74.コウモリになるとはどのようなことか What a bloody answer!
【タイトル】コウモリになるとはどのようなことか What a bloody answer!
【作者】〆野々青魚-Shimenono Aouo
【掲載サイト】カクヨム
【URL】https://kakuyomu.jp/works/16816927862921861641
RT小説読む企画に応募があった作品。応募をかけたの、もう半年くらい前だなあ。作者さんもそのこと忘れてるのではないだろうか。でも僕は読むからな。
というわけで、読んだ。カクヨム掲載で、現状10万字ほどの未完の作品。児童文庫の新人賞に送るために更新停止中である……というのも過去の話で、なにやら奨励賞なるものを受賞したらしい。すごい。
書籍になるのかどうかはわからないけれど、それだけよくできている作品なのは間違いない。
児童文学らしい要素は確かにある。内気な少女が突然大冒険に巻き込まれる話だ。何が起こっているのかほとんど説明されることなく、どんどん進んでいくのがユニークだ。
タイトルの「コウモリになるとはどのようなことか」は、主観的感覚やクオリアの問題に関わる問いかけ「コウモリであるとはどのようなことか」のパロディであり、作中でもクオリアは重要なキーワードとなっている。
この問いかけを簡潔に説明すると、人間はコウモリの感覚を知る術はなく、コウモリは世界をどのように認識しているのかは全くわからない。分かりようがないという話だ。
しかし、人がコウモリになってしまった。元の問いかけでは、人がコウモリになってもコウモリがコウモリである感覚を知ることは出来ないという趣旨の考え方がなされているが、しかし作中人物はコウモリの感覚を容赦なく叩きつけられることになる。
作中で、コウモリの能力を獲得した少女が、独自の感覚を手に入れて戸惑いながらも活用していく描写が良かった。
視覚とも聴覚とも取れない、かなり独自の感覚を表現しているのがおもしろい。これは文章でこそ活きる表現で面白かった。
それはそうとして、内気で世間との関わりを避けたいと考えている少女が変わらされる物語としても楽しむことができる。
どこまでも内向的で自分を出さないタイプの主人公は、時には話の進行を停滞させたりするものだけど、この物語の場合はその心配はない。周りも話を聞かないし勝手に進んでいくから。主人公の心中お構いなしで、どんどん状況が変わっていく。主人公はそれに戸惑いながら、逃げ惑い、飛び回り、わずかな味方に助けられる。
これは間違いなく冒険譚だ。
それはそれで、何が起こっているのか謎が解決しないため、物語としては不親切な面でもあるのだけど、多くの登場人物の思惑が交錯しながら物語の輪郭がだんだん浮かんでくる構成として見たら、面白いのかもしれない。全体的に、読者にとって不親切な登場人物ばかりなのだけど、でも面白かった。
話はまだまだ途中で、謎ばかりだ。児童文学という大きな舞台に羽ばたこうとしている今作は、完全版はもしかしたら紙の本で見ることになるかもしれないな。




