少年とヤドカリ
咲森町という町に神宮 夜という少年が住んでいた。ある日夜が浜辺に行くと、一匹の子犬が捨てられていました。夜は子犬を放って置けなくて家につれて帰ろうとしたのですが、残念なことに夜の父親、文斗は大の犬嫌いだったのです。家では絶対に飼えない、と言われましたが、夜はあきらめきれず。子犬を浜辺で飼うことにした。文斗は夜が浜辺で犬を飼うことにしたのを知って、犬は嫌いだけど夜の決めたことだから応援しようと、咲森町の町長。翼に許可を取って、浜辺に犬小屋を作ったのであった。夜はその犬にシロと名前をつけて、毎日毎日遊んでいた。
しかしある日、咲森町に嵐がやってきた。夜は浜辺にいるシロを助に行こうとするのだが、
「父さん離して!!早くシロを助けに行かなくちゃ」
「何を言っているんだ。こんな中出て行ったらお前もただじゃすまないぞ」
「だからってシロを放って置けないよ!!シロ。シローー!!」
嵐の咲森町に夜の叫び声がむなしく響く。
次の日、昨日の嵐が嘘のように晴れ渡っていた。しかしそこにはシロの姿はなかった。
「シロ。シローー!!」
いくら夜が呼んでもシロは出て来なかった。夜は、次の日も、その次の日も海に来ていたが、
そこにはシロのために作ってもらった犬小屋があるだけだった。夜はそこでシロとの思い出を振り返っていた。ふと犬小屋の中を見るとそこには一匹のヤドカリがいた。夜はシロとの思い出の場所を汚されたくなくて、そのヤドカリを遠くに放した。けれど次の日、また小屋の中に同じヤドカリがいた。夜はため息をつきながらヤドカリに話しかけた。
「お前いったい何がしたいの」
そう聞くと、ヤドカリは小屋から出ていった。いったいあのヤドカリはなんだったんだろうと思っていると、あるボールが転がってきた。それはいつもシロと遊ぶときに使っていたボールだった。これはなくならないよう。僕とシロだけが知っている場所に隠しておいたはずなのにどうしてこんな所にあるんだろう・・・。まさか、
「シロ!!」
思わず叫んでいた。すると下のほうでカチンッと音がした。音のほうを見ると、さっきのヤドカリがいた。
「まさかお前、シロ・・・・なのか?」
カチンッはさみの音でヤドカリが答える。シロだこのヤドカリはシロなんだ。夜はそう確信した。次の日から夜はそのヤドカリをシロと呼び、文斗に頼んでシロ(ヤドカリ)の家を作ってくれるように頼んだ。文斗は「ヤドカリの家って何だよ」と言いながらも、立派な貝のデザインの家を作ってくれた。夜はシロに会うため毎日浜辺に行った。そして会うごとに、このヤドカリとシロの面影が重なっていく。そして夜は前の明るさを取り戻していった。
しかし、日がたつにつれどんどんシロの元気はなくなっていく。夜は隣の家の由紀に相談した。由紀が言うにはヤドカリはもともと海に住んでいるから、海に返してあげるのが一番いいらしい。夜はシロをつれて浜辺をこえて海へ行くがそこにあったのは汚れきった海だった。夜はこんな所ではシロは元気になれないと思い、海の掃除を始めた。
浜辺・波打ち際・海の中まで必死になって掃除した。しかしその途中で夜は倒れてしまう。
文斗が慌てて病院に連れて行くと最悪の結果がでた。
病名はがん。理由は親からの遺伝と不衛生な所で無理をしすぎたことだった。
夜の余命は後一ヶ月だった。
そう申告された後でも夜は海の掃除をやめなかった。夜の頭の中にはシロをきれいな海へ返すことしかなかった。次の日夜が海に行くと由紀がいた。夜だけにやらせるわけにはいかないと由紀の母親、由利の反対を押し切って手伝いに来たのだ。由紀が来てから掃除のペースが上がった。2人になったのもあるが由紀が汚れるのも気にせず、一生懸命がんばってくれたからだ
。それから数日後。夜の夢の中にシロが出てきた。そして夜にあることを話した。
「夜。今から言うことをよく聞いて。明日僕が丸い玉を渡すから、塩できれいにこすって食べてみて。そうしたら・・・・」
シロが全部言い終わる前に夜は起きてしまった・だが夜が海にいくと、確かに何かをシロが持っている。夜はそれを家から持ってきた塩できれいに磨いてから、思いきって一口で食べた。すると、
「夜、僕の声が聞こえる?」
夜の頭の中に声が響く。
「シロ。今話しているのはシロなの?」
夜はシロのほうを向いて聞いた。
「そうだよ。夜、よく聞いてね。今日からは僕達海のみんなも掃除を手伝うよ。夜たちが海をきれいにしてくれたおかげで僕たちももう一度ここに住めそうなんだ。」
夜は突然のことに驚いた。にわかには信じがたいことだっかたらっだ。すると海のほうから声が聞こえてきた。
「夜さん俺達にも手伝わしてくれ」「あんた達だけに働かせるわけにはいかないよ」「私達は私達の住むところを取り戻してくれた夜さんにお礼がしたいんだ」「みんな夜さんに感謝しているんです。ぜひ私達にも掃除をさせてください」
海の中から聞こえるたくさんの声。それを聞いたとき。夜は海に向かって叫んでいた。
「みんなありがとう。みんなでこの海を住みやすくしよう」
そして2人と一匹そして海の生物達によって海はどんどんきれいになっていった。
一ヵ月後海は見違えるほどきれいになっていた。夜たちはきれいになった海にシロを放した。
シロは一言ありがとうと言うと、海の中に消えていった。シロが見えなくなったと同時に夜が倒れた。夜の命は尽きようとしていた。夜はすぐ病院に運びこまれた。面会の許可が出た時、由紀は夜の部屋に行って、泣きながら夜に話しかけた。
「夜何してるの。夜がいなくなったら誰がシロたちの海を守るのさ。」
夜は由紀の言葉を聞くとゆっくりと目を閉じて答えた。
「由紀。由紀はしっかりしてるから僕がいなくても大丈夫だよ僕はちょっと無理をしたからもう休まなきゃいけないんだ。」
「夜・・・」
夜はとても悲しそうな顔をしていた。由紀やシロともっと遊びたい。でもそれはできない。
夜はすべてを悟っているような顔をしていた。
「由紀。僕、海が見たいな。」
もうすぐ夕日も沈み始める時間。夜も病室からは出てはいけなかったけど、由紀は夜の最後の願いをかなえるため、夜を連れて病院を抜け出した。海に着いたとき由紀と夜は息をのんだ。
海面が虹色に輝いていた。二人がその光景に見とれていると夜の頭の中にシロの声が響いた。
「夜。今まで本当にありがとう。一ヶ月前、僕は夜に出会わなければ死んでいたんだ。僕は結局2回も夜に命を助けてもらったことになるね。僕には夜の命は救えないけど、僕にできる最高のプレゼント。僕の力全部使ってこの海を輝かせ続けるよ。ばいばい。夜」
夜の目から涙がこぼれる。夜は涙をふくとまっすぐ海を見た。
「シロ。僕らずっと友達だからね」
由紀が不思議な顔をして夜を見るがその時すでに夜は覚めることのない眠りについていた。




