点で画面に映るガタイのいい男の背中やケツ。
その時突然思ったのだ。
「なぜゲーム内まで男を見なくてはならないのだろう」
それとうちの学校がこのご時世にも珍しい、
男子のみの中高一貫校だったのも原因なのだろう。
女子飢えていたのかもしれない…
これ以降、どんなゲームのキャラクターの性別は女だった。だからこそ感動した。
フルダイブにて初めて女になった時は、胸の膨らみから、柔らかい腰まで、残念ながら、脱衣には限界があるので裸にはなれないが、満足だった。
性別逆転プレイヤーは
緊急メンテナンスがすぐに入ったので
現時点で約100人程しか確認されてないらしい。
困ったのはここからだ。
俺もパーティを組んでマルチに行こうとした。
しかし……パーティを組むには
自分のステータスを見せなくてはならない。
メンテナンス以降
性別逆転プレイヤーは公式からミクシーズと命名され、性別の所にMとはいるようになった。
だからパーティを組むとすぐに
ミクシーズだとバレる。
俺は、恥ずかしかった。
まだ中学生だったということもあるが
それよりもメンテナンス中にさっきの事件を
ツブッターで見た。
事件の投稿コメントには
「これだからネカマは」
「まじネカマ、キモ」
「初めから対策しとけよ運営」
などなど誹謗中傷の嵐だった。
このことから俺は、
ソロプレイヤーになることを決意した。
……そして今に至る。
「このままだとランク戦に出れない」
ランク戦ができないくらいいーじゃないか、
所詮ゲームでしょ?
と普通の人なら思うだろう。
しかし、俺はそうはいかない。
なぜならプロプレイヤーなのだから。
発売から来シーズンで2周年。
ランク戦を初めてから3ヶ月程でソロでも順位が乗るようになった。
CTCは、ランキング報酬現金化制度を採用しており、1000位以内のプレイヤーの賞金は、ゲーム内での5分の1を現金化できるのだ。
1周年を迎えるときには、100位以内に入れるようになり、毎月多めのお小遣いくらいの収入を得られるようになった。
1周年を記念して開催された武器事の大会では優勝もした。
どうやらCTC1周年から世界大会が行われるようになったらしく、世界大会では団体戦、個人戦の二つがあり、個人戦は、ランク戦同様3vs3の1チーム。
団体戦は、
シングル 2
ダブル 1
トリプル 2
の3本先取型。
他のゲームでもプロゲーマーを雇っている
AqoursDolphinという会社から
団体戦のシングル要員としてスカウトされた。
ランク戦のランキング戦100以内をキープと大会への参加を条件に月額20万の給料が出るようになった。
この事から高校は夢の共学への進学を決意し、その時ある制度で有名になった地元から離れた共学の高校へ進学した。
高校は学費以外は、一切の仕送りなしを条件に一人暮らしを許可してもらった。
そして夢の共学生活も始まりもうすぐ夏休みというところに飛び込んできた、来シーズンのアプデ情報。
「まずい、まずい、ランク戦に出れないとクビになる…給料が...一人暮らしが...」
その時スマホに一通のメールが届いた。送信先はacupoints会社からのものだった。
大山 璃音様
重要なお知らせがありますので、
明日6月20日(日)午前10:00
本社の社長室へをお越しください。
テグニスの持参もお願いします。
血の気が引くのを感じた。きっと今俺の顔は真っ青に違いない。止まらない冷や汗をタオルで拭う。
「俺、絶対クビやん...」
それ以降の記憶はない、気がついたら閉めたカーテンから陽の光が漏れ出ていた。