猫様、病に倒れる
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五月のゴールデンウィークの次の週だったと思う。
Q太郎が二日間程帰って来なくなった。
二日間程なら今までも度々帰って来ない事があったが、いつもケロリとして帰って来る。
しかし、行動範囲の広いオス猫である。何が在っても不思議ではない。更に前話に書いたシロスケの事もあって、今回は最悪の事態を覚悟していた。
しかし、私が仕事から帰って、花壇など眺めていると
「なー、なー、なあああ」
Q太郎の声がする。
嬉しさに思わずQ太郎声のする方を見て驚いた。Q太郎の目は赤黒いもので覆われて、ほとんど目が開いていない状態でヨロヨロとこちらに向かって歩きながら大声で鳴いていたのだ。
「Q太郎!」
帰って来た喜びよりも、その変わり果てた姿に驚き、急いで抱きかかえて家に入った。
「Q太郎、目、どうしたんだ? 見せてご覧」
「そんな事より飯だ、余は空腹じゃ」
食欲があるのならひと安心だ。フラフラしているのも空腹と疲れのせいだろう。
そう思い、食事をとらせ、落ち着いてから目を見ると、赤黒いものは目ヤニである事が解った。赤いと云う事は血が混じっているのだろう。
「何でこんな事に……」
心無い者がQ太郎を監禁し、有害な薬品でも目にかけたのであろうか?
居なくなる前は元気だったのだ。
二日間でこんなに変わるものなのだろうか?
その後、Q太郎は物は食べられるが殆ど寝てばかりだった。
しかも、例によってマグロが品薄な事と、歯でも折ったのか物を食べにくそうにしているのもあり、マグロの次に好きな舌平目のテリーヌの猫缶を与えたのに、いつものような勢いで食べない。
そのうち、その舌平目のテリーヌも口にしなくなり、どうしたものかと悩んでスーパーに行くと、奇跡的にQ太郎の常食、マグロの中落ちが置いてあったので急いで買い求め、与えてみると大喜びで食べた。
「なんだ、Q太郎、婆ちゃん(ぶっちー)と同じ病気か?“嫌いな物は食べたくない病”だな?」
とりあえず、マグロなら食べるので胸を撫で下ろしていたのだが……
※次話に続く




