第28話 『壁の偽ヒーロー』⑯
ココ最近忙しすぎて書いてる暇とモチベが無ぇ……
とても暗い闇の中、上下の概念が無く方向感覚が狂う真っ暗闇。
周囲には何も無く俺の背後には白い道のような物が1本だけ続いていた。
(なんだ…この空間、何が起きた?)
どこを向いているかいまいち分からないがなんとかぐるっと1周見渡すがどこもかしこも真っ暗闇しかない。
そう思っていたがよく目を凝らして見るとある一点、おそらく地平線に当たるところだろうか?その部分に小さな黒金色の光が見えた。
冷たいようで暖かい、届きそうであり届かなそうでもあるそんな光を見て直感的に理解する。
(あの光は俺が目指す夢…そしてこの道はここまで歩いてきた轍…)
なんで突然こんな空間にいるのかは分からないが見えている光からそう考えた時、さっきまで何も無かった後ろから気配を感じた。
そこには暗闇の中、白く丸い何かを抱えるように道の上で蹲っているカルマーが居た。
だがその道は俺の物のような白では無く薄暗く濁っており、後ろに伸びカルマーの前には蹲っている部分から先は何も見えない。
そしてカルマーの体には道から伸びた無数の糸に吊るされており、その上からあのヘドロが所々に張り付いていた。
「歩き方を知らず糸に操られ……」
カルマーから小さな声が聞こえる。心が擦れ、いつ削りきれてもおかしくないか細い声で。
「敷かれた道を進んでいく……貴方はどうして自分の道を進めるのですか?……」
「……俺も自分の道は分からない。ただそれっぽく流されているだけ」
「ただ自分の行きたいところに行くためにゆっくりでもいいから着実に、確実に、1歩ずつ踏み出してるだけ」
「流されても……1歩ずつ……」
俺は答える。正直ちょっとカッコつけてると思ってる。けど俺はこうだと考えている。
天才じゃない凡人が、歩くために。
だが俺の言葉はカルマーの何かに響いたのか絡みついている糸が数本解けてヘドロが少し消える、そしてカルマーと顔を上げる。
何も見たくないのか、それともこれ以上傷つきたくないのか目を閉じていた。
「暗い中でも……少しでも……」
その声と同時に俺の、いや人形の中で何かが共鳴する。そして
グリン……
カルマーの抱えていた白い玉が動き目のような物が現れ目が合う。
その瞬間、中で共鳴している何かが熱くなるのを感じ、また視界が暗転する。
さっきとは異なり光が見え、暗転した視界は元に戻り見えるようになる。
「……へ?」
そこには太陽がさんさんと輝く広い乾燥した草原と白い大きな風車、長く続く轍の見える農村があった。
―――――――――
俺は困惑したがその空間に突然テレポートした訳では無いということがすぐに分かった。
なぜなら放心している俺の体をすり抜けるように百姓娘全開の獣耳の子供が走り抜けたのだ。
(夢?……いや違う)
共鳴した何かの影響で夢を見てるのかと思ったが走り抜けた子供の髪色を見て夢の可能性を捨てる。
走り抜けた子供の髪は撫子色をしており、顔つきもカルマーに似ているのだ。
きっとカルマーの記憶の一部なのだろう。その証拠に至る所にノイズが走っている。
「忘れていた……暖かかったのに忘れていたもの……」
後ろから声が聞こえ振り向くとそこにはうっすら目を開いたカルマーが立っていた。
「0だった何かが1になった場所……」
「私の何が変わった場所……」
今の言葉でここがカルマーの記憶の中であることがわかった。けど俺は何をしたらいいのだ……と思考を回していると轍の奥から馬に乗った者がこちらに向かってくるのが見え、その者は幼カルマーに近づく。
「君が■■■■■かな?私は■■■■、■■■■■様より言伝を……」
顔にはノイズがかかっており見えず何かを幼カルマーに話しているがほとんど俺は聞き取れない。
その者が話し終え幼カルマーが何かを口にしようとした瞬間、空間全体にノイズが突然広がり、内容の擦り切れた映像を映し出すように広がった砂嵐によって視界が塞がった。
―――――――――
ノイズが消え、視界が戻ってくると今度は雨が降り跳ね上がる泥と水では流れ落ちないと言わんばかりの血の匂いが漂う街、少し離れたところには検問所が見える。
「外巣……」
ただ空間のノイズはさっきよりも酷くなっている。辺りの建物の色がおかしくなるほどには。
ドチャッ
雨が降って泥になっている路地に突然血でできた球体が現れて地面に落ち溶け始める。
溶けきった球体の中からは赤と黒を基調とし、踊りを踊るのに向いていそうなドレスを着ているカルマーが出てきた。
なんでドレス?さっきのやつ的にカルマーは創作でよくある典型的な田舎娘みたいだけどそこからなんでドレスを着るまでに?あの馬に乗った人が関係するのだろうか…
そんなことを考えながら眺めていると地面に転がっているカルマーの元にボロッボロのナイフを持った浮浪者のような男が現れる。
「死なないため、仕方ないこと。生きるため、仕方ないこと。……」
男はそんな事をボソボソと呟きながら横たわるカルマーの上に乗りナイフを掲げる。
これは記憶、干渉できないとわかっていながらも俺は無意識のうちに左足を軸に蹴りを入れる。
もちろんすり抜けたが何の因果か浮浪者のような男の動きは止まった。干渉できた訳ではない、向こうが俺を認識している訳では無い。
その時に何があったのかは知らないし今の俺の行動が過去を変えた感覚はない。けど今の行動には意味があったと俺は思った。
「何故…そんな事をするのですか?」
またいつの間にか後ろにいたカルマーが声をかけてきた。何故こんな事をするのかか……
「この記憶が始まった時……君が辛そうに見えた、それだけだよ」
こんな事を言ったけど正直何も考えていない。カルマーを助けたい傲慢のエゴが無意識のうちに出てきたのだろう。だがカルマーには何か思うところがあったのだろうか?俯き黙り込んでしまった。
結局俺の蹴りで何かある訳でもなく前に話していたように記憶の中のカルマーは履いていたハイヒールで何かを演じる様に浮浪者を蹴り殺してその場を去っていく。
何故演じているように感じたかは分からないが今は関係ないだろう。何となくそんな気がした。
そこからは何度も場面が変わり話した時と同じように外巣の裏路地を彷徨い食べ物を持っている人を襲っては食べ物を強奪する。
無論外巣の人間も奪われるだけじゃない、対策されていくにつれて記憶の中のカルマーはどんどんやせ細っていき、着ていたドレスも売っぱらってボロ布を羽織何とか生き延びてゆく。
その間何度か無駄だとわかってても動くことがあったがそれによって結果が変わることはなかった。だがカルマーは俺が動く度に何かを考えるように黙り込む。
トサッ……
次に場面が変わった時、記憶の中のカルマーは地面に倒れていた。
素人が見ただけでわかる脱水に栄養失調と睡眠不足、背中にはボロ布ごと切り裂かれたであろう大きな裂傷。パッと見だといつ死んでもおかしくない状態だった。
ザッザッと足音がカルマーの元に近づいてくる。
「こいつは……■■■様への手土産になるな。」
赤いファーコートを羽織り、背中に機械仕掛けのハンマーを背負って身体中に錠前を模したタトゥーが彫られている男が地面に倒れ伏すカルマーの前で立ち止まる。
あの時のアロハシャツとは違うが雰囲気と聞いていた話から何となくわかる。こいつはカチャカチャ派の人間だ。
「………」
今までと違いカルマーはうっすらと目を開く事もなく俯く。それと同時に体に張り付いていたヘドロの量が増える。
場面は変わる。どこかの建物の中、目の前には親鼠が俺にトドメを刺そうとした時と同じ威圧感を漂わせる2m近いマッチョな巨漢がたっていた。
きっとこの巨漢がカチャカチャ派のボスなのだろう。
「こいつが拾ってきたヤツと…イーじゃん、面白そうだねぇ!!」
「アイツらが証拠隠滅したがってたし■■■■■の助言的にもこいつがピッタ!!いいねぇおめぇを仲間としよう。」
ボスが言った言葉の一部は聞き取れなかった。記憶のはずなのになんというか意図的に阻害されている感じもする。
「名前ねぇの不便だな…そうだ!!」
「おめぇはこれからアイツらの罪を全部押し付けられて死ぬ。だから罪って名乗れ。」
ほとんど喋んねぇから静かだしちょうどいいだろ?とボスが付け足すように言い終わると同時にまた場面が切り替わる。
「カルマー、勝手に人助けしたみてぇだな、ま〜ご立派な事で。勝手してんじゃねぇよ野良犬、処理する身になれ。」
ハンマーを担いだ男がそう言い終わると同時に何かを2つ記憶の中のカルマーの顔に投げつける。
記憶の中のカルマーは狼狽え、カルマーはまたしても目を開かなかった。
俺はそれが何か気になり見える位置に移動し、そして後悔した。
……投げられた人の頭だった。
半分潰れた大人の女性の頭と恐怖に歪み泣き叫ぶような顔の子供の頭。
「私が目の前でひったくりに襲われていたこの2人を無視していたらきっと2人は生きていた…」
目を瞑っていたカルマーが口を開く。
その後も場面が何度も切り替わりカルマーが自分の意思で何かをした高確率で不幸が起きる。それもカルマーにでは無く周りに。
「そして理解した。私が目立てば人を不幸にする」
そこから映る記憶は全て血の壁を作り出したりして分断したり依頼された通りに行動する全てを諦めたような目をしたカルマーだけだった。
『壁の偽ヒーロー』の誕生である。
空間が溶けてゆく。夢から醒めて辛い現実を直視するように溶けてゆく。
そして記憶を見ていた空間は完全に溶け切りまた真っ暗なあの空間に戻ってくる。
もう蹲っていないが俯いている。だが絡まる糸は減り張り付いているヘドロは増えている。
抱えていた白い玉、いや眼球はカルマーの背後に静かに浮かびこちらを眺め続けている。
「私は貴方のように踏み出すことはできない……」
「前の見方を忘れ、自分で足を動かす方法を忘れ、誰かが書いたシナリオに沿うようにしか動けないのだから……」
道から伸びた糸はさらにピンと張り、カルマーを道に縛り付ける。
そんなカルマーを見た俺は何も言わずカルマーの前に立つ。
俺の道がカルマーの前に来るように前に立つのだった。
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ステータス
名前:アウル ■■ ■■■
種族:ヒューマノイド
属性:水
称号:【巡る者】【第1の■】【閲覧不可】
所属:森林協会所属冒険者[種 2級]
魔法:低級
固有能力:耐性【完全防腐】
創出【素敵な糸】
能力:闘気Ⅰ
熱耐性IV
冷耐性Ⅲ
打撃抵抗IV
気絶抵抗Ⅱ
精神疲労抵抗Ⅱ
撥水Ⅰ




