65.音が紡ぐ二人の憧憬、それは空に散った夢の光景
【タイトル】 音が紡ぐ二人の憧憬、それは空に散った夢の光景
【作者】のーこ
【掲載サイト】カクヨム
【URL】https://kakuyomu.jp/works/16817330661241489056
音楽をテーマにした小説というのは世の中にたくさんあると思う。同じテーマの漫画もたくさんある。いずれも音のでないメディアであり、それが音楽という耳で味わう芸術をどう表現するかの腕を見せつけることに意味がある題材だ。
僕個人は「さよならピアノソナタ」というライトノベルが大好きで、あれの音楽表現にはかなり感心した記憶がある。また読み直してみたいなあ。
本作も、音楽をテーマにした作品だ。音楽でつながる高校生たちの青春物語。音楽に青春をかける作品であると同時に、高校生たちの恋模様を見せるラブコメな要素もある。
かなり爽やかな雰囲気を出しながら、どこか影も感じさせる雰囲気が良かった。キラキラしてるだけが青春じゃないけど、それが良いんだ。
偉大な音楽家である父を早くに亡くした少年が、己の才覚で音楽の世界へと踏み出す物語。相棒は、父とユニットを組んでいたやはり天才が遺した娘、だと思われる少女。偉大な父から受け継いだ才能を武器に、どこまで行くことが出来るか。そんな、音楽を主軸とした青春小説。
主人公コンビの才能は本物で、ライブシーンでは周囲を圧倒する実力を見せつける。その技術を、観客の反応という形で見せつけるやり方をとっている。それができるキャラ、という書かれ方だ。
この辺り、天才の物語とも言えると思う。一方で偉大すぎる父の幻影に囚われてしまっている危うさみたいなのも描かれている。天才はなんの代償も無く存在できるわけではない、という突き放した視点も面白い。
明るい雰囲気で主人公を引っ張っていくヒロインもまた、主人公に見せないところで影を見せる。彼女の心の中に何があるのか。音楽をやる真意は何なのか。まだ明かされることのないそれが、どこか不穏な雰囲気を醸し出していて、物語に厚みを与えている。
天才が音楽をやって、成功して終わりなんて、そんな単純な話じゃない。
青春はもっと複雑で、誰もが思い通りにならない現実に打ちひしがれて、それでも前向きにやっていく価値がある。その姿のなんと尊いことだろう。そんな青春の輝きが表現された作品で、好きだ。




