第27話 『壁の偽ヒーロー』⑮
短く長い戦いから1夜明けた10時頃、俺はオーウェンの肩を借りながらカルマーが留置されている森林協会保有留置所に向かっていた。
あの後もう一度スティレットをぶっ刺して義足にしようと思ったが途中で即席だとしてもまた武器を刺すのは流石に……って思ったから帰り際にゴミとして捨てられてた机から足を1本拝借して糸で結び付けている。
「ごめんアウル……僕が気絶してなかったら足が無くならずに済んだかもしれないのに……」
「謝らなくていいよ、あれに関してはどうしようもなかっただろうし」
オーウェンは目が覚めてからずっと俺に申し訳なさそうにしていた。確かにオーウェンの言う通り気絶してなかったら結末は違ったかもしれない、けど俺の右足が無くなる結末は変わらなかっただろう。
それに親鼠は本気じゃなかった、最後俺にしようとしていた攻撃は本気かもしれないがそれ以外は手加減されていた。それでこの有様なのだ。
「災害を個人で止めることはできない、今回がそれに近いだけ。だから気にすんな」
俺の言葉にオーウェンは返事を返さなかった。だがその顔には悔しさが確かにあった。
そりゃ俺も悔しいし片足の喪失感は凄い、だからって止まることはない。あんな理不尽な目に合わないように力をつけなきゃって思ってるから。
……人間だった時の俺はこんなふうに考えれただろうか……
そんな事を話しながら歩いていると厳重に警備されている建物、留置所が見えてきた。
警備の人に昨日帰り際にブラベさんから渡された通行許可書の入った封筒を渡し、武器を渡してボディチェックを受けた後にカルマーの居る場所に案内され留置所内を進む。
「おはようアウルくん、オーウェンくん。呼んでおいてなんだけどもうちょっと待っててね、まだ終わってないから。」
「おはようございますブラベさん」
「おはようございますブラベ協会長」
案内された面会室前にはブラベさんがたっており、挨拶をする。
ブラベさんの言う通り面会室は使用されており中からは少しだけ音が聞こえ人の気配がする。一体誰だろう?
するとガチャリと音が聞こえ面会室の扉が開き中から一人出てくる。
「いや〜ダメだ協会長、全く話してくれねぇ。これは長期戦になりますよ?」
扉の奥から森林協会の制服を着た男が出てきた。
黒い髪の所々に白い髪が混ざり少々長め、身長は俺よりちょっと高いくらい、気だるげな雰囲気を出しているがその目や手などから戦いから事務作業までなんでも出来る雰囲気がある。
顔は整っており、少々憂いを帯びた分かりやすくいえばイケメン。人間の頃なら確実に嫉妬してた。
それにしてもこの声どこかで聞いたような……
「ん?人形と長ローブ…あっ!もしかしてお前さんアウルさんとオーウェンさんか?」
「?はいオーウェンです」
「え?は、はいアウルですけど何処かでお会いしましたか?」
うーむ向こうは俺を知ってる訳で人形だから目立つとは言えそんな覚えられる程でも無いし…………アッ!!思い出した!!
「貴方もしかしてヨモギさんですか!!」
「そう、あの時は壁越しで顔見れんかったからな。俺はヨモギ、お前さんが冒険者登録した時に能力とか教えた人だ。」
おぉこんイケメンだったのか……でもなんでヨモギさんがここに?
「ヨモギくん、どうだった?」
「ダメですね、協会長と同じで一言も発してくれない。経歴的に指示待ち人間だから命令口調でも聞きましたがそれでも全くですよ。」
「君でもダメか、そうか弱ったなぁ彼女が話してくれるとかなり楽なんだが……」
ブラベさんは頭を掻きながらそう呟く。
ぬ?一言も発してくれない?
「あのブラベさん、俺前にカルマーと会話する機会がありましたが普通に話してくれましたよ?」
俺がそう言うとヨモギさんは「ハ!?」と言う顔をしながら俺の方を向き、ブラベさんは「そういえばそんな事言ってたね」と小声で言っていた。
「ブラベ協会長、昨日の戦いでも壁の偽ヒーローはアウルの言葉には返事していました」
「アウルくんには反応するのか……よし、アウルくん突然で悪いけど取り調べをやって貰いたい。」
「へ?」
俺が?取り調べ?そんな事今までやってきた事も無いのにですか?
「俺が面会してる間ずっと警戒してたからお前さん一人でになるな。」
しかも一人でですか!?
「たとえ聞けなかったとしてもアウルくんには彼女がこちらとの会話が出来るようにして欲しい。頼めるかい?」
俺が困惑しているとブラベさんはそう付け足して俺に聞いてきた。
情報を聞き出すか俺がなんとかしてカルマーとの会話を可能にする、聞こえだけは簡単に聞こえるがカルマーの境遇と何故そうなったかを知っていてそして俺はカルマーを助けたいと甘いことを考えている。
会話を可能にして彼女も助ける。難しい事だが俺がそれを蹴る理由はなかった。
「わかりました、やります」
「ありがとうアウルくん、手続きをしてくるから少し待っていてくれ。」
ブラベさんは俺の回答に少し笑を見せたあと俺が面会室に入れるように手続きをしに行ってくれた。
俺はその間にカルマーについてわかっていることについてまとめた資料を読んでいた。
正直俺は頭は良くない方なため一部上手く理解できない部分があったがその部分をオーウェンが上手く砕き教えてくれる。オーウェンのサポートがめちゃくちゃ助かる。
そうやって待っているとブラベさんが帰ってきた。
「許可が取れたよ。面会時間は1時間、それ以上は取れなかったよ。」
「そして無いと思うけど物品の受け渡しも不可。固有能力の使用も自衛以外では禁止されるよ。それ以外にも……」
帰ってきたブラベさんから面会についての注意事項などを聞き面会に備える。
たまに意味のわからない注意事項があったりする。なんだよ持ち込み可の筆記具は羽根ペンのみって……
「ありがとうございますブラベさん」
俺はブラベさんにお礼を言い面会室の扉の前に向かう。
これからの事を考え息を整えた後に俺は面会室の扉を開けた。
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扉の先の面会室は質素な個室で磨りガラスのような壁に机がつけられており、その磨りガラスのような壁に向かうように椅子が置かれている。
俺は椅子に腰掛け面会開始を待つ、どうやって始まるのか分からない為少し緊張する。
しばらくすると磨りガラスのような壁がスゥーと透明になって行き壁の奥にカルマーが見え、それと同時に面会開始のランプが光った。
「昨日の夜ぶりだな」
「……私になんの用ですか……」
カルマーは気力のまったくない声で返事を返してきた。
昨日よりもさらに淀んだ眼、諦めを通り過ぎて思考を放り投げたような眼をしている。
「早速質問だが俺以外にも面会は来ていたはずだが返答がなかったと聞いていたがなんで返答しなかったんだ?」
「命令が無いため返答しませんでした……」
「俺には返答してくれるが違いはなんだ?」
「……私にも分かりません…ただ何故か貴方には話せる、それだけです」
俺の質問にカルマーは答える。カルマー自身にもわかっていないが俺の質問には答えてくれるようだ。
その後もいくつか質問したが帰ってくるのは当たり障りのない回答か命令が無い、許可されていない、のどれか。それでも俺は止まることなくカルマーに質問する。説明はできないがこのままだとダメだと思ったから。
「……何故…何故貴方は私を見ようとするのですか?」
「……見ようとする、とは?」
面会時間の半分くらいが過ぎた時、カルマーはこちらに話しかけてきた。
「皆私を『壁の偽ヒーロー』として見てきました。ですが貴方は私を、カルマーを見てきます」
「何故貴方は私を見るのですか?」
「……俺は君に親近感を覚えたんだ。偽ヒーローでは無くカルマーに」
「どこかも知らない未知の土地で1人きり、俺もボタンを掛け違えていたら君と同じ道を進んでいたと思う」
「そして君の眼に浮かぶ感情から同情してしまった。だからか傲慢にも君を助けたいと思ってしまった」
俺がそう言うとカルマーは目を少し開き驚いた表情をし、その瞬間密室の中に風を感じる。
カルマーの眼にはさっきまではなかった嫉妬と絶望に近いの感情が見え、言葉を紡ぎ出す。
「貴方も私と同じで……でも私と違って……」
「似た道を……踏んでいるのに……自分で歩けて……」
「進めば……変わったかもしれないのに……進まず……抱え込み……」
「私は……歩かなくて……前が見えなくて……黒く染まっている私……」
「見えてた道を……自ら見失って蹲る私……」
カルマーが顔を覆って椅子の上で蹲ると同時にあの時のヘドロがカルマーを覆い始める。
俺の方にはこぼしたその言葉と共に風が頬を撫で、カルマーの何かに共鳴するように俺の視界は突然真っ暗になった。
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ステータス
名前:アウル ■■ ■■■
種族:ヒューマノイド
属性:水
称号:【巡る者】【第1の■】【閲覧不可】
所属:森林協会所属冒険者[種 2級]
魔法:低級
固有能力:耐性【完全防腐】
創出【素敵な糸】
能力:闘気Ⅰ
熱耐性IV
冷耐性Ⅲ
打撃抵抗IV
気絶抵抗Ⅱ
精神疲労抵抗Ⅱ
撥水Ⅰ
作者留置所なんて行ったこと無いので完全に妄想です。




