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人形に転生したので自由を謳歌しにいざゆかん!!  作者: NAGI提督
第1章 夢を見つけた人形編
18/22

第17話 『壁の偽ヒーロー』⑤

 大部屋で軽く休憩したあとオーウェンには一旦帰ってもらった。感情の浮き沈みから疲れが出たのか紅茶を飲んだあと眠気を堪えたような顔をしていたから。

 俺は特に眠気がなかったからそのまま情報の整理をしていた。この体、人間の時と違って柔軟な動きは苦手だけど寝なくても動けたりスタミナの消費が少ないからこういう時は便利だ。

……どんどん人間から離れてる感覚がして怖いところはあるけど……


 ただ少し休憩したおかげで不可解な点に気づけた。

 この『壁の偽ヒーロー』、かなりのペースで階級をあげている内容なのに依頼は俺たち以外に来ていない。それどころか商業街での出来事なのに治安維持組織はほとんど動いていない。

 低階級を使った捨て駒での調査も考えたがそれならもっと人数がいてもいいはず…依頼主はなんのために……


 どんどん時間が過ぎていき気づけば朝の新聞が届く時間になっていた。

 せっかくだし息抜きに新聞を読もう。今のところ新しく分からないことが増えた以外特に進展も無いし。


 1階の郵便受けに向かうため階段を降りてるとふと郵便受けの蓋が半開きなのが目に入る。

 昨日ちゃんと閉めたよな?新聞入れる時に押し込んだのかな?

 そんなふうに考えながら蓋を開けると中から新聞以外の紙がバサッと流れ出てくる。


「うわッ!となんだこれ?」


 出てきた新聞以外の紙を見てみる。どれもこれも文章で書かれている手紙。一旦部屋にと持って入ろう。

 新聞と大量の手紙を両手で抱えて部屋にもどる。

 机に置き、手紙の枚数を数えると30枚ちょっとあった。

 ただの嫌がらせならいいんだけど全部に別々の文章が書いている。嫌がらせにしては労力がかかりすぎだ。

 とりあえず1つ手に取って読んでみる。


「……『壁の偽ヒーロー』に助けられたから捕まえないで?」


 他の手紙もどんどん開いて読んでみる。

 あれもこれも全部同じような内容、どう助けられたかが違うだけで全部捕まえないでって内容。

 『壁の偽ヒーロー』が人助けしてた事は情報で聞いてたけどこれほどとは……


 ……でも待てよ?なんでこの手紙を書いた人達は俺がこの依頼を受けてると知ってるんだ?受けたの昨日だぞ?

 それに文章がおかしい。たしかに一つ一つしっかり書かれてる。でも文章同士を照らし合わせると同じような言葉が多い、これじゃまるで元の文を分からないように所々置き換えてるみたいじゃないか。

 それに何枚かは筆跡が同じ感じ、手癖でサッと書いたようなものもある。

 ふーむ…この手紙は何者かによって作られた物、どこ経由か分からないが俺の家を特定されている。


「ただどこから…」


 考えられる経路はまず1つは協会から情報が漏れ出た可能性。0とは言えないけど信頼と信用で成り立つ協会がそんなミスをするとは思えないしメリットがほぼない。

 2つ、オーウェンが何かしてる可能性。ぶっちゃけこれは無いと思う。ここで依頼が失敗したらオーウェンも被害を受けるし、それにこの手紙はしっかり宛名が書いてある。オーウェンが俺の家を知ったのは昨日、そして昨日はほぼ1日中一緒に行動してたからそんな事やってる暇がない。

 3つ、依頼主側から情報が漏れた、または妨害。漏れたのなら連絡が来るはず、妨害はやる意味がまるでない。違反金を徴収するためだとしても依頼主は商業街の財務担当と治安維持担当、8万程度はした金でしか無い。

 一体どこからこの手紙を……


「……ん?そういえば」


 手紙について考えてるとふととある事が頭をよぎる。そういえば被害者の人達の共通点を1つ調べ忘れていることにだ。

 被害者は今のところ全部店であること、飲食店か靴や服、武器を売っている店ということ。全部に共通しているところは店主を襲われ、店の中を荒らされた事だけだ。

 そして今新たに調べた物それはどこ所属の店かだ。

 下巣の商業街の店はだいたいバックで誰かに支援されていることが多い。

 もしかしたら共通点になるのかもと思い調べていく。



「!?これも、これも、共通点はここにあった!!」


 被害を受けた所の全てが商業街の財務課と治安維持課の支援を受けている!!そういえば被害を受けた所はどこも復旧が早かったな…

 理由は分からないけど『壁の偽ヒーロー』はその2つから支援を受けたところにだけ襲っている。

 でもなぜそこだけ?それにどうやって支援を受けているところを見つけて襲っている?

 うーむ情報が足りない、昼頃にオーウェンが来るからその時に被害者に聞き込みでもしてみよう。あくまで捕縛とかで動くのが夜だけなので聞き込みは問題ない…はずだ


―――――――――

 あれからオーウェンと共に手分けして聞き込みをしてきたが正直進捗になるものはなかった。

 せいぜい『壁の偽ヒーロー』に何をされたか、どれくらい被害が出たかを資料以上に細かくしれたくらい、それでも資料内容以上の情報はなかった。

 ただそれ以外に『壁の偽ヒーロー』によって残された物を知れた。

 『壁の偽ヒーロー』は店内で暴れ様々な物を壊したりして行ったこと。その際に床に不自然な血溜まりができていたという。

 オーウェンからも同じような内容が帰ってきた。情報は少ない、でも確実に何かに近づいている気がする。考えろ…なにか繋がりがあるはず……


 ふと夜の事を思い出す。あの時、オーナーさんに確認を取りに行った時、変にビクビクしていた事を。そしてそのオーナーさんは何故か店の中を見せないようにしていた。

 あの時は営業に関するものを見られたくないからと思っていたけどそれならビクビクする必要が無い。『壁の偽ヒーロー』に襲われること怯えてるにしてもあの怯え方は恐怖じゃなく何かに緊張している感じがした。

 それに聞き込みをした店のオーナーもみんな何かに緊張した雰囲気が出てたし、意地でも部屋の奥を見せないようにしていた。


「僕のところでも何かを隠してるような感じだったよ。後ろめたい事でもあるのかな?」


「後ろめたい事?」


 後ろめたい事、その一言でさっきまでバラバラだったものが色々と結ばれていく。

 きっと人形の顔じゃなかったら今の俺は怒を纏った笑顔になってるだろう。


「……そういう事か」


「?何かわかったの?」


「あぁ、全く腹立たしい」

「オーウェン、明日から最終日付近までに全力で『壁の偽ヒーロー』を探し出して何時でもかち合えるようにマーキングする」


「そのあとはどうするの?孤立してるところを叩く?」


「いやそのまま泳がす。ソロで動いてる『壁の偽ヒーロー』がどうやって支援を受けた店を特定したか、破壊だけで強奪はしてないから食料をどう手に入れてるか、それを確認する」

「俺の考えが正しければかなり大事になる、ブラベさんにもかなり手伝ってもらうことになるな。気を引き締めるぞオーウェン」


「…?うん」


 準備する事がどんどん頭に浮かんでくる。このさい前に思いついてたアレも仕込んでおこう、使うか分からないけど。

 捕縛の決行は最終日前日の夜、必ずこの任務を終わらせてやる。


――――――――――――――――――――――――


ステータス

名前:アウル    ■■ ■■■

種族:ヒューマノイド

属性:水

称号:【巡る者】【第1の■】【閲覧不可】

所属:森林協会所属冒険者[種 2級]

魔法:低級

固有能力:耐性【完全防腐】

     創出【素敵な糸】

能力:熱耐性IV

   冷耐性Ⅲ

   打撃抵抗Ⅱ

   精神疲労抵抗Ⅰ

   撥水Ⅰ

次回か次次回で『壁の偽ヒーロー』は終わらせます。というかさっさと終わらせないと1章が終わらない…

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